ルクセンブルクに留学中

樋口草

 私は現在、交換留学でルクセンブルク大学に来ています。

 もちろんフランス語に関する苦労は、フランスでもカナダでも共通でしょう。ですからそれはここでは措いて、私が留学しているルクセンブルクの特徴的な例を挙げます。

1、外国人教員について

 そもそもこの大学に何人の外国人教員(非ルクセンブルク人教員)がいるのか、大学側に問い合わせてみたところ、そもそも把握していないそうです。これは昨今日本の大学を取り巻く環境と比べると非常に対照的です。いかにグローバル化された大学かを示すために日本の大学は外国人教員の在籍する割合に非常に細かい数字までこだわろうとしています。しかしルクセンブルクの例に見るように真に開かれた大学とは、教員の国籍という瑣末な問題に拘ることはしないのではないでしょうか。もちろんこの国が周辺国と地続きにあることは注意しなければならないでしょうが。実際のデータはさて置き、個人的な意見では教員はフランス語を母語とするアドバンテージを活かしたフランスやベルギー出身者が多いようです。しかしルクセンブルクの二重国籍を持っていたりすることもあるので、どのように把握すればよいのか難しいところです。他には私が出会った教授にはイタリア人の方がいます。その教授の授業がどうにもわからなくて隣の席の人に尋ねるとそれは強いイタリア訛りのせいだと言われ、それでわかったことなのですけれども。

 2,生徒たち

 他方、生徒たちについてみても、ベルギーやフランスからの留学生は別として、多数を占めるルクセンブルク人にとっても、フランス語は小学校から習い始める「外国語」です。それを実感した体験があります。あるとき、隣のルクセンブルク人の女子生徒に声をかけて、ノートを見せてもらおうとラップトップにふと目をやると、インターネットの翻訳サイトで教授の喋るフランス語の単語を、ルクセンブルク語に翻訳しようとしているのが目に入って来たのでした。

 何より、彼らにとっても外国語であるからこそ、こちらの拙いフランス語も根気よく聞いてくれる人が多いのかなという印象を持ちます。単に小国ゆえののんびりした気性ということかもしれません。ルクセンブルク人に囲まれると、やはりルクセンブルク語がさっぱりわからない疎外感は感じざるを得ませんが。

 いずれにしても、こちらの講義を理解するためには日本でその分野に関してよく勉強しておくことが何より重要であると強く感じています(語学的なものは言わずもがなとして)。こちらでは映画分析の講義や、美術史の講義が非常におもしろいのですが、それらは上智大学で入門をとっていたので、それらが理解の助けになっています。

 その他ルクセンブルク大学には、ヨガやサッカー等様々なスポーツの週一回のコースが用意されていて、僕はクライミングをとっていますが、これが非常に楽しく、いろいろな人との接点も自然と持てるので実に有意義です。

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クライミングの課外授業の様子

 

 付け加えると、この国は他のヨーロッパ諸国と同様、特に学生の文化教育に熱心で、美術館や映画館を格安で利用できます。都会の喧騒は皆無ですが、その点ではとても充実しているといえるでしょう。国内のバス、鉄道が学生はかなり安い値段で乗り放題となるのも嬉しい限りです。

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学生たちと

 

 まだ日本を離れてから2ヶ月程度ですから、この国とルクセンブルク大学の実際をどこまで掴み取れているかはまだ少々わかりかねます。しかしこれからも小国ゆえの静かな環境と、越境通勤者によって日中には市内の人口が二倍になるほどの、グローバルな環境とに囲まれて、勉強と、様々な人々との出会いを楽しみたいと思います。

最後になりましたが、2011年までドイツ語の学科長を務められ、現在はルクセンブルク大司教であられるオロリッシュ先生に大変お世話になっているので、この場を借りて厚くお礼申し上げます。

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オロリッシュ先生と