本報告は、2011年9月4日から9月17日(現地時間)にかけてブラジル・サンパウロ市で行った参加型学校運営に関する調査をまとめたものである。また、この調査中に、自身の調査に関心を持ってくださった現地研究者の誘いにより、この調査成果を踏まえた研究発表を10月5日から10月7日に同オザスコ市で行われた第2回オザスコ教育国際会議にて行うことが急遽決まった。この発表
1は、過去2回のフィールドワーク・サポートによる調査支援があったからこそ実現したものである。助成金に関わる各位、各方面に対し、この場を借りて心より感謝したい。
ブラジルでは、1980年代後半以降、民主化の過程で教育にも民主主義が浸透するよう政策が執られた。民主憲法で教育を市民の権利として認めただけでなく、1996年の教育基本法では学校関係者の参加を伴う学校を運営するよう定められた。
しかし、2010年9月に筆者が行った調査で、保護者と教師の間に参加型学校運営についての理解の不一致が存在する可能性が明らかとなった。これは、学校のコーディネーターがインタビューの中で、保護者の参加の程度と参加型学校運営を肯定的に捉えていなかったことに起因している。コーディネーターは、保護者が集会において発言しないことや、保護者の集会への参加は期待出来ないことを話した。また、教育についての知識が少ない保護者が学校運営に関わることに対する苦言も呈した。
2011年2月に行った調査では、貧困地区特有の課題が明らかとなった。調査を行った学校の校長によれば、地区の住民は、政府やNGOによる物質的、金銭的支援を受けることで援助されることに慣れ、学校にも同様の要求をするようになった。保護者の教養の低さに対する懸念も示され、貧困地区では、保護者と教師の間に他の地域より明確な障壁が存在する可能性が明らかとなった。また、同調査では、前年9月に明らかとなった点を量的調査に明確にする目的で、アンケートも用いた。ただし、保護者の集まる機会や保護者の識字能力を考慮した学校側の提案により預けて帰国した。郵送料の送金で問題が発生したため、筆者の手元には出発までに届かず、今回受け取りに行くこととなった。
こうした事実は、参加型学校運営が十分な参加を得られず、また、参加者の意思を反映する形で進められていない可能性を示している。これは、ブラジルにおける参加型学校運営の根本的な課題を提示するものとなる。また、参加者間で意見の衝突が起きる可能性も示している。このような参加者間の参加に対する理解の不一致が存在し、それが参加型学校運営の障害となり得るのかを明らかにすることは、ブラジルの教育と市民形成についての理解を促進することへと繋がる。
本調査において設定した目的は、意思決定をめぐる参加者同士の関係と集会における問題解決過程を明らかにすることである。具体的には、参加型学校運営におけるそれぞれの立場や利害関係を分析するために、学校における聞き取り調査と参加型学校運営に関わる資料を収集することである。今回は、短期間の調査であったため、調査対象校を1つに絞る計画を立てた。
しかし、これまで毎回訪問し調査の承諾を得ていた学校から、出発直前に断りの申し入れがあった。新学期で忙しいことが理由であった。そのため、直前に計画を立て直し、本調査では、資料収集を中心に行うこととなった。特に、サンパウロ教育資料センター(Centro de Referência de Educação Mario Covas: CRE)に通い、研究にとって重要であり、かつ入手が困難なものを収集した。また、現地到着後直ぐに調査対象校を訪問し、前回預けたアンケートの受け取りに加え、説得を行うこことなった。
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会議はオザスコ市とパウロ・フレイレ研究所の主催で行われた。参加者は約7000人(パウロ・フレイレ研究所発表)。報告は、分科会形式のパネル発表とポスター発表で行われた。著名な教育関係者による討論も毎日行われた。
筆者は、6日のポスター発表と7日午前のパネル発表に参加した。予定ではポスター発
表のみであったが、オザスコ市教育局と教育省の官僚がポスターに関心を持ったことで、6日の発表後に主催者側から翌日のパネルへの参加を打診された。
1.公立初等教育学校におけるアンケートの回収
今回調査を行うはずであった学校は、中間層が多く住むジャバクアラ地区のR校であった。到着翌日の9月5日に訪問し、アンケートの回収と、調査受け入れの説得を行った。まず、アンケートは半数以上の回収に成功した。預けた部数は、保護者用90部、教師用29部であったが、回収できたのは保護者用73部、教師用22部であった。生徒の人数が749人であることから、保護者の数は全体の10%?15%に当たる。また、在籍する教師は29人であり、回収できた教師用のアンケートの数は全体の75%に当たる。
