「ガイ・フォークスの日」と火薬陰謀事件

学科長日記-火薬陰謀事件の首謀者たち

<火薬陰謀事件(1605)の首謀者たち>

2012年11月5日(月)

 今日、11月5日はイングランドでは「ガイ・フォークスの日」として知られています。これは「火薬陰謀事件」というある歴史上の出来事を記念した一種のお祭りです。

 イングランドの君主がエリザベス1世からジェームズ1世に代わって間もない1605年11月5日、当時、あらゆる面で差別され迫害を受けていたカトリック教徒の一部が過激な一種のテロリストとなり、国会の開催日に国王一家や貴族が議事堂に集合するのを狙って、その地下室に大量の爆薬をしかけ、彼らを議事堂もろとも木端微塵にして皆殺しにしようと計画していました。ところが、どうも仲間内から密告者がでたらしく、企みが事前に当局にばれて、首謀者13名が捕まりました。より詳しく言えば、ある者は直ぐに捕まり、逃げた者たちも、やがて追手に捕まるか、或いは捕えられる際に闘って死にました。捕まった者たちは、皆、繰り返し厳しい拷問にかけられた後に、絞首刑の際に死ぬ前にロープを切られ、引き下ろされ、生きたままで解体される、という非常に残酷なやり方で公開処刑されました。その首は釜ゆでにした後で、竿の先に刺して晒し首として見せしめとされました。

 ガイ・フォークスというのは、爆薬の点火係として国会議事堂の地下室に潜んでいたところを捕まってしまった男の名前です。彼はリーダーではなかったのですが、一番最初に捕まって注目を浴びたお蔭で、仲間の他の誰よりも歴史上有名になって仕舞いました。

 「ガイ・フォークスの日」は、こうして国王陛下や貴族たちの命がカトリック過激派たちのテロリズムから守られたことを記念して行うお祝いのお祭りです。夜になると、ガイ・フォークスに見立てた藁人形に火をつけて燃やしながら街中を人々がなり歩き、あちこちで花火をあげて騒ぐのです。カトリック教徒にとっては何とも肩身の狭い思いを強いられる一日です。

 僕の恩師、ピーター・ミルワード神父は幼いころにカトリック教徒だったお母さんに「どうしてうちでは花火を上げてお祝いをしないの?」と駄々をこねて困らせたことがあるそうです。カトリック大学である上智大学でも、ちょっとお祝いする訳にはいかないお祭りです。

 信仰を理由にした差別や迫害に耐えかねたある宗教団体の信徒の一部が過激なテロリストとなって極端な殺人や破壊行為に走る、というのは、特に9・11の同時多発テロ事件を経験した我々には、全く他人事とは思えない内容です。あるいはオウム真理教の事件にも似たような構図があるように思います。歴史は繰り返します。現代の事を考える際に、過去の人類の歴史には実に沢山の参考事例があります。

 最近、忙しすぎて本を読む時間が本当に限られているのですが、短い人生の中で、許される限り過去の歴史についても学び、今を生きる知恵を得たいと思います。

 この「火薬陰謀事件」について僕がかつて上智大学外国語学部紀要に書いた文章がネット上で公開されています。興味のある方は是非ご一読下さい。URLは次の通りです。

http://www.info.sophia.ac.jp/fs/staff/kiyo/kiyo41/togo.pdf