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教員メッセージ・リレー第2弾!

矢澤 達宏

今日は、新型コロナウィルス感染拡大を受けた緊急事態宣言の発効日となりました。
50年以上生きてきた私にとってさえ、緊急事態宣言なるものははじめての経験です。
3月下旬以来、10日あまりキャンパスには行っておらず、自宅のPCに向かい仕事をする毎日です。

新入生の皆さん、はじめまして。
ポルトガル語学科教員の矢澤達宏です。
ご入学おめでとうございます! そして、ようこそポルトガル語学科へ。
とはいえ、入学式も中止となり、授業開始も延期となって、なかなか実感がわかないところかと思います。
じつは私も今日、息子の中学校への入学式が中止となり、親が書類と教科書の受け取りにだけ行くことになりました。
昇降口の脇に貼ってあったクラス分けの模造紙の前には、数人の父母が互いに距離をとりながら子どものクラスを確認しているだけ。
本当は、真新しい制服を着た新入生たちが、クラス分けを確認して、小学校から顔見知りの友人たちと喜び合ったり、残念がったりという光景が展開されていたのだろうに…、と思わずにはいられませんでした。

新入生の皆さんもきっと同じだろうと思います。
本当は、スーツを着て親御さんと式典に出席し、そのあとは在学生や教員が迎えるキャンパスへと移動し、これからともに学ぶ仲間たちともご対面のはずだったのに…と。
不安や焦りがあるかもしれませんが、この時期はこれから始まる楽しみ、悩み、学び、成長がてんこ盛りの大学生生活のうちのほんのわずかにすぎません。
そして、こうした経験は皆さんにとっても貴重な学びのひとつでもあると思います。
このたびの新型コロナウィルスの感染拡大のプロセスは、こんにちの世界が、そして日本が、いかに頻繁な人の移動のただなかにあるのかということを、あらためて私たちに痛感させずにはおきません。
とくに皆さんは、外国語学部という、将来、国際的な舞台で存分に力を発揮し、社会に貢献することが期待される学びの場に足を踏み入れようとしているのです。
日本のような社会で生活しているだけでは想像もできないような事態に、世界と関わっていけばとくに遭遇することも多いでしょう。
そうした状況に直面したときにも、冷静に的確な判断と行動ができるたくましさを身につけることが求められます。

今回のことで、海外に出て行くことに怖さを感じる人もいるでしょう。
ですが、外の世界、異文化に飛び込んでいくことは、他では得がたい経験、成長、歓びをかならずや皆さんにもたらしてもくれます。
私は海外デビューが大学卒業後と遅かった人間ですが、はじめての海外旅行でブラジルの大地を踏みしめたときの感慨は、いまでもけっして忘れることはできません。
リオの空港のターミナルをでたときのエタノール(クルマの燃料)のにおい、翌朝ホテルを出たときにとびこんできたイパネマ海岸のまぶしすぎる光景…。
世界の広さ、多様さを心の底から実感しました。

そのときの写真をひっぱり出してきました。30年近く前のことですから、当然フィルムで撮影したものです。

外の世界、異文化と交わることの醍醐味にとりつかれ、幸いなことにそれを仕事の対象にすることができています。
日本から遠い、アフリカとラテンアメリカという2つの地域に憧れ、いまも定期的に通っています。
これまでの訪問のときの現地からの簡単な発信が、教員BLOGの過去の投稿にいくつかありますので、よかったらのぞいてみてください。
私は、ポルトガル語圏の国を中心とするサハラ以南アフリカの政治・歴史と、ブラジルの黒人の歴史や文化、人種問題などを専門にしています。
私の担当している科目のほとんどは、2年次以降に履修できるものですが、「ポルトガル語圏研究入門」という1年生向けの科目で何回か授業を担当する予定ですので、そのときにお会いしましょう。
楽しみにしています。

さて、ポルトガル語学科の在学生の皆さん、元気にしていますか?
いざ受けられないとなると、授業が恋しくなったりしているんじゃないですか(笑)?
今回の世界規模の感染症の広がりで留学を途中で切り上げ、帰国せざるをえなかった皆さん、その無念さは痛いほどわかります。
ですが、海外に出て行くチャンスは、これで終わりというわけではけっしてないはずです。
ここはいったん気持ちを切り替えて、将来のあらたなチャレンジに備え、上智でしっかりとチャージをしてください。
ポルトガル語圏アフリカやブラジル黒人のディープな世界を学んでみたい人は、「アフロ・ブラジル文化論」や「総合ポルトガル語」の授業、あるいはゼミ(演習)でお待ちしています。

それでは皆さん、学期の始まる5月下旬には、できることなら教室で皆さんと実際に顔をつき合わせて授業をしたいですね。
でも、下のような感じで自宅から皆さんのPCに向け語りかけるかたちで、とりあえず学期を始めざるをえないこともあるかもしれません。
皆さんと直接お会いできる日が一日も早く訪れることを願いつつ。