私は交換留学制度を利用して2022年9月から1年間ルクセンブルク大学に留学しています。ルクセンブルクは他の留学先と比較すると非常に小国で特別有名な観光地があるというわけではないので、イメージが湧きにくい国であると思います。ここでは、ルクセンブルク留学の特徴についていくつか話していきたいと思います。
- 生活に関して
私がルクセンブルクに来て一番驚いたことは、トラム、電車、バスなどの全ての公共交通機関が誰でも無料で利用することができることです。15分に一本程度の頻度で乗り物は運行していて、日本と変わらないくらい綺麗です。国内の治安は比較的良く、危険な目に遭うこともないので、国内を自由に気軽に移動することができます。
また、ルクセンブルクの人口の約半数が外国人というところにも驚きました。しかし、実際はアジア系の人々の割合が非常に少なく、外に出ても片手で数えられる程度のアジア系の人しか目にしない日がほとんどです。コロナをきっかけに、様々な国籍を持つ人々がいるアメリカでさえアジア人を対象とした差別が問題になっているというニュースを見たので、ルクセンブルクで差別にあったらどうしようと心配していましたが、外国人に対し寛容な人が多く、差別にあうことは全く経験しませんでした。
ヨーロッパのシェンゲン協定が結ばれたシェンゲンという地域がルクセンブルクにあります。
- 言語に関して
ルクセンブルクでは公用語がフランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語の3つがあります。他の国でも複数言語を公用語としている国はスイスやベルギーなどもあると思いますが、ルクセンブルクの特徴は、スイスやベルギーのように地域によって使用言語が分けられているのではなく、国民全員が公用語の3ヶ国語を使えることです。これに加えて英語を話せる人も沢山いて、ほとんどの場所で英語がある程度通じるように感じます。街中ですれ違う人が色々な言語を話しているのが聞こえてきて面白いです。
3つある公用語の中で、フランス語の優位は非常に高いと感じます。街の標識、公的な手続き、乗り物のアナウンス、買い物でのやり取りなどの日常生活はフランス語がメインとなっていると思います。私はルクセンブルク語もドイツ語も全く理解できませんが、生活に困ったことは今のところありません。私は、最初はフランス語でコミュニケーションを取るように挑戦し、わからないことが出てきたら、英語で話してもらうようにしています。
ルクセンブルクは外国人が非常に多いため、フランス語を母語としない人も多くいます。そのため、下手なフランス語で話しても熱心に聞き取ろうとしてくれたり、わかりやすいフランス語で言い直してくれたりする人が沢山います。ルクセンブルク人は3〜5カ国語を話すマルチリンガルで、自然に習得した言語があれば、英語のように勉強をして習得した言語もあるため、外国語を勉強する苦悩を理解してくれており、フランス語初心者の外国人にも優しい人が多いと感じます。
- 授業に関して
ルクセンブルク大学ではフランス語を学習する語学授業がほとんどありません。語学の授業が最大で2つしか履修することができないので、私はPerfectionner son expression en françaisとFrançais académique B2というフランス語の語学授業を2つ履修しました。語学の授業数が限られているため、残りは上智大学で言う学科科目や全学共通科目のような一般の講義を履修しなければいけません。全てをフランス語で学ぶ授業だと自分にはハードルが高いと感じたので、その他はフランス語の講義2つと英語の講義2つを履修しました。フランス語の講義は、Introduction aux méthodes qualitativesとSans-abrisme et difficultés liées au logementを履修し、英語の講義はCoachingとAmerican Studies – “American”Narratives: Key Texts and Debatesを履修しました。
フランス語の講義の中で、私はSans-abrisme et difficultés liées au logementというルクセンブルクのホームレスに関する授業が印象に残っています。ルクセンブルクではホームレスの人や物乞いをしている人をほとんど見かけないため、授業を受けるまではそのような人々が国内にいるとはあまり想像していませんでした。この授業では、ルクセンブルクでホームレスの人々に支援をしている施設に見学をしに行く機会があり、食事を提供している食堂、ソファや椅子が沢山置いてあり寛ぐことができる部屋、寝床を提供している沢山の2段ベッドが並べられた部屋などを見させていただくことができました。実際の施設を見学することは私自身初めてで、どのような取り組みが行われているのか話を聞くことができました。ホームレスの人は生活環境や対人関係が原因で、精神的にストレスを感じ憂鬱になってしまう傾向があるようです。施設では必要があればカウンセラーと面会する機会を設け、家や食事などのサポートだけではなく、精神面のサポートにも力を入れているという取り組みが紹介されていました。
大学の学食がボリューミーで安くて美味しいです。デザートをつけても4ユーロ程度で食べることができます。
- 終わりに
留学が始まってからちょうど5ヶ月が経ちました。日本にいた時とは環境が全て違うため、慣れるのに精一杯で、毎日忙しい日々を過ごしています。ビズ(挨拶のキス)を初めて経験した時は戸惑ってしまいました。外国人の友人と会話をする時は言語が違うので、日本語で会話をする時よりもエネルギーを倍消費します。留学先ではフランス語を使ったり英語を使ったりしているので、話す時の口の形や筋肉が日本語とは違ったり、日本語以外の文章を組み立てたり単語を思い出したりするだけでも苦労するので、毎日刺激を受けています。留学期間は残り約半年ありますが、貴重な時間を無駄にしないように、精一杯頑張り楽しみたいと思っています。