歴史を通して現在を見る
皆さん、はじめまして。私は2007年からフランスに移り、今はフランス北東部ブザンソンにあるフランシュ・コンテ大学の博士課程で古代ローマ史、後期ローマ帝国における歴史書を主に研究しています。フランスに移ってから2年間は南仏プロヴァンス地方の都市エクサン・プロヴァンスの大学の語学講座でフランス語の習得に集中し、その後フランス東部の都市ディジョンにあるブルゴーニュ大学博士課程に入り、その後今現在在籍しているブザンソンのフランシュ・コンテ大学の博士課程に移りました。
私が歴史に興味を持ち始めたのは、小学生のときに両親が『マンガ世界の歴史』を全巻買ってくれたのがきっかけです。それを何度も読み返した記憶があります。また両親が旅行好きでよく週末にお城や古戦場、そして博物館などに連れて行ってくれたことも影響していると思います。今現在の研究の対象であるローマ史を専攻しようと思ったのは、高校時代にヴェスヴィオ山の噴火で埋没した都市ポンペイの本を読んでからで、当時の落書きからローマの人々の生活に興味を持ったからです。今から2000年も前の人々であるにも関わらず、今のわたしたちと同じような考えや感情を持っていたことに驚き、その後何冊もローマ史関係の本を読みました。さらに古代ローマ帝国が存在したヨーロッパそのものにも興味を持ちました。そこで大学受験に際しては、ローマ史を学べてヨーロッパのことも体系に学べる大学として上智大学を志望し、入学しました。
上智大学で学士と博士前期課程(修士課程)を終えたのち博士後期課程に入りましたが、自分の研究対象である後期ローマ帝国における歴史書を研究するのに適切な場所としてフランスを選びました。私がフランスに移り住んでから驚いたのは、ローマ帝国が滅んでから1500年以上経っているにもかかわらず、ヨーロッパではローマ帝国の影響が見られることです。例えば、欧州連合や統一通貨ユーロなどはかつてヨーロッパほぼ全域を統治していたローマ帝国の理想を受け継いだものといえるかもしれません。さらにフランスではガリア人、ローマ人、ゲルマン人という3つの古代民族が自分たちの祖先であると考えています。ですからローマ人はもちろんのこと、その他のガリア人、ゲルマン人の文化遺産も非常に大切にされています。つまりこれらの民族がフランス人のアイデンティティのもとになっているのでしょう。またフランスに移ってから多くの友人を得ることができましたが、その現代フランスでの生活から古代ローマ史につながるヒントを得ることもありました。
史学科には皆さんの学習意欲に応えてくださる先生方がいらっしゃいます。ですから皆さんには上智大学でしっかり学んで世界を広げてほしいと思います。そして勉強に励んだり、部活・サークル活動に専念したりして素晴らしい学生生活を送ってください。