卒業生の声

はっきりとした目的がありました

2003年度卒業生 高野麻衣(文筆家)
ジプシー楽団の人たちと(左端が私)

ジプシー楽団の人たちと(左端が私)

史学科に入った時、私にははっきりとした目的がありました。ヨーロッパ史、なかでも音楽や美術といった文化史について学び、いつかそれらについて書く仕事に就くこと。ウィーンを舞台にした卒業論文にも張り切っていて、そのためにも、化粧品会社にさっさと就職を決めました。回り道をしても目標には到達するだろう、という確信があったからです。そして卒業して1年ほどたった春、そのきっかけに出会いました。ラ・フォル・ジュルネ「熱狂の日」音楽祭。フランスで誕生したクラシックの「フェス」、日本初上陸のイベントは、本格派なのにオシャレで開放的、アルバイトなどで垣間見た地味なクラシック音楽業界とはまるきり違っていました。ここでなら、私を活かせる。そんなとき、愛読していた音楽情報誌での編集部員募集が目に飛び込んできたのです。「音楽と歴史」についての愛をアピールし、すぐに転職が決まりました。

編集部で基礎を学ばせていただき、その人脈から執筆依頼をいただくことも増えたため、29歳の頃に独立しました。同時に、音楽と同じくらい愛してきたアートやステージ、マンガといったサブカルチャーまで執筆ジャンルを広げました。より多くのクライアントを得るためでもありますが、業界のルールに縛られたスペシャリストよりも、対象とその時代背景をジャンルを超えてつなげていくジェネラリストであることが、自分の持ち味だと気づいたからです。それはまさに、「歴史」を愛する自分にふさわしいものでした。そういうものの考え方は、学生時代に身に着けたものだと自信をもって言えます。

現在は、著書を3冊と数本の連載を持ちつつ、WEBを含む雑誌やコンサート・プログラムへの執筆を中心に活動しています。また、この1年ほどでトークイベントやラジオ出演、コンサートのナビゲーターなどの仕事が急増したほか、東京フィルハーモニー交響楽団のワールド・ツアーに同行したりと、海外取材の機会も増えてきました。出版や音楽の業界には上智大学出身というつながりで声をかけてくださる先輩も多く、最近では女性の後輩が編集者になって「学生時代から読んでいました」と言ってくださることもあります。まいた種がどのように実を結ぶかは続けてみなければわからない、と感慨深いです。たしかなのは、「上智出身」は語学力に関して絶対的なブランドであること。学生時代にしっかり磨き上げ、社会に出てからもキープを怠らないことをお勧めします。それだけで仕事は格段に広がる、と痛感しているところです。

数年前の、派遣OLを兼業するなど目の回るような日々に比べれば、最近はほんの少しだけ余裕も出てきたように感じています。そしてその分、新しいカルチャーメディア「Salonette」の立ち上げに向けて動き出しているところです。愛するカルチャーを語り合うSalon+netであり、響きにはマリー・アントワネットの印象を。読者にはまさに、硬派とミーハーを両立して語り合った、史学科の仲間たちを思い浮かべています。

こんな本つくってます

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