フランス語劇団La Congèreは、12月9日に行われた外国語学部語劇祭に参加しました。当劇団としては今回が語劇祭への参加は初めてでしたが、フランス語学科としては数十年ぶりの参加だと聞きました。長い歴史を持つフランス語劇団の復活に関わることができ、とても光栄に思います。
今回上演した作品は、『ロシュフォールの恋人たち』(原題「Les Demoiselles de Rochefort」)、ジャック・ドミ監督の1967年上演のフランス映画を原作としています。2時間ほどある原作映画を45分の戯曲に翻案し、登場人物を一部改変して全編字幕付きで演劇作品として上演しました。原作の雰囲気を残すために、皆で振り付けを考えて華やかなダンスシーンを取り入れたり、衣装や手作りの小道具など細部にも注意しました。
私は、今回監督兼演出を担当しました。今回のメンバーは大多数が演劇や舞台の経験がなく、前回の当劇団の旗揚げ公演に参加していたメンバーは二人だけでした。主要キャストのほぼ全てを、フランス語を初心者の一年生に担ってもらわなければならない状態でした。そう言う私自身も演劇はほぼ未経験の上に、監督や演出は初めてだったので、全て手探りで進めるしかありませんでした。そのため、本番を迎えるまでの時間は、苦労の連続でした。この映画は私自身大好きな作品で、その後の多くのミュージカル映画が参照している、指標をなす名作ですから、それに基づく以上、決して妥協できないという思いも一方では強くありました。本番まで2ヶ月足らずの時点でセリフ覚えからスタートしたため、間に合わないのではないかと不安になり、当初の予定よりも大幅に練習を増やしました。演技だけでなく、大道具や小道具、衣装ももちろん全てゼロから作り出さなければなりません。出演者が自分の勉学の傍に、セリフや動きなどを懸命に練習してくれていることは分かっていても、私は本番が近づくにつれ焦りを募らせ、しばしばメンバーに対して強い口調になってしまうこともありました。
語劇祭当日の本番を迎えるまで、私はもっと妥協して皆で楽しく活動することを優先しても良いのではないかと思うこともありました。登場人物の心情の変化がわかりやすいように直前に演出を変えたり、字幕、照明、音響のタイミングを合わせるために何度も練習したり、小道具や衣装を細部まで原作に近づけたりと多くのことを要求し過ぎてしまったのではないか、と自分を疑ったこともあります。しかし、上演には予想を上回る大勢の方が来てくださり、フランス語学科のOBの方や、他学科劇団のOBの方からもお褒めの言葉を頂きました。特に好評だったダンスシーンは、私自身客席から見ていても皆の心が一つになって、全員が楽しそうに生き生きと演技をしているように感じられました。この瞬間、私は今までの苦労や努力が無駄ではなかったと、強く感じしました。
原作映画の監督ジャック・ドミは、ロシュフォールの登場人物たちのことをこう評しています。
「一見、弱々しそうな彼らのなかに、ゆるぎない力がひそんでいる。彼らは、なんとしてでも目標にたどりつこうと、山さえも動かすはずだ。生きている上で重要なのは、それぞれの人が守るべき考え、世界を持ち、それを実行しようとすることだ。」
確かに登場人物たちは恋に浮かれ悲しみに暮れながらも歌い、踊りながら生きています。非現実的で夢見がちな人々のようにも見えますが、彼らは人生を楽しみ、常にこうありたいという思いとどんな苦難も乗り越えられそうな強さを持っています。今回の語劇祭でも、皆色々な問題や思いを抱えていたはずですが、使命を持ちかつ楽しんで演技できたのだと思います。そしてそれは人生を生きる上で欠かせないことの一つであり、そこに多くの方が共感してくださったのではないでしょうか。この語劇を通して、私自身も今後の人生の指針を得たような気がします。フランス語劇というとフランス語の習得が第一目標となりがちですが、それだけではなく一から演劇を自らの手で作ることで、フランス映画の精神にとことん向き合うことができのではないかと思っています。
最後ですが、キャスト・裏方を始め、急遽お手伝いをしてくださった学科の友人・先輩方、発音・演技指導や脚本の細かな添削を通し支えてくださった学科の先生方に改めて心より御礼申し上げます。今後とも、フランス語劇団La Congère をよろしくお願いいたします。
キャスト
デルフィーヌ 大地彩加
ソランジュ 佐野絵梨
ビル 熊倉七帆海メリネ
マクサンス 鈴木礼子
イヴォンヌ 山名純礼
ギヨーム 宮澤開吾
アンディ 鈴木亜湖
ブブ 寺田梓
カミーユ 飯野由有子
スタッフ
監督・演出 川越美弥
代表・照明 肥田悠
副代表・プログラム作成 鈴木礼子
字幕 寺田梓・飯野由有子