研究計画(2008年度)

<研究グループ1>
Ⅰ 今年度の目標
 初年度および昨年度(2年目)の研究を踏まえ、本年はとくにイスラーム主義運動の社会運動としての側面についての研究を推進することをめざす。そのために、社会運動の理論を専門とする講師を招いての研究会、および社会運動理論を使った具体的な研究報告会を開催する。また、あらたにハサン・バンナー著作集の読書会を始め、若手の研究者や大学院生たちの共同の研究活動の場を構築する。
Ⅱ 活動内容
 1.研究会活動
 社会運動理論の研究会、社会運動理論からみたイスラーム主義運動の研究会を5月、7月、9月、12月、1月に開催する。9月の研究会は研究合宿にする予定である。また、今年度からハサン・バンナーの著作集の原典講読会を始める。その成果は「原典翻訳書シリーズ」としての刊行を計画している。
 2.マレーシア国際会議への参加
 2008年11月マレーシアで開催される国際会議において「サラフィー思想の拡散とイスラーム世界の誕生」というテーマで部会をくむ。
 3.海外調査
 エジプト、レバノン、インドネシア、モーリタニアにおいて、イスラーム主義運動の調査を実施する。調査は資料調査とインタビュー調査の両面から実施する。
 4.研究者招聘
 ヨルダンよりHamid Murad教授を招聘し、イスラーム主義運動と女性の社会運動というテーマでワークショップを開催する。
 5.その他
 ワーキングペーパー・シリーズ第3号として『アルジェリア・ウラマー協会関係基礎資料集』(翻訳と注)を刊行する。

<研究グループ2>
Ⅰ 今年度の目標
 昨年度に引き続き、(1)キターブの収集・目録作成・研究、(2)ジャウィ資料を含む現地語資料にもとづく政治思想、政治運動の研究―人間集団の分類概念と政治共同体の構想をめぐって、(3)東南アジア・イスラーム研究の再検討とジャウィ文書研究の位置づけ、を3つの柱として精力的に研究活動を展開する。
Ⅱ 活動内容
 1.研究会活動
 東南アジアのイスラーム研究の成果と課題に関する合宿研究会を開催し、ジャウィ文書研究の意義と課題を再確認する。東洋文庫拠点と連携して、東南アジアのキターブ目録に関する研究会を開催する。
 2.マレーシア国際会議への参加
 2008年11月にマレーシアで開催される国際会議において、ジャウィ資料を利用した東南アジアのイスラーム地域に関する研究成果を報告する。
 3.海外調査
 インドネシア、マレーシア、タイでキターブの収集とキターブの出版・流通に関する調査を行なう。
 4.研究者招聘
 東南アジア・イスラーム文献学の専門家、Oman Fathurahman氏を招聘し、ワークショップを開催する。
 5.成果公開
 昨年度開催した国際シンポジウム「バンサとウンマ:東南アジア・イスラーム地域における人間集団分類概念の比較研究」の成果にもとづいて、英文学術研究書の編集・刊行準備を進める。
 6.その他
 東洋文庫拠点との連携プロジェクトとして、これまでに収集したキターブの目録作成を行なう。この活動には、昨年度、中心拠点により招聘したエルファン・ヌルタワブ氏(Syarif Hidayatullah State Islamic University)に引き続き協力してもらう。

<研究グループ3>
Ⅰ 今年度の目標
 一昨年度から継続してきた研究会およびワークショップの成果を生かし、KIASユニット4との連携をさらに深めつつ、スーフィズム・聖者信仰・タリーカ・サイイド/シャリーフについての共同研究を推進する。
 スーフィズムとイスラーム復興をめぐるパネルを、2010年のWOCMES (World Congress for Middle Eastern Studies)3において組織することを見据えつつ、今年度はとくに次の2点に研究努力を傾注する。
 1.3年間にわたる研究成果を整理し、各種の媒体(IAS英文叢書、SIAS Working Paper Series、ウェブサイト、メールマガジンなど)によって発信し、多様な専門家からのフィードバックを得て、共同研究の方向性を確認し、さらに明確にする。
 2.修士論文や博士論文などで、本グループの研究に関わる主題を扱った大学院学生、若手研究者をグループの活動に参加せしめ、共同研究の裾野を広げる。
Ⅱ 活動内容
 1.研究会活動
 京都大学イスラーム地域研究センター・ユニット4(KIAS4)との共催で、6月、10月、翌2月に研究会を、9月に研究合宿(上智軽井沢セミナーハウス利用)を開催する。
 2.海外調査
 KIAS4との共催で、8月にモロッコにおいてスーフィズム・聖者信仰複合を主題とする共同調査(期間2週間程度、参加者SIASから3名、KIASから2名)を実施する。
 3.研究者招聘
 スーダン国立公文書館館長カッラール博士(Ali Salih Karrar)を招聘し、スーダンのタリーカに関するセミナーを開催する。
 4.成果公開
 グループ3の研究成果はSIAS Working Paper Seriesで発表するほか、IAS英文研究叢書シリーズにおいてスーフィズムと聖者に関する論集を編集刊行する。
 5.その他
 2007年度末に構築を行ったメーリングリストとウェブページを完成させ、運用を開始する。また、英文メールマガジンを発行し、海外の研究者との連携を図る。

  <研究成果の公開>
 研究グループ個々がその活動の成果として発表する論文、論集等の他に、拠点全体としては『上智アジア学』(年刊、上智大学アジア文化研究所発行)の編集担当に私市、川島、赤堀があたる年度について、イスラーム地域研究を主題とする特集を組む。加えて、研究所の刊行するモノグラフ・シリーズの一環としてイスラーム地域研究関連をサブシリーズとして継続的に刊行する。
 さらに、新イスラーム地域研究叢書の1巻(私市担当)、New Horizons in Islamic Studiesの1巻(赤堀担当)、東南アジア・イスラーム研究ハンドブック(仮称)1冊(川島担当)を刊行することによって、全体としては日英語での専門的な論集と教育効果の高い著作のバランスの取れた成果公開を実施する。
 イスラーム地域研究全体のウェブサイトとは別に、アジア文化研究所、アジア文化副専攻(外国語学部アジア文化研究室)、大学院グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻のウェブサイトを横断的につないで、本拠点のウェブサイトを構築するとともに、拠点の活動に関心を有する研究者他に向けてメーリングリスト、メールマガジン等を構築する。