あなたならどうしますか?
○史学科から弁護士へ
私は、1993年に史学科に入学し、長田彰文教授のゼミに所属していました。
卒業後、司法試験に合格し、大学から歩いて10分位のところにある法律事務所で弁護士をしています。主な仕事としては、企業法務、不動産、M&A等を扱っています。また、書くことや話すことが好きなこともあって、法律実務書の執筆をしたり、放送大学でも教壇に立っております。
○史学科での生活を振り返って
史学科での生活を振り返ると、「悉皆調査(しっかいちょうさ)」が思い出に残っています。この「悉皆調査」とは、「悉く(ことごとく)」「皆(みな)」「調べ尽くす」という意味を有しています。 歴史学では、研究対象を確定する際に、その分野に関する文献・論文等の徹底したリサーチを行います。このリサーチを通じて過去の歴史研究の到達点を把握したうえで、未解明の分野や新たな歴史解釈へと迫っていきます。逆に、このリサーチが不十分だと、独りよがりの研究結果にもなりかねません。
学生当時、この悉皆調査は苦痛以外の何物でもありませんでした(この時の担当教員が豊田浩志教授であり、厳しい成績を頂戴した痛い思い出もあります。)。
しかし、この悉皆調査は、あらゆる分野で活用できるスキルです。弁護士業務でいえば、法令や判例の調査は必須ですし、法律の解釈が問題になっている事案では、国会での審議過程を調べるために委員会議事録等のリサーチも行います。他の業界でも、メーカーなら商品の研究開発やマーケティングリサーチは必須ですし、マスコミなら綿密な取材を行うことは当然でしょう。
このように、史学科で学んだことは、歴史学だけに留まるものではなく、あなたの人生にきっと役立つことがあろうかと思います。
就職活動へのステップアップとして学科を選ぶのも一つの考え方だとは思います。しかし、大学生活の4年間は、社会に出ると二度と得られない時間ですので、自分ならではの使い方が見つかるといいなと思います。
「4年間、好きに使っていいよ」と言われたら、あなたならどうしますか?
もし、純粋に歴史が好きでしたら、史学科での生活はきっと楽しいものになると思います。そして、大学での楽しい4年間は、その後の人生にも素晴らしい果実をもたらしてくれると信じています。