卒業生の声

他大学出身者だからこそわかる「上智らしさ」

2009年度大学院前期修了 工藤彩香(読売新聞記者、秋田勤務)
県警記者室で新聞チェック中

県警記者室で新聞チェック中

私は、2007年に他の私立大学から上智大学大学院(文学研究科史学専攻)に進学し、大学院の3年間を井上ゼミで過ごしました。

初めのうちは、施設の使い方や授業の選び方など、分からないことばかりで戸惑う事もありましたが、上智出身の大学院同期生や指導教官のサポートもあり、比較的すんなり馴染むことができました。

他大学出身者だからこそわかる「上智らしさ」があります。私が感じた上智の印象は、学部生も院生も、明るく自由闊達で、真面目だということ。「真面目」にも色々種類がありますが、上智生は自分の持つ興味関心が明確で、目標に向けて楽しみながら努力する人が多かったように思います。また、考えに芯がある一方、他人の意見にも寛容で、広いテーマについて仲間と熱く議論できる雰囲気がありました。院生として1泊2日のゼミ合宿にも参加させてもらいましたが、学年や専門分野を超え、学問の話で皆ワイワイ盛り上がる姿はとても刺激的で、学生の意識の高さを感じました。

学会や論文の締め切りに毎回ヒヤヒヤしていた身ですが、大学院修了後はどういうわけか、「毎日」締め切りに追われる新聞記者になりました。記者を元々志望していたわけではなく、学部生の頃から夢は高校教員。大学院で教職の専修免許も取得しました。そのうちに、「学校という狭い世界しか知らないまま社会科の教員になって、自分は一体生徒に社会の何を教えられるのだろうか」と考えるようになり、就職活動を始めました。メーカーや出版社など様々な業種を受けましたが、最終的に世の中の動きを最前線で体感できる新聞記者を選びました。

初任地の秋田支局に赴任後、県警担当、通信部勤務を経て、5年目を迎えた現在は、県警キャップをしています。県警担当は、警察官ら捜査関係者宅に「夜討ち朝駆け」し、時には酒場で親交を深め、ネタをもらうのが仕事です。有事の際には、現場で足が棒になるまで「地取り取材」をし、時には、批判や葛藤と戦いながら「遺族取材」をしなくてはなりません。

県警キャップは、こうした県警担当記者を束ね、事件事故取材を統括する立場にあります。これまでに秋田市の弁護士刺殺事件や、クマ牧場従業員2人が亡くなった鹿角市のヒグマ脱走事件、由利本荘市の土砂崩落5人生き埋め事故取材などを経験しました。

なかでも一番印象深いのは、記者1年目の2011年3月に発生した東日本大震災です。

岩手出身で土地鑑があったこともあり、応援派遣の第1陣として震災当日に盛岡市入りし、その後1週間山田町や釜石市などを取材。震災後も応援記者の派遣は続き、計8回3か月間ほど、岩手、宮城、福島の被災3県で取材しました。間もなく震災から3年半を迎えますが、秋田県内で避難生活を送る被災者もまだまだ多く、継続的な取材が必要だと感じます。

史学出身の記者は少数派ですが、歴史的な流れを踏まえて国際政治や経済を読み解くことができるというのは、一つの強みではないでしょうか。事件や事故、災害など突発的な事案が発生すれば、夜間休日問わず呼び出されることもままあり、記事には間違いも許されないため、肉体的にも精神的にもハードな仕事ですが、自分の視点で世の中に問題提起 できるのは、この仕事ならではの醍醐味です。

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