アンケートの受け取り後に、校長と副校長に会い、調査受け入れの説得を行った。校長は出発前の連絡と同様に、新学期の授業計画などで忙しく、聞き取り調査は受け入れられないと説明した。しかし、これまで毎年同じ時期に訪問していたことを考えると、その説明は不可解であった。そうした中で考えられる他の要因は、サンパウロ市の教育スーパーバイザーに同行していないことであった。案の定、話している内にスーパーバイザーの名前が出てきた。「学校を探すなら彼女に相談しなさい」とのことであった。この言葉は、スーパーバイザーに同行すれば公立学校への訪問ができることを表している。ヘドゥシーノ校でも同様であるだろう。
今回、これまで同じ学校で調査を重ねてきたことから、単独で訪ねる計画を立てた。その理由には、常にスーパーバイザーの助けを得ることへの申し訳なさも含んでいた。調査の内容に関しては校長も把握しており、前回までは問題なく行えていた。しかし、実際には、参加型学校運営に関わる問題の調査は、学校側にとっては疎ましいものであった可能性がある。学校に託したアンケートは、R校の学校運営に対する批判的な視点が窺えるものであった。2009年の教育省による学校評価(Índice de Desenvolvimento da Educação Basica: IDEB)で、サンパウロ市の平均5.4より高い5.6の実績を持つ同校にとっては、評価を傷つられ得る調査であった。
このような断りの理由が推測でき、また教員の態度も明らかに変わっていたため、筆者は過度の説得は意味をなさないと判断した。アンケートの回収に対する感謝の意を伝え、同校を後にした。翌日から、資料収集へと計画を変更し、CRE、サンパウロ州立大学教育学部図書館、パウロ・フレイレ研究所、書店で必要な資料を探した。
2.資料収集
(1)CRE
CREでは、主に3冊の本を読み、重要な点をノートに書き写した。ここでは、コピーが許可されておらず、カメラでの撮影のみ許される。これまで何度か試み読みづらかった経験から、今回は精読し書き写すことにした。3冊の内訳は、①『ブラジルの教育:構造と制度』
2 、②『ブラジルの教育、国家、民主主義』
3 、③『闘争の教育学』
4である。
1冊目は、ブラジルの著名な教育学者デルメヴァル・サヴィアーニ(Dermeval Saviani)
5 によるもので、ブラジルの教育の制度上の課題を論じている。この本の中でサヴィアーニは、ブラジルには教育の構造があるが、制度は存在しないと結論付けている
6。ブラジルの教育の構造的問題を理解する上で重要な一冊である。
2冊目は、ブラジルの教育と民主主義の関係についての本である。500頁を越える内容で、ブラジルの教育関係者が民主主義を求めた過程を分析する上で、この本は重要である。特に、教員組合や教師の間で1970年代後半から1980年代にかけて流れた民主化を求めた潮流に関する部分は、筆者の研究において不可欠なものであった。また、国家と州政府、市政府、学校、教師の教育を巡る関係を描いている点でも、重要な資料となった。
3冊目は、2冊目と同様に民主主義と関連するものであるが、民政化直後の教育の民主化の実践に関する本である。特にパウロ・フレイレによるサンパウロ市での「民衆教育学校」についての章が筆者にとっては重要であり、この部分を中心にノートに書き写した。出版が終わっているために入手困難と思われたが、後にパウロ・フレイレ研究所で1冊発見したため、最終的には現物を入手することができた。
CREでは、資料収集以外にも在籍する研究者と話す機会があり、意見交換を行うこともできた。研究内容を相手に説明し、意見をもらうという形であった。印象的だったのは、1人の女性研究者が参加型について、「参加型や民主的と言っても、教師に権威は不可欠だ」と主張したことであった。公立学校での教務経験がある彼女の意見は、保守的にも聞こえるが、これまでの調査を通してみてきた保護者と教師の間の不一致や衝突とも、少なからず重なるものであった。
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Saviani, Dermeval. Educacao brasileira: estrutura e sistema. 8 ed. Campinas: Autores Associados, 1996.
