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2008年演目

Saudades da terra… Que terra?

ブラジル日系移民100周年記念公演

gogeki200801

―故郷は存在するものではない。故郷は作っていくものだ。育てていくものだ、畑の野菜のように。育てていくものだ、石のように辛抱強く。空に太陽の昇る日がある。空に雨雲の煙る日もある。山あれば、谷あり。上り坂、下り坂。嘆きは、来る喜びを保証し、涙は、次の笑みを約束するだろう―

終戦間際のブラジル。親の言うとおり、いつか日本に帰ることを思い描きながらも、いつ帰れるのかのわからない状況の中で、お互いに支え合いながら生活する涼子と次郎。2人はまだ日本の地に足をおろしたことはない。しかしある日、日本が降伏したという知らせが入る・・・。
故郷とは、国家とは・・・?過酷な状況の下で強く生きた移民たちの描く詩(うた)とは・・・。

勝ち組・負け組抗争とは・・・

1945年8月15日―日本が無条件降伏し第二次世界大戦が終結。この時から悲劇が始まりました。
太平洋戦争開戦にともない、ブラジル政府は1942年1月、日本に対し一方的に国交断絶を宣言、日本と敵対国となり、1945年6月、日本に対し宣戦布告を告げました。この時ブラジル政府は、国内の日本人移民に対し日本語禁止令を発布。日本人移民たちは、日本語学校の閉鎖、日本語書籍の没収、日本人3人以上の集会の禁止などの苦境を強いられました。ラジオの所持も禁止されたため、日本からの短波放送すら受信できず、また密かにラジオジャパンを聞いていた移民も大本営発表の情報を鵜呑みにし、ポルトガル語のできない人々は、日系コロニア内でのデマの情報に振り回されていました。
このような状況の中で伝えられた日本敗戦のニュースは、移民の間で「日本が勝った」というデマとなってコロニア全体に広まりました。そして「日本は負けたのだ」という「負け組」敗戦認識派と、 「日本は神の国。負けるはずがない」という「勝ち組」信念派に分かれ抗争が起こり、テロ行為や暗殺事件などの迫害にまで発展したのです。