Guten Tag! 現在ハイデルベルク大学(Universität Heidelberg)に留学中の、ドイツ語学科3年金子睦実です。在外履修と交換留学を合わせて計1年間留学をしています。昨年9月から始まった留学も、早いもので残りあと2ヵ月弱となりました。今回は私が留学中に感じたコミュニケーションの楽しさについて書かせていただきたいと思います。
ごく当たり前のことですが、日常生活においてコミュニケーションは欠かせません。お店の店員、先生、同居人、友達など、毎日多くの人と会話をします。そして、これも当然ですが、留学中はこれらのコミュニケーションをほとんどドイツ語で行います。留学生の中にはドイツ語が話せない人もいるので英語で会話することもありますが、それ以外の場合は基本的にドイツ語です。当たり前のことを言っているようですが、私は留学開始直後、この日本語以外でのコミュニケーションにとても壁を感じていました。
ありがたいことに私が滞在しているハイデルベルクは観光地なので、街のほとんどの人たちが英語を話すことができます。そのためドイツ語を使わなくても生活ができてしまうのですが、せっかくドイツに留学しているので、何事もまずはドイツ語で始めてみることにしました。しかし、やはり留学初期は失敗もたくさんしました。ハウスマイスター(管理人)が家の説明をしている時、途中までは理解できるものの、その後ドイツ語についていけなくなり何度も聞き返したり、こちらの意思が全く伝わらなかったり、パン屋さんに行った時、1つしか注文していないはずのパンがなぜか2つ入っていたこともありました。また、国内旅行中にホテルでチェックインをする時、最初は威勢よくドイツ語で挑むものの、途中から分からなくなって「やっぱり英語で!」とお願いしました。友達と何気ない話をしている時に、話が嚙み合わずお互いに「?」となることもありました。
失敗を重ねた私は外国語での会話に自信を無くし、自分から話をすることに躊躇ってしまうことが増えた時期もありました。ハイデルベルクには日本人留学生も多く、日本人と日本語で話すことの簡単さに甘えて日本人ばかりと話していたこともあります。しかし、それでは留学の意味がないと自分に鞭を打ち、現在ではタンデムパートナーも増やし、また自分から会話を進めるようにもして、たまには日本人ともドイツ語で話してみるなど、自分の語学力をできる限り伸ばすために努力しているつもりです。
こうして人との交流を増やしていくことで、語学力が向上したこと以外にも得たものがあります。それが、言語の壁を越えた先にあるコミュニケーションの楽しさです。例えば、ドイツ語コースを一緒に受けている友達と、授業後にメンザでご飯を食べながら他愛もない話をしたり、授業について話し合ったり、互いの文化について聞きあったり、将来について話してみたり、話の内容はそんなに難しいものではないですが、それでも自分が学習している言語で相手と意思疎通ができている時間はとても楽しく、充実して感じます。タンデムをしている時も同様です。ドイツ語で自分の好きな音楽について話して相手が共感してくれたり、旅行中に自分がしてしまった失敗談について笑いあったり、相手がドイツ語で言った冗談が理解できたりすることは、自分の語学力の向上を実感することができてとても楽しいです。最近ではドイツの政治についてドイツ語で会話したりすることも増えました。まだまだ知らない単語も多く、電子辞書を片手に会話をすることも多いですが、少しずつでもドイツ語で話せることが増えていることを嬉しく思いながら過ごしています。
私は英語もそこまで流暢に話せるわけではなかったので、留学生同士で英語で会話をしている時も同じような楽しさを感じます。幸いドイツ語よりは話すことができるので、電子辞書を片手にということはないですが、それこそ友達と、それぞれの文化、政治について話が盛り上がっている時、女子トークをしている時は、自分がその輪に入れていることがとても嬉しいです。英語が母語ではない留学生がほとんどなので、みんなが母語以外の言語を話してそれぞれの考えや感情を共有できているという状況は素晴らしいことだと日々思います。
言語の壁というのは、誰しもが感じるものなのではないかと思います。もちろんその壁の高さは人によって異なると思いますが、ドイツ語や英語が母語ではない人にとって、それらの言語でコミュニケーションをとるのは、日本語でのコミュニケーションほど簡単にはいかないことが多いです。私はその難しさゆえに友達との交流を減らしてしまったことがありますし、今でも難しい話題に触れるのを躊躇ってしまうことがあります。しかし、実際に話してみると、少しぐらい文法が間違っていても相手は理解してくれます。英語で話している時は特に、みんな英語が母語ではないので、ネイティブのように完璧に話せるわけがないと、文法を気にせずに話していることが多いです。そのため、たとえ自分がハチャメチャな文法で話してもそれに不満を持つようなことはもちろんなく、理解できなければ相手は何度でも聞き返してくれます。ドイツ語を話すときもそれは変わりません。相手も私がドイツ語学習者であるということは分かったうえで話しているので、私に完璧は求めていないと思います。もちろん完璧に話すことができれば、それ以上のことはないですが、大切なのは、「自分の意思が最終的に相手に伝わるかどうかである」ということを、ドイツでの日々を通じて知ることができました。そして、自分の意思や考えを相手と共有し、会話が進んでいく時の喜びは本当に大きいです。ドイツでの留学で得たこの気づきと、それに気づかせてくれた友達は一生大切なものですし、日本に帰ってからも忘れることはない思い出になりました。
長くなってしまいましたが、私が約9ヵ月間の留学を経て感じたことを書いてみました。この記事を読んでくださった皆さんが、少しでも留学に対して前向きな気持ちを持っていただければ幸いです。ここまで読んでいただきありがとうございました!