2つの都市(国)での留学を振り返って

山本美帆

こんにちは、現在ベルリン自由大学に在学しているドイツ語学科3年の山本美帆です!私は在外履修をオーストリアのグラーツで行いました。現在、ドイツのベルリンで交換留学を行っています。今回は、同じドイツ語圏とはいえ、国も規模も異なる二つの都市での生活を振り返ってみたいと思います。

オーストリア・グラーツでの生活

まず、グラーツと聞いて、その名前にピンとくるでしょうか。私は大学に入学するまで、名前を知りませんでした。実際、グラーツの旧市街は世界遺産に登録されており、歴史ある街並みがとても美しい都市です。こぢんまりとした、穏やかなこの街の空気感がとても気に入っています。

そんなグラーツでの私の初日は留学中最大のトラブルにあった日でもありました。学生寮に入る前の数日間は、あるアパートの一室に泊まることになっていたのですが、当日大家さんと連絡が取れず、さらには自分の持っていたスマホの充電も切れてしまうという、最悪の事態に陥りました。アパートの場所には辿り着いていたので、そこを出入りする住人の方のスマホを借りて電話を掛けさせてもらったり、携帯の充電ができる飲食店の場所を教えてもらったりしましたが、最終的には近くの広場にいた交通整理を行っていた方々に、当日泊まれる手頃なホステルがないか聞くことにしました。最寄りの停留所から出ているトラムに乗って〇〇駅で降りて左を見ればあると教えてもらい、重い荷物を抱えながらも、何とかホステルに辿り着くことができました。夜8時頃で辺りはすでに暗く、スマホも地図も使えないまま、知らない土地で路頭に迷いそうになるという怖い思いもしましたが、それでも何とかなると、在外履修の初日から実感させられた出来事でした。

グラーツはオーストリア第二の大都市とはいえ、中心部は小さいため、東京と比べて美術館などの娯楽施設やイベントが充実しているとはいえませんでした。そのため、休日は友達と過ごすことが多く、大抵おしゃべりやゲーム、料理をしていました。同じ寮の日本人の友達とは、お互いモヤモヤしていることや気づいたことを話せる関係になり、心の支えの一つになりました。個人的に、気軽に足を運べる場所に美術館や面白いお店などが少なかったのは少し苦痛でしたが、好きな人たちと時間を過ごしたり、一人で本を読んで考え事をしたりと、徐々に空き時間を上手く充実させることができるようになったと思います。

時計塔のあるグラーツの丘からの景色

ドイツ・ベルリンでの生活

ベルリンは二つ目の留学先ということもあり、比較的、肩の力を抜いてスタートを切ることができました。正直、ベルリンに来る前はグラーツでの穏やかな生活とのギャップに自分がショックを受けないか心配していました。ですが、もちろんグラーツとベルリンには違いが多いものの、今ではベルリンでの生活を楽しめていると感じています。

ベルリンには様々な人種や色々な格好をしている人がいて、日々ドイツ語以外の言語も飛び交っているため、多種多様な人がこの街にいることを常に実感させられています。また、ここに来て感じるのは、同じ大都市でも、休日でさえ街が忙しい東京とは違い、公園や湖、カフェでゆっくりと時間を過ごす人を多く見かけることです。普段は授業の予習などで忙しいのですが、休日はゆっくりと過ごす時間を作れています。

ベルリンに来て一番嬉しかったのは、グラーツと比べてタンデムパートナーを見つけやすかったことです。ベルリン自由大学には日本学科があるため、そこに所属するドイツ人と日本人の交流が盛んに行われています。私の場合、2週間に一回ほど開催されるStammtisch(定期的な交流会)で出会ったドイツ人とタンデムパートナーになりました。毎週、決まった曜日に料理をしながらお互いの言語で質問し合ったり、対話を楽しみながら言語を学び合うことができています。お互いの趣味が合うので、他にも本屋や展示会に行ったり、一緒に外出することも多いです。また、タンデムパートナーを介して、他のドイツ人とも知り合えたため、とてもありがたかったです。友達が友達を紹介してくれる機会も多く、交友の輪が広がっていくという感覚がありました。

タンデムパートナーと手巻き寿司を作った時

タンデムパートナーとその友人とChristopher Street Day(CSD、クリストファー・ストリート・デイ)に参加した時

留学生活全体を振り返って

先ほどもお伝えしたグラーツ初日の事件後は何とか今まで大事も無く生活できています(笑)。まだまだ油断はできませんがが、初日のおかげでトラブルを防ぐための準備をしようと心がけることができるようになり、また同時に、トラブルは起きるものだ、もし何か起きてもどうにかなる、と思えるようになりました。

多くの人と関わったことで学んだことは、笑顔の大切さです。身構えるのではなく、笑顔でいれば自然と向こうも大抵同じように関わってくれます。また、異なる文化を知ることで、他人にできる気遣いも増えるということを友達の行動を通して気付かされ、自分ももっと言語と文化を学び続けていこうと思いました。

一年の留学生活の中で感じたことや学びはあまりにも多く、ここには書ききれませんでした。日本の学生生活とは異なった環境に身を置いたからこそ、気づけたことがたくさんあると感じています。また、数えきれないほどの新しい人との出会いや大勢の人の優しさに触れたことで、自分の心の器も一回り大きくなったのではないかなと思います。

グラーツの友達とHallstadt(ハルシュタット)を訪れた時

Mitbewohnerin(学生寮の同居人)との旅行