上智大学

チーム紹介

社会・経済チーム

チーム概要

湿地と河川の生態系を人間と環境の視座から多角的に考察する研究活動をしています。手法も地域も多様です。理系のアプローチが、ミクロな視点で川の水質や環境とその生態系を凝視、定量化し、法律や経済のアプローチが社会のマクロな視点で人間の活動に注目するのであれば、社会・人文系のアプローチは、人間社会と環境の関係性や、その社会において周縁化される人々のパーソナルな視座にも目を向けます。たとえば、水質の改善によりサケが川を遡上して産卵することができるようになるプロセスに着目するとき、そこには人間の自然と共存しようとそる感性やそのための個々人の営みがあります。社会・人文チームは、そういった活動を支える価値にも関心があり、文学研究その範疇に入ります。
現在、チームメンバーは渡良瀬遊水地とチャオプラヤ川流域のほか、エストニア湿地や北米地域の地理的境界地域などの研究調査に従事しています。チームとしては、特定の地域に関して、上記に示したような人間社会と河川環境の密接な関係性の社会学的、人類学的、文学的観点から総括することを目標としています。

チームメンバー

小川公代教授

小川公代

外国語学部
英語学科 教授

文学と環境

川西諭教授

川西 諭

経済学部
経済学科 教授

環境経済

JJプテンカラム教授

JJ プテンカラム

経済学部
経済学科 教授

環境経済

伊藤毅准教授

伊藤 毅

国際教養学部
国際教養学科 准教授

政治と環境

渡邉剛弘准教授

渡邉剛弘

国際教養学部
国際教養学科 准教授

社会と環境

丸山英樹准教授

丸山英樹

総合グローバル学部
総合グローバル学科 准教授

教育と環境

水谷裕佳准教授

水谷裕佳

グローバル教育センター
准教授

文化と環境

研究レポート

渡良瀬遊水地

渡良瀬遊水地は、かつて水害や足尾銅山の汚染に悩まされた土地であり、環境改善のためにさまざまな方策がとられてきました。たとえば、関東近郊でも、水質の改善によりサケが川を遡上して産卵しており、利根川水系の支流である渡良瀬川にも秋から12月にかけて戻ってきています。渡良瀬遊水地の自然浄化機能として貢献する広大なヨシ原(ヨシ原浄化施設)や、害虫を駆除してヨシの成長を促す「ヨシ焼き」によって、豊かな自然がまもられてきました。人間が生態系を保全しようとする営みに従事すること、あるいは動植物と共存できる環境を作っていく営みです。2月に小説『渡良瀬』(伊藤整賞受賞)を書いた佐伯一麦氏を特別講演者としてお招きして渡良瀬遊水地をテーマにしたシンポジウムを予定するなど、イベントも企画、開催しています。この小説には、周縁化される人々の眼差し、人間社会と環境の関係性など鋭い視点だけでなく、この流域がかつて足尾銅山の鉱毒事件が起きた事実に触れる社会学的な眼差しもあります。環境が改善されつつある渡良瀬遊水地ですが、まだ解決されていない足尾銅山跡の問題もあるため、メンバー間でさまざまな情報共有を通じて渡良瀬遊水地の自然へのコンシャスレイジングに力を入れたいと考えています。

チャオプラヤ河

タイでは、ここ40年ほど経済成長を遂げるために外資主導の輸出産業を育成してきました。その結果、日本企業を中心としたサプライチェインが構築され、チャオプラヤ流域の人々の暮らしとその環境は大きく変化しまた。一方では、近代化として評価されるが、他方では、自然破壊やコモンズの喪失として嘆かれる。貿易・投資・援助において、日本はタイにとって重要なパートナーです。同時に忘れがちなのは、日本の経済発展にとって、タイは重要な役割をはたしてきました。チュラロンコン大学政治学部との共同研究により、これまであまり注目されてこなかったタイの環境・資源が果たした役割について、日泰関係を含めたアジア域内統合の視点から、研究を行っています。ここから見えてくるのは、過去150年のアジア域内統合そしてサプライチェイン構築に重要になったのは、資本・技術に加えて環境・資源を恒常的に保全・供給することであった。残念なことに、自由貿易協定などのルール作りには、環境保護に関する詳細は盛り込まれていません。一度破壊された自然は元の生態系に戻ることはできません。そのような問題を視野にいれながら、研究調査を継続しています。

Middleton, Carl and Takeshi Ito. “How Transboundary Processes Connect Commons in Japan and Thailand: A Relational Analysis of Global Commodity Chains and East Asian Economic Integration,” Asia Pacific Viewpoint. 2020.

詳しくみる

インドケララ州の洪水

Sophia Branding Activities in Kerala, India:Collaborative Research Projects

詳しくみる

その他

丸山英樹・齋藤有香・吉田陽香
「Study Tour to Wetlands in Estonia(事例紹介:エストニア湿地へのスタディツアー)」
『湿地研究 Wetland Research』Vol.10, pp.1-6.(2020)

水谷裕佳編著
『境界を越えた出会いの空間としての米国メキシコ国境地域』
上智大学イベロアメリカ研究所ラテンアメリカ・モノグラフ・シリーズ (No.28), pp.1-2, 3-43.
上智大学イベロアメリカ研究所(2019.3)

水谷裕佳「地理的境界と展示活動―ワイキキ水族館における環境と文化の展示を事例として ―」『境界研究』10号, pp.23-43.(2020.3)

渡邉剛弘 「ニューヨーク市ゴワナス運河流域における地域主体によるグリーンインフラ適用」『ランドスケープ研究』(5号論文集)(2020)

PAGETOP