我が師の恩
◆はじめに
私は、2004年春に上智大学文学部史学科に入学し、日本近現代史の長田ゼミに所属していました。卒業論文の題目は「在朝日本人と朝鮮人 -反日感情の形成- 」です。大学卒業後は、母校である仙台白百合学園中学・高等学校で教鞭を執っております。史学科の HP へ寄稿する機会をいただき、大学時代の手帳や写真を掘り返し、過ぎ去りし日を懐かしく思い出しながら、記憶の整理をいたしました。お世話になりました、長田彰文教授をはじめ、史学科の諸先生方への感謝を込めて、書き上げたいと思います。
◆大学時代(2004年4月~2008年3月)
私は、上智大学史学科創立60周年を記念して出版された『歴史家の工房』を拝読し、2004年の春に、大きな期待を胸に上智大学の門をくぐりました。1年生では基礎科目を学び、2年生からは「史学教養演習」(通称プレゼミ)が始まりました。入学前からの憧れであった長田先生のもとで、日本近現代史の一次史料講読の訓練を受けました。そして、3年生からは卒業論文の執筆に向けて準備を始めました。長田先生は、いつも親身になってご相談に乗ってくださり、卒論執筆に向けて懇切丁寧に導いてくださいました。
長田ゼミの魅力(1) 「ゼミ合宿」
夏休みに「ゼミ合宿」として、3年次には近代日本に大きな影響を及ぼした著名人を輩出した鹿児島へ、4年次には長田先生のご専門でもある韓国へでかけました。近現代史にまつわる場所を巡ることはもちろんですが、長田先生の人脈を通じて、近現代史の研究をされている、鹿児島大学や韓国の西江大学の教授・学生と交流できたことは、先生のお力がなければ実現できなかったことで、貴重な時間となりました。その時に出会った学生とは今も交流が続いています。
◆教員生活(2008年4月~現在)
早いもので、教職についてから7年の月日が流れました。職場では雑務に忙殺され、教材研究は帰宅後の勤務時間外ではありますが、大学で学んだことを活かせることは大きな喜びです。仕事に明け暮れる日々ですが、生徒の笑顔を見れば疲れは一瞬で吹き飛んでいきます。生徒の歴史観形成に影響を及ぼす立場として、大きな責任を感じながら教壇に立つ毎日です。 昨年度より、宮城県高等学校国際教育研究会の幹事となり、諸先生方に教わりながら、宮城県の高校生が、国際理解と国際協調の精神を養えるようお手伝いをさせていただいております。国際社会において、相互理解のためには、歴史への認識を深めることが大切です。私は歴史の教員として、生徒たちが、歴史の一つの事象をさまざまな視点から考察しようとする姿勢を養うことを目指しています。自分の枠から見えた世界を全てだと信じ込むことなく、広い視野をもった豊かな女性として社会のために働いてくれることを期待しています。
◆渇いていることを忘れないために
就職後は、大学時代とは打って変わって、目が回るような忙しさが続きます。思うように学ぶ機会を得られず、焦燥感にかられている私に対して、史学科の先輩が「渇いていることを忘れないように」と助言してくださいました。その言葉が時折私の脳裏をよぎります。そこで、長田先生の「書を捨てて街に出よう」精神に従い、これまでに、本を片手に、インドへひとり旅にでかけたり、JICA東北教師海外研修に参加してインドネシアのスマトラ島北部に位置するアチェを訪問したりと、新しいことに触れ、少しでも生徒に還元できるよう努めています。また、一昨年は、フィリピンへ1年間留学する機会をいただいたので、国際教育にも力を入れていきたいと思います。これからも学び続ける姿勢を忘れずに、私の永遠の師である長田先生に倣って、自分のもっているものを、惜しみなく生徒に分け与えられる教師でありたいです。
◆おわりに
今回、執筆を通して、上智大学文学部史学科で学んだことが、私の人生の大きな土台となっていることを強く感じました。四年間という限られた大学生活の中で、最も大切なのは「出会い」だと思います。自分の殻を破り、新たな世界へ飛び出していくことで、その先の人生に彩りを沿えてくれることでしょう。史学科の後輩の皆様が、上智大学で有意義な学生生活を送り、よりよい人生を築いていくことを願っています。お世話になりました先生方、お体を大切に、ますますのご活躍をお祈り申し上げます。