上智大学 大学院 グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻

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エッセイ(フィールドからの手紙)

カンボジア便り(2)

丸井 雅子(博士後期過程満期退学)

8月はバンテアイ・クデイ遺跡で発掘調査を実施しました。前回の調査で大量の石仏が出土した地点と近接した場所です。新たな仏像の出土を目論んで、発掘箇所を選定したわけではありません。バンテアイ・クデイ遺跡は、建造当初(おそらく12世紀末)から、幾度にもわたって改変・改造が繰り返されていることが、これまでの調査で明らかになっています。現在私たちが目の前にしている建造物や、あるいは土地のでこぼこといったものが、どのような形成過程を経て最終的に現在の形になったのかを解明するために、上から一枚一枚土を剥ぎながら調査を進めているのです。

さて、今回はプノンペン芸術大学考古学部学生7名が、夏期休暇中の現場研修生として私たちの発掘に参加してくれました。その中には、上智調査団での夏期研修が3度目になる4年生が3名含まれています。今回は合計6つのトレンチ(発掘区)を設定しました。それぞれのトレンチに研修生を割り当て、責任を持って仕事を進めて行きました。現場での作業の段取りも覚え、実測作業などは調査団のカンボジア人考古スタッフの指導を受けつつも自分たちでてきぱきとこなすことができるようになっておりたのもしい限りです。

バンテアイ・クデイ遺跡における発掘調査は、カンボジア人若手考古学者の養成も兼ねています。ですから単に現場の労働力と化しては意味がありません。現場では疑問点があれば必ず質問すること、 常に野帳を携帯して気がついた点を書きとめておくこと、などを約束しました。また、1日の作業終了時には各トレンチ毎に、担当者がその日の調査過程を説明し、皆とディスカッションする時間を設けました。調査は朝7時からお昼12時半まででした。12時過ぎれば、一刻も早く片付けて現場から引き上げたいのが人情。しかし熱心な彼らは、我も我もと説明が途切れず、しばしば1時近くまで現場での意見交換が続くことがありました。

たとえ考古学部の学生であっても、実際の発掘の機会は滅多にない、という現状があります。

カンボジア人考古スタッフと、研修学生については、次回(3)につづけてお話するつもりです。

■ 目次

インドネシアより(2)

間瀬 朋子(博士後期過程)

インドネシアより(1)

間瀬 朋子(博士後期過程)

カンボジア便り(2)

丸井 雅子(博士後期過程満期退学)

カンボジア便り(1)

丸井 雅子(博士後期過程満期退学)

アンデスの高地より(1)

山崎 洋之(博士後期課程)

東チモールにて(1)

福武 慎太郎(博士後期課程)

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