2015年度作品 Sonho de uma noite de luar 月夜の夢
今年の作品の原案は、ポルトガルの作家および詩人であるソフィア・デ・メロ・ブレイネル・アンドレゼン(Sophia de Mello Breyner Andresen)の『ブロンズの青年』(O Rapaz de Bronze)という童話です。深い森の中、昼間はひっそりと佇むブロンズ像の青年は、夜になると人間に変身します。そして周りの花々や木々とともに、もう一つの世界-月夜の森―を展開させます。多くの花が登場し、おしゃべりをしたり、生き方に悩んだり、恋をしたりします。ひょんなことから、グラジオラスはパーティーを開きたいと一大決心をします。しかし、この世界の王である青年は反対です。「僕たちの世界は全てがパーティーではないか」と。朝露があり、陽光が踊り、昼下がりのそよ風、そして夜のとばりーすべてがそのままパーティーなのだと。人間のものとは比べることもできない崇高なものだと。しかしグラジオラスは、ただ人間のパーティーを飾るものではなく、自分たちが楽しむためにパーティーを開きたいと言います。さて、この幕引きはいかに?
花たちの駆け引きも考え方もそのまま人間の世界に通じるものがあります。作品には唯一本物の人間の少女が登場します。彼女の役割にも注目していただければと思います。
ファンタジーの世界を通して皆様に楽しいひとときをお届けできたら幸いです。
チューリップにあこがれるグラジオラスたち。無い物ねだりは続く…
人間のパーティーを見ていたグラジオラスは、ふと思いつくー僕らだけの、花たちだけのパーティーを開催しよう!
いつも花瓶に飾られるのは花、でも花のパーティーではかわいい人間の少女を飾ろう!蝶々に託されたメッセージは少女にちゃんと届くのか?
蝶々に誘われて少女は森の中へ…彼女を待ち受けているものは何?
花たちの不思議な踊りは少女を魅了する。
楽しいパーティーは終わり、ランはとても大切なことに気付く。
無事に終えてほっとしている瞬間です。
2015年12月6日 上演を終えて
今年で6回目を迎えるイスパニア語・ロシア語・ポルトガル語学科合同語劇祭ですが、外国語学部をはじめ、学科の先生方、語劇祭実行委員会のご協力のおかげで開催することができました。また演劇協議会所属1号館講堂灯体管理の学生たちには、照明のことで本当にいろいろとお世話になりました。
この作家との出会いは、私のゼミ生だった二人の卒業生によるものです。本劇団の2011年度部長を務めた学生がこの「ブロンズの青年」の翻訳を卒業研究に選んだことからです。
その分析の一部ですが、ブロンズの青年の言葉に「信じられないようなことや幻想的なことも本当なんだよ」とあります。これは「純粋な心を持ち続けてこそ、大人になってその純粋さが心の豊かさを作り上げる」ことを意味しているのではないでしょうか。
花々のパーティーに招待された7歳のFlorindaは、幻想的な一夜を過ごします。しかし、周りに流されて、月夜のパーティーは夢だったと思い込み、青年や花々の声が聞こえなくなってしまいます。しかし、15歳になったある夜、また彼らと再開するのです。なぜでしょうか。
ヨーロッパに古くからある習慣で、女の子が15歳になったとき、社交デビューするというものがあります。貴族が娘をお披露目するという主旨で大きなパーティーを開きます。それが主にアメリカやブラジルでは今も残っています。まずパーティーが始まるとき、主役は子供っぽいかわいらしい服で登場します。ところが午前0時を過ぎると、正装し父親とワルツを踊ります。大人になったことを示すのです。この様な意味が「15歳」にはあります。15歳になった少女は純粋な心を持ち続けたからこそ、この時ブロンズの青年や花々と再会を果たすのです。
1年生にとっては初めての舞台で、まだ馴れないポルトガル語の発音や舞台での動きなどに悩みながらも、確実に役を自分のものにしていきました。2年生で初めて舞台に立った学生もいますが、そんなことも感じさせないパフォーマンスでした。字幕、照明、衣装など-裏方を一手に引き受けたのは上級生の皆さんです。忙しいなかにも、時間を作ってバックアップをしてくれました。
今年何よりも印象的だったのが、、皆緊張しながらも、皆とても楽しんでいることでした。ぜひそれを感じ取ってほしいと思います。
上智大学ホームページの Open Course Ware というところにこの劇の全編がアップされています。どうぞご覧ください。
全てが終わったあとに、やってくる達成感の瞬間ではないでしょうか。
来年の構想もすでに準備段階に入っています。学生達の熱気は高まるばかりです!
来年は、皆さんのご来場をお待ちしております。
顧問 Helena TOIDA