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Cunha, Luiz Antonio. Educacao, estado e democracia no Brasil. Sao Paulo: Cortez, 1995.
- Torres, Carlos Alberto. Pedagogia da luta. Campinas: Papirus, 1997.
- ブラジルの教育哲学者で、カンピーナス州立大学(Universidade Estadual de Campinas: Unicamp)の教授。主な著書に「教育と民主主義(Educacao e democracia)」(1983年)がある。
- Saviani (2000) p.109
(2)サンパウロ州立大学教育学部図書館
サンパウロ州立大学教育学部では、論文を収集した。ここでは、インターネットからのダウンロードが可能なため、精読をせずに内容の確認とタイトルのメモのみを行った。参加型学校運営に関するものを全部で6冊
7 ノートに書き留めた。それぞれ、他の地域、学校の状況とこれまで調査を行った学校を比較するのに用いることのできる論文である。
- ①Cardoso, Aparecida. Gestão participativa numa escola comunitária. Campinas: UNICAMP, 1995.②Marques, Luciana Rosa. A descentralização da gestão escolar e a formação de uma cultura democrática nas escolas públicas. Recife: UFPE, 2005.③Longo, Isis Souza. Conselhos titulares e escolas públicas de São Paulo: o diálogo preciso. São Paulo: USP, 2008.④Mortatti, Maria Eloisa Velosa. Gestão democrática como um processo de educação para a cidadania. São Paulo: FEUSP, 2006.⑤Mendes, Valdelaine. Participação na definição de uma política educacional: um mecanismo de controle público sobre as ações do governo? São Paulo: USP, 2005.⑥Fortunato, Marina Pinheiro. O desafio da gestão participativa na escolar pública no estado de São Paulo e o desencontro do sistema central burocratizado: 1991-1995. São Paulo: PUC-SP, 1998.
(3)パウロ・フレイレ研究所
教育の研究機関であるパウロ・フレイレ研究所では、資料収集に加え、研究者への聞き取り調査も行った。パウロ・フレイレ研究所は、1992年にNGOとしてパウロ・フレイレにより設立された。市政府やその他のNGOと協力し、民主的教育に関するプロジェクトを行っている。
聞き取りに快く応じてくれたのは、オザスコ市でのカリキュラム作成のプログラムを指導しているデウセリア・ヌネス(Deucélia Nunes)である。カリキュラムにおいても保護者や生徒の意見の反映が求められ、教師を中心とした参加型の方法で行われている。今回の聞き取りでは、主にこれまで彼女が関わったプロジェクトにおける参加についての質問を行った。
また、隣接する書店で、CREで挙げた3冊目に加え、2009年に出版された『参加型民主主義と教育
8 』を購入した。この本は、リオ・グランデ・ド・スル州 における参加型学校運営を事例とした研究である。著者は、本の中で参加による階級差の緩和などの効果を認めているが、参加型学校運営を実践する上での課題も提示している。筆者の研究もこれに近く、この本は他の事例を知るだけでなく、理論的枠組みに関しても重要な要素を提供してくれる一冊である。
- Mendes, Valdelaine. Democracia participativa e educação: a sociedade e os rumos da escolar pública. São Paulo: Cortez, 2009.
