インドネシアより(2)
間瀬 朋子(博士後期過程)
イスラム教徒は、断食明けの大祭(レバラン―2002年の場合12月6日―)には帰郷するのが一般的です。「帰郷する」(ムディック)という語のもともとの意味は「さかのぼる」ですが、まさに特定の季節に魚がそうするように、人びとも一斉にバスや列車や船に乗り込んで故郷へと向かいます。
ジョグジャカルタのような大学都市は、ふだんは下宿住まいをしている学生たちの帰省によって閑散とします。各下宿は大半の学生を見送り、がらんとした状態。だからルバランは空き巣天国だと言われます。学生たちの財産―オンボロ・バイクや最新式ではないコンピュータ、オーディオセットなど―を、いつ泥棒にやられるかわからない下宿に放置しておくのは危険。泥棒対策は切実な問題です。そこで、数週間の帰省の間、家財は質屋に入れられます。質屋の質草管理は万全!そして少しばかりのこづかい(もちろん、後でこれに5%程度の利子を足したものを返済できなければ、質草は戻ってきませんが…)まで得られますから、質入れは学生たちにとって一石二鳥。したがって断食月末の質屋は毎年大繁盛。学生たちの一番の質草はオートバイです。一時的に、質屋はまるで駐輪場になります。
一カ月間の断食の義務を果たし、家族でレバランを祝うために帰郷する学生たちも、およそ一週間後にはキャンパスに戻ってきます。その後クリスマス休日、新年の休日と続きますが、同時に試験週間を迎えるため、レバランのうきうき気分はほんの束の間。焦る学生たちがノートを貸し借りし合ってコピー屋に走る風景は、インドネシアも日本も同じです。
写真:テレビを質から出す人(ジョグジャカルタ・カリウラン通り付近 2002年12月16日)