卒業生の声

上智大学史学科卒業生として

1992 年度卒業生 齋藤貴弘(愛媛大学・法文学部・准教授)
2002 年ギリシア旅行。アテネのアレスの丘の上で。右奥はアゴラのヘファイストス神殿。

2002 年ギリシア旅行。アテネのアレスの丘の上で。右奥はアゴラのヘファイストス神殿。

上智大学文学部史学科に入学したのは1989年。昭和が平成に替った年でした。史学科ではゼミ所属以前から豊田浩志先生には読書会などを開いていただいたりして早くからいろいろとお世話になりました。一方で、ユング心理学などにも関心があり心理学科の夏のゼミ合宿に参加したりもしました。学生時代は今思えば怠慢でしたが、充実していたという気はします。

入学当初から漠然と研究職を考えており、大学院に進むにあたってはギリシア史の先生のいる大学を薦めていただき、当時の東京都立大学(現・首都大学東京)大学院へ進みました。気持ちの割に勉強不足だったので大学院ではギリシア語史料講読のゼミをはじめ大変に苦労しましたし、出来の悪い院生で、指導教官の前澤伸行先生には随分とご迷惑をかけたのではないかと思います。

そうしたご指導のお蔭でなんとか修論も2年で書くことができ、博士課程に進むことができましたが、当時はまだ課程博士取得は一般的ではなく、研究を進めつつ日本学術振興会の特別研究員(PD)に採択されたのを機に博士課程を退学しました。

学振研究員時代は、2週間程度ですが初めてギリシアを訪れることができました。書物や画面を通じてしか接してこなかったギリシアという風土が、実際に訪れて嫌な感じだったらどうしようという一抹の不安は、まだ強い9月の陽射しの下、オリーブの木陰で乾燥した心地よい風を感じるうちに吹き飛んでいきました。

特別研究員の後は大学非常勤講師の仕事をぽつぽつといただくようになり、それだけでは(実家暮らしでも)生活できないので、書店員としてアルバイトを7年ほど続けました。
書棚を通していろいろ学ぶこともあり、接客業や自分より若い書店員たちとの仕事を通じての関わりも、よい経験になりました。ただ将来的にどうしたものかという漠とした不安は常にありました。その一方で、勉強会や学会、あるいは授業を通じて、年齢の上下を問わず、研究面でも、人格面でも尊敬できる諸先生、先輩、後輩、学生たちと出会えたこと、このことが研究のみならず、気持ちの上で生活を支える糧となりました。自分の能力については足りないところを挙げればきりがなく、人に恵まれたということを抜きに今の自分はなかったということだけは確信しています。

非常勤が少しずつ増え、書店バイトを辞めたのが2013年の1月でした。その年には、政治学や国際政治という、ちょっと専門から離れた分野の講義も担当しました。これも大変でしたが、現代における古代ギリシア史という学問の意義を再確認するうえで非常に勉強になりました。

そんな折、たまたま公募した愛媛大学に思いがけず採用され、この4月からは法文学部人文学科で准教授として仕事をしています。色々な大学に講義の時間だけ顔を出しては帰るという学生との接点もあまりない生活から一転、自然豊かで宗教的にも色濃い松山でアットホームな学生たちと一緒に勉強と研究を楽しんでいます。

 

同じくギリシア旅行。アテネ、アクロポリス南麓のアスクレピオス神殿の記念碑。 修論のテーマとなった史料。

同じくギリシア旅行。アテネ、アクロポリス南麓のアスクレピオス神殿の記念碑。
修論のテーマとなった史料。

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