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ポルトガル語劇団(Grupo de Teatro Brasil)

ポルトガル語劇団は、2003年に発足したポルトガル語学科直属のサークルです。今年は節目の10周年を迎えることになりましたが、改めて時の流れの速さを実感している次第です。言語学習は体得ともいわれますが、まさに教室では学ぶことのできない表現やジェスチャーなどを自分のものにしていくことが、本サークルの目的です。人前で演じることが初めての学生たちばかりですが、稽古を重ねていくうちに堂々と舞台に立てるようになるのです。

本劇団は基本的に1・2年生をメイン・キャストに、3・4年生を補佐、裏方、字幕担当として活動しています。私たちのサークルでは、先ず1年生が作品の中心になります。それはネイティブ教員による徹底した指導の下、各自の秘めたる可能性の発掘、特にそれまでの自分と違う役を演じることにより、未知の自分を見出していくことなどが主な理由です。何度も何度も繰り返しながら、確実に上手になっていくのです。膨大な量の台詞を暗記することも大変ですが、その中で大切なことは、文法やスラング、独特な言い回しなどをしっかりと考えながら暗記していくこと、またその国の文化について考えることも然りです。この作業が後のポルトガル語力を向上させる基盤となります。観劇や演技ワークショップも大切なプロセスの一つです。これによって動きを意識させるのです。語劇祭が近づくと、稽古も白熱するのですが、メンバー全員で話し合ってどんどん改良していく様子から、彼らが本当に楽しんでいることが伝わってきます。

初年度から2005年までは「シンデレラ」や「人魚姫」のようなディズニー作品をブラジル風にアレンジした作品でしたが、2006年からは学生自身がオリジナル脚本を書くようになりました。舞台はブラジル、ストリート・チルドレン、日本人移民、日本の民話のアレンジ、日系人のアイデンティティ・クライシス、人と自然との共存などが主なテーマです。様々な「ブラジル人」を演じることで、学生はその未知の世界を開拓し、それまで気付かなかった可能性を自身の中に見出していくのです。

2010年からはイスパニア語学科、ロシア語学科と一緒に外国語劇祭を10号館講堂で開催しています。同年からポルトガル語劇団は、字幕や背景、音響などを取り入れ、より高度な作品発表に取り組むようになりました。稽古ごとに上達していくことが目に見えるようになります。そして公演当日、緊張の中にも達成感が実感できた瞬間、そこに在るのは、大きく成長した学生たちの姿です。そこに辿り着くまでの日々の苦しさや悩みは、終了の瞬間に浄化されているように見えます。それを毎年学生たちと共に感動しながら、かみしめることができるのは顧問の特権ですね。

劇団顧問 Helena TOIDA