(4)書店
書店にも連日、CREや研究所での資料収集を終えた後に足を運び、研究に必要な本を探した。サンパウロ市のパウリスタ大通り周辺の4つの書店を巡った結果、①『ブラジルの中間層』と②『民主主義、市民社会と参加』の2冊を購入した。
1冊目は、調査を行ったR校のある地区のような中間層の多い地域がどのような特性を持つのかを、背景として理解するために入手した。この本は、全国産業連合(Confederação Nacional de Indústria: CNI)の調査に基づきまとめられたもので、アンケートによるデータが分析素材となっている。
2冊目は、ブラジルを中心としたラテンアメリカにおける参加型の政策に関する論文を収録したものである。参加型学校運営は、民主化という視点から他の政策における参加の議論とも大部分で重なる20の事例が掲載されているこの本は、他の地域、他の政策における参加型の試みを理解する上で活用できるものである。
3.アンケート結果の分析
本章では、R校で回収されたアンケートの結果とその分析を簡潔に説明する。質問は20項目あるが、現状で使用しているデータは6つである。以下に、アンケートから明らかとなった①参加と関心の程度、および②保護者と教師の間の不一致を提示する。
(1)議論における参加と関心の程度
まず、保護者の議論の場への参加は少ない。アンケート調査の結果によると、78人中24人が、2010年度の学校評議会に一度も参加しなかった。4回全てに参加したのは1人だけであった。少なくとも一度は参加した保護者は40人で、極端に参加が少ないわけではないが、十分に参加しているとはいえない。一方、クラス集会には、38人が一度も参加しなかった。ここでの差は、学校評議会の場合より大きく、1回以下の保護者だけで全体の3分の2を占めていた。また、議論の場で意見を述べた回数は、一度も発言していない保護者が40人、1度だけ意見を表明した保護者は20人であった。2回発言した保護者は3人、3回は2人、3回以上は10人であった。
一方、教師も学校評議会に参加しない場合がある。回答を得られた22人の内、4人が学校評議会に参加したことがなかった。これには、赴任した初めての年であることや、役割が与えられていないことが関係している。参加した教師が意見を述べた回数には、明確な差が現れた。一度も発言しなかった教師が7人いたのに対し、9人が3回以上意見を述べたと答えた。発言の内容も、保護者に比べて細かく覚えていた。
この結果からは、保護者が十分に参加できていないことが明白である。出席の回数が少ないだけでなく、発言回数も、教師の半数が3回以上意見を述べたのに対し、7分の1程度と少なかった。こうした状況は、参加型学校運営による保護者の意見の反映に疑問を投げかけるものである。
しかし、意見の反映についての質問に対する保護者の回答は、そうした疑問とは異なるものであった。参加型学校運営は意見を反映しているかという問いに対し、78人中43人が「とても反映している」と答えた。「あまり反映していない」と答えた人と「全く反映していない」と答えた人は13人であった。回答を得られた22人の教師の内、14人も保護者の意見を「とても反映している」と回答し、教師の意見についても15人が同様に答えた。
また、意見の反映に関するものとして、校長の適性と予算の適正さを問う質問においては、保護者で「分からない」と答えた人を除いて、全員が「正しい」と答えた。「分からない」と回答した保護者は、前者の質問は1人、後者は14人であった。しかし、理由を問うと、校長が適任であることの理由を回答した保護者は「常に学校に居るから」、「学校を良く運営しているから」と述べた。校長が女性であるにも関わらず、「彼は良い校長だから」と答えた保護者もいた。
一方、教師の回答は具体的であり、全員が理由を記入した。予算に関しても同様で、保護者が予算は適正であるとした理由は、具体性に欠けていた。こうした矛盾は、保護者が、選挙で選ぶ校長と学校評議会で議論される予算に関して、十分な情報や知識を得られていない可能性を示している。
(2)保護者と教師の間の不一致
保護者と教師の間の参加型学校運営に関する理解や意見の不一致の有無を明らかにするため、アンケート調査では、「教育の有用性がどこにあるのか」という質問と、「学校評議会やクラス集会において誰の意見が重要か」という質問を設けた。
