今を頑張る
これから書くことはいささか偉そうにふんぞり返っているように思われるかもしれませんが、今後上智大学を受験しようと思われている皆さんのためになればと思います。
私は中学時代に英語に興味を持ち、公立で英語に特化している高校に進学しました。希望通りの進路でしたが、現実は私が思っていたものとは大きく異なりました。あまりにも勉強熱心な他の同級生たちに英語の勉強でついていけなかったのです。つまり私は挫折したのでした。そして大学受験を志した時にはもう私は英語ではなく他の学業を学ぼうと考えていました。ちょうどその頃、世界史で習ったユリウス・カエサルについてもっと知りたいと熱望していたので、上智大学文学部史学科を目指し勉学に励みました。その甲斐あって無事に史学科に入学できました。私は有無を言わず、古代ローマを扱う西洋古代史ゼミに入門しました。
希望通りの大学、学科、ゼミに入った私はさらに大きな転機に遭遇することになりました。私の指導教員である西洋古代史ゼミの教授、豊田先生はここ10年古代ローマのトイレの研究家でもあったのです。古代ローマのトイレ研究をする研究者は皆無で、先生は演習でよく「研究者って輩は身の程しらずに格好つけたがる連中で、生活に欠かせないトイレなんか汚いものとして研究したがらない」と仰ってました。たしかにトイレは小便や大便をする汚い場所というイメージですが、その一方で私たちの生活には決して欠かせないものです。
高校の世界史では決して習うことのない歴史を目の当たりにし、私の意識は英雄ユリウス・カエサルからトイレに向き始めていました。
そして3回生の夏、ゼミ生と教授でイタリアへ様々な遺跡を見に行きました。ローマ、オスティア、ポンペイ、エルコラーノと名高い遺跡や教会を巡り帰国した後、卒業論文のテーマを古代ローマのトイレに決めることにしました。というのも現地の遺跡で見てきた当時のトイレに私は魅了されたのです。それからしばらく経って冬になると避けては通れない就職活動が始まりました。いままで少しも就活を意識していませんでしたが、トイレの研究をしていくうちにトイレ業界に携わりたいと考えるようになってきて、トイレやトイレをはじめとする住宅設備メーカー、ハウスメーカーなどの衣食住でいうところの住に重きを置く企業を受けました。そして晴れてトイレやキッチン、ユニットバス、サッシなどを取り扱う総合住宅設備メーカーの営業マンになりました。
今年の4月、トイレを売ろうと意気揚々と入社したわけですが、入社3か月が経った今ではキッチンを得意とする先輩の影響もあってか、キッチンに興味がわきキッチンの勉強を積極的に行っています。新人の中ではキッチンの知識は誰にも負けないと自負しているくらいです。
つまり私は高校、大学、社会人、と何回も心変わりをして今に至ります。これからだって会社を変える可能性もあります。希望が通っても、何が転機となってどう進路が変わるかわかりません。そのためにはあまり先のことを考えずに、今現在を一生懸命に取り組めばいいのではないでしょうか。私の場合は転機となることがすべてつながった結果が今としてあるのです。ですので、現時点で上智大学文学部史学科に入りたいと考えている方は、精一杯勉強を頑張ってください。そして、晴れて入学されたら、何か興味を持ったものに全力で取り組んでください。また学問であろうと友人であろうと先生であろうと、色々な物や人に積極的に接していくうちにみなさんの将来を築くための転機があるでしょうから、その都度精一杯がんばってください。結果や未来はそういった中で自然と構築されるはずです。