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「王国」のW杯(W杯特集第2弾)


ポルトガル語学科 5年
霜鳥新(しもとり あらた)

置き引き、スリ、強盗、殺人……。日本のメディアは、こういった言葉を並べて、ブラジルを表現しています。しかし正直、納得がいかない。そういった犯罪があるのは今に始まったことではないし誇張されている。しかも海外の国ならどこでも起きていることなのに。それにも関わらず、W杯でブラジルが注目され始めた途端、そういった負の部分ばかり取り上げています。哀しいことですね。W杯に合わせ、僕は以前、交換留学で滞在していたブラジリアにおよそ1年半ぶりにやってきました。今回はこのW杯現地レポートを通して、ありのままのブラジルをお届けしたいと思います。

現地時間の6月18日、私はコロンビア対コートジボワール戦が行われる、ブラジリアのナショナルスタジアムへと向かいました。天候は雨季とは思えないほどの快晴(ブラジリアの季節は乾季と雨季のみ)。観戦には絶好のコンディションでした。キックオフは13時でしたが、交通ラッシュを見据えて10時に寮を出発し、まずはスタジアム付近のショッピングセンターに待機することに。腹が減っては戦は出来ぬ、というわけで、まずは腹ごしらえ。館内のレストランエリアに向かうと、そこには黄色ユニフォーム姿の人、人、人。

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大量のコロンビアサポーターの姿が。お隣の国ということもあって、相当数のコロンビア人が入国していたそうです。さらに彼らは店内にも関わらず、ラッパを吹き大合唱。もはやお祭り状態。しかし、よく見るとブラジル代表のユニフォームを着ている人も。もちろんブラジル人です。どうやら彼らは、色が同じというだけでコロンビアサポーターに混ざって騒いでいたようです。これぞブラジル人。とにかくお祭りが好きなんですね。

そんな中で昼食を済ませ、いざスタジアムへ。ブラジリアにあるのは、ナショナルスタジアム。3部リーグのチームしかないこの街に、新たに造られたスタジアムです。

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美しい。その一言に尽きます。このスタジアムに集結した大部分は、やはりコロンビアサポーター、そして便乗したブラジル人たちでした。観客席は黄色で埋め尽くされ、コートジボワールカラーのオレンジ色はスタジアムに少しだけ。コロンビア代表が入場すれば大歓声、コートジボワール代表が入場すれば大ブーイング。前者がボールを持てば ”Olé!” の合唱、後者が持てば再びブーイングの嵐。南米の大会ならではの光景ですね。歓声が沸き、ため息がこぼれ、罵声が飛び、隣の人とハイタッチを交わす。そこはまさに、情熱の中心地でした。

結果は2-1でコロンビアの勝利。コロンビアサポーター+ブラジル人たちは大合唱の中帰路に着いたことは、言うまでもありませんね。

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この1日を通して感じたことは、みんなこの4年に一度のお祭りを全力で楽しんでいるということ。確かに多少の小競り合いや喧嘩はありました。しかし、それも大したものではなく、99%の人が情熱と感動を求めてスタジアムに足を運び、全力で楽しんでいます。日本では、デモが多発して治安が悪化していることや、日本人が犯罪に遭っていることばかり報道されていると思いますが、実際にはそこまで危険ではないように感じます。むしろその逆で、人々は親切で明るく、陽気に歌い、踊っていました。注意さえしていれば、最高に楽しい国、最高に盛り上がるお祭りなのは間違いありません。

ブラジルは確かに治安が良くありません。しかし、それは海外ではどこでも同じです。むしろ防犯に注意していれば最高に楽しめる国ですよ!
というわけで、僕はもう少しW杯をエンジョイしてきます!

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