研究計画(2007年度)
2007年度は、前年度に確立された事務局体制、各研究グループの組織、ウェブサイト、メーリングリスト等を一層充実させるとともに、各研究グループによる研究会、現地調査、資料収集等の活動については、前年度の活動を修正をしつつ、具体的な成果をあげるべく努める。その際、海外の研究者や研究機関との協力を重視する。
2007年4月と2008年3月に3グループ合同の研究・意見交換会を実施し、研究課題と目標の共通理解をえる。また次年度に向けての反省と研究修正も行う。
<研究グループ1>は、初年度の研究を踏まえ次のような活動を行う。第一に、前年度に作成した「イスラーム主義運動組織」の研究文献目録(欧米語・日本語)に続いて、アラビア語、トルコ語、ペルシア語、ウルドゥー語など現地語で刊行された研究書・研究論文の文献目録を作成する。第二に、イスラーム主義運動の社会運動としての性格を再検討するために、「イスラーム主義運動と非イスラーム主義運動(NGO、マイクロクレジット運動、その他)の比較」というテーマで、合宿研究会を実施する(2007年9月予定)。第三に、レバノン、パキスタン、アルジェリアに研究者を派遣し、ヒズボッラー、ターリバーン、FIS(の後継運動)に関する調査を実施する。レバノン出張者は、サン・ジョセフ大学(上智大学との学術協定の締結予定)を訪問し、研究協力体制の樹立についても意見交換を行う。アルジェリア出張者は、研究分担者Zoubir Arous氏の所属するアルジェ大学CREADを訪問し、同様の意見交換を行う。第四に、エジプトからムスリム同胞団の研究者を招聘し、シンポジウムを実施する(2007年12月予定)。以上の活動の成果については、上智大学の「イスラーム地域研究」プロジェクトのホームページ上に掲載する。
<研究グループ2>は、(1)キターブの収集・目録作成・研究、(2)ジャウィ資料を含む現地語資料にもとづく政治思想、政治運動の研究―バンサ(民族)とウンマをめぐって、(3)東南アジア・イスラーム研究の再検討とジャウィ文書研究の位置づけ、を3つの柱として精力的に研究活動を展開する。5月には、国際的に著名な3名のマレー世界近代史研究者―アンソニー・ミルナー氏(オーストラリア国立大学教授、東京外国語大学外国人研究員)、アリフィン・オマール氏(マレーシア北部大学教授)、マイケル・ラファン氏(プリンストン大学准教授)を迎え、東京と京都で国際シンポジウム「バンサとウンマ:東南アジア・イスラーム地域における人間集団構成概念の比較研究」(2回シリーズ)を開催し(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究「マレー世界における地方文化」、京都大学地域研究統合情報センター共同研究会「イスラム教圏東南アジアにおける社会秩序の構築と変容」と共催)、記録集を刊行する。後に、これにもとづいて、この分野最高水準の英文学術研究書を編集刊行することをめざしている。8月、および、2008年2-3月にはボルネオ島、南部フィリピン、南部タイを含め、東南アジア各地のキターブ類を分担して収集し、それらの予備的目録を作成し公開する。本研究の前身プロジェクト以来、密接な協力連携関係にあるジャウィ文書研究会(事務局:東京外国語大学外国語学部青山亨研究室)のメーリングリストやウェブサイトを積極的に活用するとともに、ニューズ・レターを発行して情報交換と成果公開、国際連携を積極的に進めていく。また中心拠点と協力して、現地研究者を1~2ヶ月招聘し、東南アジア・イスラームに関する共同研究を実施する。1月にはワークショップを開催し、東南アジアのイスラーム研究の成果と課題を検討し、ジャウィ文書研究の意義と課題を再確認し、本研究3年目以降に向けて研究戦略・研究内容・研究計画・研究体制を練り直す。
<研究グループ3>は、本年度、タリーカ研究および預言者一族崇敬の研究に重点を置いて組織化に努め、1回の研究合宿、3回の研究会を着実に実施、かつ若手による読書会を立ち上げる。また、アブドゥッラフマーン・ラクサースィー(ムハンマド5世大学教授、モロッコ)らを迎え、研究の国際的展開をさらに進める。8月にはインドにおいてスーフィズム・聖者信仰複合を主題とする教導現地調査を実施する。成果公開としては、前身となる共同研究が組織した国際シンポジウム等での部会発表を元に『アジア・アフリカ地域研究』に特集を組む他、一般向けの図書『民衆のイスラーム―スーフィー、聖者、精霊の世界』を編集刊行する。この他、独自ウェブサイトの構築、メーリングリストの機能拡張など行う。