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Taça Habitual “いつもの”ワールドカップ(W杯特集第3弾)


ポルトガル語学科4年
斎藤祐太(さいとう ゆうた)

はじめまして。現在、僕はポルトガル北部の町「ポルト」で暮らしており、昨年9月から始まったこの交換留学もいよいよ終わりを迎えようとしています。今振り返ってみれば、僕のポルトガルでの生活は、まさに「サッカー漬け」の日々でした。地元のクラブチームである「FCポルト」の会員となってほぼ毎週末スタジアムへ足を運び、代表戦がある週末には、電車で約3時間かけて首都リスボンまで向かったこともあります。そんな留学生活を送ってきた僕にとって、まさに最後の楽しみとして待ち構えていたのがブラジルワールドカップ(ポルトガル語でTaça Mundial。以下、W杯)だったのです。

ブラジルでは、W杯期間中、代表の試合がある日には会社・学校が全休となり、自国の選手がゴールをあげるたびに町中がお祭り騒ぎになる。そんな話を耳にしたことがあった僕は、「ポルトガルのW杯はいったいどんなものになるのだろう!」と胸を躍らせていました。開催国でないとは言っても、ブラジルと同じ言語を話す「兄弟国」であり、情熱あふれるラテンの国。きっと町中がサッカー一色になるのだろう。そう思って疑いませんでした。

結論から言ってしまえば、ポルトガルは想像以上に盛り上がっていません!(笑)

国民からは、代表チームは「クリスティアーノ・ロナウドと10人の仲間たちだ」などと揶揄され、しかもそのエースが直前に負傷するなど、そもそもの期待値があまり高くなかったこともその一因かもしれません。W杯期間中でも、ポルトの町はいつもとなんら変わらずに落ち着いていました。

留学生ブログ画像(斎藤祐太20140628)01W杯期間中でもポルトの町を包む「平凡」

初戦のドイツ戦と次節アメリカ戦は自宅のテレビで観戦しました。外からは一切の歓声が聞こえてきません。そして不幸なことに、この2試合を終えて、ポルトガルがグループリーグ敗退の危機にさらされてしまったのです。「このままでは、ポルトガルのW杯をテレビの前だけで終わらせてしまう!」。そう焦った僕は、最後のガーナ戦を、市街地の広場に仮設された巨大スクリーンで観戦することに決めたのです。

留学生ブログ画像(斎藤祐太20140628)02パブリックビューイングでも、スタジアムと同じく海外サッカー名物「発煙筒」の姿が

この日だけはW杯の熱狂を感じることができました。ポルトガルが決勝トーナメントに勝ち進むためには、最低5点を奪っての勝利が必要でしたが、後半ロスタイムに突入しても、得点は未だ2ゴールのみ。事実上、グループ突破の可能性が絶たれてしまいました。FCポルトの試合では、勝利の可能性がなくなった途端にサポーターは途中退席してしまうのですが、この日は最後のホイッスルが鳴るまでほぼ全員が試合の行方を見守っていたのが印象的です。

留学生ブログ画像(斎藤祐太20140628)03事実上のグループ敗退が決まっても戦況を見守る人々

そして、終了のホイッスル。「兄弟国」にとってのブラジルW杯は早すぎる幕切れを迎えたのでした。

帰宅途中に僕が目にしたのは、いつもと変わらない穏やかなポルトの街並みでした。人々は、さも「普通の一試合が終わっただけじゃないか」とでも言うように日常に戻っていきます。そして翌日、僕はW杯開催時と全く同じ景色を、自宅の窓から望むのでした。ポルトガルにとってのブラジルW杯は特別な行事でもなんでもなく、国民が1年を通して愛してやまないサッカーの、ほんの普通の3試合にすぎなかったのです。