人生いつでもチャレンジを
私は大学在学中、西洋古代史の豊田浩志先生のゼミに所属しました。先生の毒舌に大いに笑いながら、人生についても学ばせていただきました。ゼミ以外で心に残っているのは、学芸員の資格をとるための実習です。鎌倉で1週間遺跡の発掘作業を手伝い、東京の美術館で1週間実習に参加しました。どちらもとてもわくわくするような体験でした。
実習で美術への関心が深まり、卒業後は小さな画廊に勤めましたが、その後編集プロダクションに転職しました。結婚後は夫の転勤に伴い東京と大阪を行き来したり、二人の娘の出産等で仕事は度々中断しましたが、社会との接点を持ち続けたいと願い、娘たちが1歳になると保育園に預け、編集プロダクションで再び非常勤で働きはじめました。仕事ではおもに子ども向けの図鑑や書籍を編集したため、子育ての経験は大いに役に立ちました。二人目の子どもが少し大きくなったころ、出版社の方が個人的に仕事を依頼してくださるようになり、フリーランスの編集者に転じました。
その後、縁あって東京学芸大学の先生から学会誌の編集を依頼され、在宅での編集の仕事の傍ら、学芸大学でも働き始めました。
1年後に別の学芸大の先生からも声をかけていただき、国際的な環境教育プログラムであるGLOBEプログラムの事務局の仕事もお手伝いするようになりました。
GLOBEプログラムは世界112ヶ国の子ども達が参加している環境学習・観測プログラムで、本部はアメリカにあります。仕事内容はおもに、アメリカから世界の参加国に向けて出されるニュースを翻訳したり、環境(大気・水質・土壌・生物など)の観測方法の講習会を開催したり、学芸大で観測方法を指導する先生方とプログラム参加校の先生方との連絡役です。プログラムに参加する子どもたち(小学生.高校生)が研究成果を発表する会を開催したり、参加校に伺って子どもたちの活動の様子を見させていただくこともあります。子どもたちが仲間とともに地道な観測活動を続け、人前での発表なども通じて成長していく姿を見ると、本当に感動します。
GLOBEプログラムの仕事を6年間続けるうちに、環境教育を本格的に勉強したくなり、今春44歳で東京学芸大学の大学院に入学しました。受験勉強では英語は大学入試の参考書をもう一度読むことから始めました。記憶力が大学入試の頃と比べると格段に落ちていたため苦労しましたが、その分、自分の受験番号を合格発表で見つけたときは、何ともいえない喜びが沸き起こりました。
現在は20歳以上も離れた同級生たちと一緒に、環境教育を学んでいます。新しい知識を学ぶこと、自分の頭で考え意見を述べることが純粋に楽しく、とても刺激的な日々です。環境教育は体験に重きをおく学問のため、自然観察や野外実習などフィールドに多く出ることも心がけています。今後も環境教育に関わる仕事で、社会に貢献していきたいと感じています。
上智大学の史学科で学んだ地理的・歴史的な視点、社会に対する批判的な見方は、現在も役に立っています。皆さんも大学で(大学院もいいですよ)さまざまなことを学び、その後の人生に大いに役立ててください。