Um mundo incompleto 未完成な世界
今年の作品の原案は、畠山重篤氏の『カキじいさんとしげぼう』という作品です。氏は気仙沼市のカキの養殖家で、海と森とが密接な環境連鎖にあること、その均衡を保つことの大切さについて書かれています。海に長く棲んでいるカキのおじいさんとその友達の少年、そして山に暮らす少女の物語です。山がきれいになれば、海もきれいになるという、あまり考えのおよばない事実に驚きをおぼえました。これを舞台化したい、しかもブラジルに設定して-ということから舞台はアマゾンへ、登場人物はピンクイルカ、先住民の少女、そして町の少年へと変わりました。
生きる場所を失うということは、生きる意味を失うに等しいものです。人間は発展のためにどれだけの犠牲を自然に、そして弱者に強いてきたのか計り知れません。そのおろかな行為が後に取り返しのつかない結果を招くことに誰も気付いていないのです。いえ、たとえ気付いたとしても、気付かないふりをしてしまいます。なぜなら、それを認めてしまうには、あまりにも多くのものを諦めることになるからです。利益重視の世の中は肝心なことから目を背け続けるのです。
この「未完成な世界」に生きる私達ひとり一人にいったい何ができるのでしょうか。そんなメッセージを皆様にお届けできればと思います。
顧問 HELENA TOIDA
『カキじいさんとしげぼう』の著者・畠山重篤さんが舞台を観に来てくださいました!終演後、ねぎらいのお言葉をいただきました。この作品はポルトガル語にも翻訳されています。