まずは制度をしっかり理解することが大事
この言葉は職場の先輩から頂いたものです。私は現在、地方自治体が行っている例規整備(条例や規則などの制定、改廃を行うこと)をサポートする仕事をしています。具体的には、お客様(地方自治体)が起案した条例案等について、文言や法令の引用が適切かどうかを精査したり(写真参照)、法制執務(法令や例規を起案する際の決まりごと)に関する質問に文書で回答したりする業務や、法令の制定や改廃に伴って例規にどのような影響が考えられるかについて解説した地方自治体向けの記事を書く業務などを行っています。
就職してからというもの、法令や例規を読み込むことが仕事の基本的な作業であることもあり、法律に触れる機会が以前に比べて格段に増えました。学生時代は法学部関連の科目を一切履修したことがなく、法律に関する知識を人並み程度持っているかも怪しい状態でした。そのため、入社当初は文中の「てにをは」や法律独特の言い回しばかりに気を取られ、規定されている内容を把握することに悪戦苦闘する日々が続いていましたが、ある日アドバイスとして先輩から冒頭の言葉を頂きました。法律を読んで内容を理解することは制度を理解することと同じであって、法律を読むにはまずは国が公開している資料等を参照して、その法律が定めている制度そのものを理解することから始めることが大事、というのがそのアドバイスの主旨でしたが、このことは史学科で歴史学を学んでいる学生みなさんにも共通していえることではないでしょうか。
史学科に入学すると誰でもいつかは必ず史料を読むという作業を行うことになります。
漢文に返り点を付したり、くずし字を解読したり、複数の写本を校訂したり、外国語を日本語に翻訳したりなど、対象となる史料によってその読み方は様々ですが、それらはある社会的、制度的背景のもとに書かれたものがほとんどです。そのため、史料を読む際には、一字一句に注意して意味をとることも大事ですが、その史料が書かれた当時の背景を踏まえて読んでいくことで、より理解が深まるということは私自身の経験からいっても確かです。私は職場の先輩から頂いた言葉で、法律を読むという行為と学生時代に学んだ史料を読むという行為に必要な姿勢が共通しているということ(その意味では法律も史料に含まれるものといえるでしょう)に気付かされ、そして仕事を進めていく上での「楽しさ」を得たといっても過言ではないでしょう。
ちなみに、私は院卒ということもあって、今現在も研究活動は継続して行っています。
大学院のゼミや研究会には可能な限り出席し、機会があれば報告も進んで行っていますし、現在執筆中の論文もあります。サラリーマンでありながら研究活動を継続していくことは、時間的なものはもちろん、他にも多くの制約があり、また前例も少なく大変ではありますが、学問への真摯な姿勢を保ちつつ、仕事と研究の両立を目標に今後も精進していこうと思っています。