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本学科教員の著書『ブラジル黒人運動とアフリカ』が刊行されました!

矢澤 達宏

 このたび、本学科教員の私、矢澤達宏の著書『ブラジル黒人運動とアフリカ――ブラック・ディアスポラが父祖の地に向けてきたまなざし』(慶應義塾大学出版会)が刊行の運びとなりました。ブラジルの黒人たちが地位向上、境遇改善を目指して展開してきた行動・運動・思想において、自分たちのルーツであるアフリカをどのように位置づけてきたのか――。これが本書の主題で、私が大学院生の頃から追いかけてきた研究テーマです。かなりの年月を要してしまいましたが、これまで何度かに分けて発表してきた研究成果を、このように1冊の書籍にまとめるところまでたどり着けたことは率直にいって大きな喜びです。
表紙仕上がり(ファイルサイズ縮小)
 本書では、ブラジル黒人の歴史のなかの3つの局面をおもな分析対象としています。1つ目は、19世紀に奴隷から解放された黒人の一部が船で父祖の地アフリカに「戻った」現象、2つ目は、20世紀前半にサンパウロで展開された黒人運動(およびその主要な意見表明の場であった黒人新聞)、3つ目は、1960~70年代に黒人運動家アブディアス・ド・ナシメントが練り上げていった、アフリカ人の置かれてきた状況と重ね合わせながらブラジル黒人の真の解放を唱える思想です。ブラジルからアフリカに「帰還」した黒人たちは、奴隷として捕らわれる以前の生活を取り戻そうとしたのでしょうか? 20世紀前半の黒人新聞がアフリカやパン・アフリカニズムの動向をとりあげたのは、植民地支配にあえぐ父祖の地の窮状に抗議し、「兄弟」たちとの連帯を示したかったからでしょうか? アブディアスはブラジルの黒人とアフリカとのつながりならどのようなものでも、黒人の解放に向けた推進力に利用したのでしょうか? こうした問題意識にとりくみ、私なりに結論を導き出していったのが本書ということになります。

 いわゆる学術論文がベースとなっているため、やや専門的に感じるかもしれませんが、ブラジルの黒人のあまりなじみのない側面を知ってもらいたいという思いも込めて、まとめました。よろしければお手にとってながめてみてください。お読みいただけるならうれしいです。