インドネシアより(1)
間瀬 朋子(博士後期過程)
博士後期課程の間瀬朋子です。インドネシア・ジョグジャカルタ市のガジャマダ大学に留学しています。イスラム教徒が人口の多数を占めるこの国で、断食月を体験中。毎夜午前2時半に起こされ、夕ぐれまで続く断食の前の食事(サフル)を摂るのにも慣れました。日中まったく飲み食いしないので、「これは家でごろごろしているしかないな…」と思いきや、積極的に出歩いているほうが空腹感に押しつぶされないでいられることを発見。わたしも断食しながら調査に出かけることにしています。ただ亜熱帯の地を歩き回れば、当然体が水分を欲します。のどの渇きを抑えるのはたいへんですが、今のところ、人びとが断食する意味を少しは理解したいという気持ちが、異教徒のわたしの生理的欲求を制御していると思います。
中ジャワの農村部が現在の調査地です。雨季を迎えたばかりのこの季節、突如降る大粒の雨がからからに干乾びた田畑を潤し、たわわに実るマンゴーをつやつやに光らせる、まさに恵みの雨というほかありません。厳格なイスラームというより、イスラーム的要素の混じった土着の宗教観に生きる人びとが多い土地柄でしょうか、農村部での宗教教育の不徹底さゆえでしょうか、ジャカルタなどの大都市とは異なりわたしの入っている農村地域では断食しない人びとが意外なほど多いです。ヤギ肉の炭火焼やチキンスープを商う食堂は、朝食に昼食に普段どおりの賑わいをみせます。
中ジャワの農村出身者のなかには、まさしくサバンからメラウケにおよぶ広大な国土を駆け回って、うまい商売を探すに長けた人びとがたくさんいます。インドネシア人の大好物であるミートボール・スープや鶏そば、アイスクリームや米粉から作る蒸し菓子、そして国民の健康を管理するさまざまな伝統生薬(ジャムー)をインドネシア全土で商っているのが、彼らです。こうした中ジャワ出身のモノ売りの出稼ぎにかんして調査・分析をおこなうのが、現在のわたしの課題です。
写真:ジョグジャの風物詩ー断食明けに備えて、菓子を売買する人びと(ガジャマダ・大学前のワルン・ティバン 2002年11月10日)