前者に対する回答は、保護者と教師で特徴が異なる結果となった。保護者も教師も、選択した人が最も多い回答は、「生活のための学習」であったが、保護者の場合は全ての回答が選択され、それ以外の回答を選んだ教師は1人であった。
この結果は、保護者の求める教育の多様さを示すと同時に、教師がそれを十分に把握できていない可能性を示している。クラス集会に参加する保護者が少ないことが一因となっていることが明白であり、保護者だけでなく、教師にとって生活を分析する環境がないことも窺える。
後者への回答も、保護者と教師の間の違いが明確に出る結果となった。教師が最も多く選んだ回答は「コミュニティの意見」、「教師の意見」の順であった。一方、保護者の場合は、「教師の意見」、「保護者の意見」となった。「コミュニティの意見」は、教師の回答の中で突出して多く、保護者の回答では7つの選択肢の内3番目であった。また、多くがコーディネーターを選んでいた点も、教師の回答の特徴である。コーディネーターを選んだ保護者は4人しかいなく、最も数が少ない。
この結果からは、教師が自らの意見の持つ力を認識していないことがわかる。参加型学校運営におけるコミュニティの重要性は、教育省により強調され、新教育基本法にも明記されている。回答を得られた教師の内3分の2がコミュニティを回答として選択したことには、こうした枠組みも関係しているだろう。
一方、コーディネーターを選択した保護者が少なかったことは、その役職の存在を知らないことが一因となっている可能性がある。コーディネーターには教師を直接まとめる役割があり、教員会議の司会や、教師へのアドバイスを行う。教師の回答でその数が多いことが、その重要性を表している。その事実を理解していれば、選択者が4人という結果にはならない。
このように、アンケート調査を実施したR校では、保護者と教師の間に学校運営に関する理解や意見の不一致が存在することがわかる。こうした少ない参加や状況を理解できる適切な環境の不備、保護者と教師の間の不一致は、参加型学校運営が市民の意見を反映することができず、実質的な参加を伴っていない可能性を示唆している。
今後の課題
今回、調査を断られたのは残念であった。これまで良好な関係をR校と築けていると考えていただけに、驚きでもあった。しかし、不本意ではあるものの、単独で訪問しようとして突然断られ、急遽代替の計画を立てることになった経験は、今後の教訓となる。
まず、調査を行う際、その場の関係者と共に行動することがいかに重要であるかを理解した。教育スーパーバイザーに相談することを筆者に求めたR校の校長の言葉からは、公立学校の教員にとって、上の立場の人物の意見や行動は受け入れざるを得ないものであることが窺える。一方、研究者が単独で調査を行おうとすれば、断るのは容易である。例え人間関係が既に存在したとしても、その人物が権威を持つ場合を除いて、学校の自律性により断ることが可能である。透明性の点で問題はあるが、それについて忠告ないしは告発できるのは、直接行政と繋がりを持つ場合である。こうした構造を理解し、今後は行政関係者を活用することも検討する必要があるだろう。また、調査は厭われる可能性が十分にあることも留意しなければならない。
次に、代替の計画を立てたことは、限られた時間と予算の中で何ができるのかを判断する貴重な経験となった。スーパーバイザーを介して説得を行うことも、改めて他の学校に打診することも可能であった。しかし、調査に対して消極的であることが明らかになったR校にこれ以上の協力を求めるのは倫理上の問題があり、他の学校で調査を行うのも十分なデータが取れる可能性が低いと判断した。そのため、第2の目的であった資料収集の幅を広げ、時間と予算を無駄遣いする危険を避ける方法を取ることにした。こうした経験は、突然問題に直面する可能性と、その後の再計画を行う過程を学ぶ機会を得た点でも価値あるものであった。しかし、経験が貴重であっても、今回の調査は、目的が達成されていない点から評価することはできない。今回の失敗を危機管理の欠如であると捉えて常に考慮に入れ、今後の調査における不首尾の危険を回避することが重要である。そうすることで、調査を効率的で実りあるものにすることができるだろう。