卒業生の声

授業が楽しい!

1994年度卒業生 白須(旧姓:墳崎)礼子(捜真女学校中学部・高等学部教員)
授業風景

授業風景

史学科を卒業し、母校である捜真女学校中学部・高等学部に教員として戻ってから来年の春でちょうど20年になります。どの時期も常に先生方に支えられ、成長した私にとって、自分が「先生」になって支える側になることは、長年の夢でした。しかし、実際には生徒たちに助けられ、教えられることの方がずっと多いのは、教育実習の時から現在に至るまで変わりません。

20代のころは、「もっと頼もしい先生にならなくては」と焦り、「良い授業をしなくては」と思い込んでいました。しかし、息子を出産し、自分自身が子育てをするようになると、不思議と肩の力が抜け、「生徒とともにつくる授業が生徒にとっても自分にとっても最良の授業」と思えるようになりました。だからからこそ、歴史の教科書の記述に大きな改変がなくても、毎年、毎時間、授業の内容は変わっていきます。このことが今、本当に楽しいです。新年度の最初の授業で自己紹介のあと「何か質問ありますか」と聞くと、生徒から私自身に関する質問が次々に出てきます。必ず出るのが「趣味は?」という問いですが、これに対しては「授業です」と答えています。ただ、授業の中でいつも葛藤するのが「最新の研究動向をどこまで生徒に伝えるのか」という問題です。

今でも忘れられない大学での講義の1つに、1年次の必修科目だった東洋史概説があります。大澤正昭先生は、私たちが受験で慣れ親しんだ山川出版社の世界史の教科書を題材に、いかに最新の研究成果と教科書の記述とがかけ離れているかを解説して下さいました。
自分が必死に覚えてきたことが真実とは限らないということに衝撃を受けると同時に、史料を読み解いて自分なりの真実にたどり着く歴史学研究の面白さを教えていただいた講義でした。あの面白さを生徒にも知ってほしいという思いから、自分の授業でも「教科書にはこう書いてあるけど、実はね…」という話をしたくなります。しかし、中学生・高校生が対象だと、生徒を混乱させることにつながりかねないので、実に悩ましいところです。

そこで、いつか大澤先生の東洋史概説の講義を、歴史に関心のある有志の生徒に聞かせ、歴史学研究の入り口の扉の向こう側をのぞかせたいと思ってきました。それが昨年10月に、大澤先生が本校に来てくださったことで実現しました。約100人の高校生とともに、私自身学生時代に一瞬戻って、先生の講義を伺うことができたのは大きな喜びでした。

今年度は高校3年生の担任をしています。実はこの高3生は、中1から6年間持ち上がってきた生徒たちです。同じ生徒を6年間連続で持ち上がるのは、約20年間の教員生活の中でも初めてのことです。私がずっと歴史の授業を担当していることで、彼女たちに私の歴史の見方を押し付け、彼女たちの歴史観を偏ったものにしてしまう可能性を危惧しつつも、6年間の内面の著しい成長を傍で見守り続けることができた幸せを日々かみしめています。そして、何人かの生徒は今、上智の史学科をめざしています。彼女たちが私と同じように上智ですばらしい先生方と出会って、研究の楽しさを存分に味わってくれることを願って、受験勉強の応援をする毎日です。

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