私は3年生に進級する直前の今年の春休み、ブルキナファソ大使館で2週間の研修を受けることができました。といっても、そもそもブルキナファソ自体をご存じない方が多いと思うので、研修の話の前に、まず簡単にこの国についてご紹介します。
ブルキナファソについて
ブルキナファソは、西アフリカ中央に位置する内陸国です。マリ、コートジボワール、ガーナ、トーゴ、ベナン、ニジェールに囲まれています。面積は日本の約 70%(274,200平方キロメートル)、人口は1,865万人です。約60の民族がその人口を構成しています。季節は乾季と雨季のみで、7月から10月までが雨季です。主な輸出品は金、綿花、ゴマなどです。2016年時点で経済成長率が5.9%、失業率は3.0%(世界銀行の統計による)と、経済の面でも好調です。かつてのフランス植民地政策の影響により、公用語はフランス語です。「ブルキナファソ」とは、現地の二つの言葉からなり、「高潔な人々の国」という意味です。(*「ブルキナ」はモシ語で「清廉潔白」、「ファソ」はジュラ語で「祖国」。フランス語ではLe pays des hommes intègres) 勤勉な国民性とおもてなしの精神から「アフリカの日本人」と呼ばれることもあるそうです。また文化活動も盛んです。主なイベントに、国際工芸見本市(SIAO、Salon International de l’Artisanat de Ouagadougou)、アフリカ映画祭(FESPACO、Festival Panafricain du Cinéma de Ouagadougou)、SNC(Semaine National de la Culture)などがあります。これらは全て、国際的なイベントです。(下記のリンク参照)
大使館での研修
今回の研修は大学のプログラムで、上智の学生のために作られたものです。単位認定されるので授業の一環とも言えます。このプログラムでは、大使館はブルキナファソだけでしたが、企業や国際機関、一般財団法人など、研修先は多岐にわたります。
私がこの研修を志望した動機は2つあります。1つ目は、大使館、ひいては政治や公の分野ではどのような仕事をしているのか、その内容を知りたかったからです。 2つ目は、普段勉強しているフランス語が、仕事という場面でどのように使われているのかに興味があったのです。そこで、ここではこの2点を中心にお話させていただき ます。
まず大使館の業務については、毎日どなたか1人につき、お仕事の様子を伺い、指導を受けながら実際の業務の一端を担当したりしました。例えば、二等書記官は一日中お仕事の様子や外交の決まり事などを教えてくれました。一等参事官はまず過去の口上書を見せ、解説をし、その後、似た状況を設定して実際に私たち書かせ、添削するという指導をしてくださいました。その他には、郵便物の仕分けをしたり、VISA担当の方とVISAを作ったり、婚姻届や出生届の翻訳と作成をお手伝いさせてもらったりと、様々な業務を経験することができました。
一番印象に残っているのは、「大使館の業務、ひいては政治の仕事は非常に広い」ということです。例えば外交に関しては「国と国」のやり取りが一番初めに思い浮かぶかと思います。もちろん日本とブルキナファソの関係、ブルキナファソとその他の国々の関係構築に関する業務は多くあります。(駐日ブルキナファソ大使館は、朝鮮半島や東南アジア、オセアニアの国々なども兼轄しています。このため、 例えば「韓国とブルキナファソの関係」も業務の一部として取り扱われています。)西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)にも加盟しているため、他のアフリカのECOWAS加盟国の在日大使館との関係も重要となり、定期的に会議が行われています。けれども、その他にも、「市」や「町」など、国より小さい規模の行政単位との交流も盛んに行われていることを初めて知りました。(横浜市はアフリカ開発会議TICADの開催場所でもあるため、アフリカに関しては特に力を入れています。)その他にもブルキナファソは映画関係で調布市や、布に関して松阪市などと交流をしています。業務や友好関係が、想像していたよりはるかに広かったことは驚きでした。
フランス語に関してですが、まず、業務遂行のために使用される言語はフランス語、英語、日本語です。先ほど述べた通り、ブルキナファソの公用語はフランス語です。このため、大使館に勤務する人たち同士の会話はもちろん、ブルキナファソ本国やそのほかのフランス語圏に送る書類は全てフランス語で した。横浜市とはフランス語でやり取りすることもありました。ただし、外交上、今や英語の存在はかなり大きいようで、フランス語圏以外の国々 とやり取りする際には英語を使っていました。日本の外務省や宮内庁とも英語でやり取りします。日本語については、日本人に向けて何かを行う場合、 例えばビジネスの会議を行う時などは日本人スタッフが通訳をしていました。当たり前のことかもしれませんが、いくつかの驚きはあったものの、ほぼ予想通りの割合でした。
フランス語について研修前に提起した疑問への答えは、「どんな分野についてもフランス語は使われるが、相手は限られる」でした。上記で述べたように、大使館が 対象とする分野がそもそも広大なので、どんな内容でもフランス語で表現できる能力が不可欠です。一方、フランス語を使う相手は多くても、全てではありません。フランス語圏は限られるので、英語を使う機会も多くありました。ただ、運用する人の数が限られる分その人との関係が変わります。英語で話す時とフランス語で話す時の心の距離の差は、人にもよりますが多かれ少なかれ感じます。特に自分が話すとき、フランス語の方が真剣に聞いてくれているような印象があり、「フランス語が多少でも話せてよかった」と強く思いました。
最後に
大学のプログラムではありましたが、講義とはまた別の、現場の空気感を学べたことは良い経験でした。想像の範囲内のこともあれば全く予想できていなかったこともあり、自分の見ている世界はまだまだ狭かったり偏っていたりするのだということを痛感しました。理論と実践両方のバランスをとって、地に足のついた人になろうと改めて思えた研修でした。通常の業務だけでもご多忙にもかかわらず、私たちに2週間も時間を割いてくださった駐日ブルキナファソ大使館の方々には感謝の気持ちで一杯です。
ワガドゥグ全アフリカ映画祭(FESPACO)仏語
ワガドゥグ全アフリカ映画祭(FESPACO)英語
西アフリカ経済共同体(CEDEAO)仏語
西アフリカ経済共同体(ECOWAS)英語