ein heißes Eisen

萩原義久

Servus! ドイツ語学科3年の萩原義久です。この言葉はドイツの南部でGuten Tagとして使われる言葉です。
といっても僕は今、東ドイツに含まれるハレという場所に滞在しているので、まあ、なんというか、使ってみたかっただけです。

ハレはザクセン=アンハルト州に属している都市であり、18世紀の作曲家ヘンデルの出生地であり、塩で有名です。また、列車で30分でライプツィヒ、さらにそこから1時間ほどでドレスデンと、どちらも中欧諸国との関係が深い地域へのアクセスが非常にしやすいところです。僕が留学先としてハレを選んだのは、主にこの理由なんですね。

さて、タイトルのドイツ語は直訳すると「熱い鉄」ですが、ドイツ語では「厄介な問題」という意味で使われる慣用句です。熱い鉄は触ったりしたら危険なので、冷めるまでそっとしておこう、ということですね。しかし、僕たちが「熱い鉄」と聴いたら「打つ」ものと連想しないでしょうか。留学はまさにその「熱い」期間であり、自分の糧になるような何かが得られると良いですね。

そんな貴重な留学生活をより良いものとする為に、皆さんに一つ提案をしたいと思います。それは、「留学中に別の外国語を学ぶ」です。…ドイツ語学科生としてのドイツ留学を真っ向から否定するような提案に感じるかもしれませんが、ちゃんといくつか根拠はあり、大きく二つ挙げられます。

①語学学習という経験自体が活かせる
皆さんは今、必死にドイツ語を勉強していると思います。しかし、ドイツの大学で学ぼうとする以上ドイツ語ができてやっとスタート地点に立てるわけで、講義やゼミに参加しても最初の頃は予習しても殆ど理解できない状況が続くことでしょう。僕も当分はそんな辛い状態を耐えなくてはいけないわけですが、しかし語学学習、僕たちが既に勉強したものとなると、ある程度推測することができます。特に、0からの語学学習となると、学習の手順は最初に発音から始まり、簡単な自己紹介(身分、年齢、趣味etc)初歩的な格変化(1格4格)、日常(朝起きて歯磨いて…)と、非常にデジャヴな内容です。さらに、ドイツ人と一緒に学習することになっても「Ich glaubeってこの言語だとなんて言うんですか」など、授業中に使われるドイツ語の単語も相対的に易しいものになるのです。ドイツ語を使用した0からの他言語学習は、ドイツ語の学習、あるいは復習にも効果的だと思います。

②語学そのものに興味のある人達が集まりやすい
ヨーロッパの人というのは、当たり前のように複数の言語を勉強しています。例えば「何言語話せるの?」と尋ねると、「えっと母国語と英語でしょ、ドイツ語でしょ、それからフランス語と少しスペイン語と…」というような答えが頻繁に返ってきて、本当に驚かされます。当然その中に日本語が含まれることは滅多にありませんが、それでも日本語、もしくはアジアの言語に興味があるという人も少なくありません。一度、日本語で早口言葉を言ってみてといわれ「生麦生米生卵」といったら大喜びされたことがありました。その時、僕はその反応に対して色々な感情がこみ上げてきて、僕の表情はとても複雑なものだったと思います。他にも「日本語って沢山の文字を使うんでしょ」など、書き言葉としての日本語の複雑さは中々有名であるように感じます。語学の授業には、えてしてこういう人々が集まりやすいのです。向こうがこちらに関心があるとわかれば、こちらとしても接しやすいですよね。

「そんなこと言ってもドイツ語の勉強で精一杯だよ!」って思う人もいるかもしれませんが、ヨーロッパで生活する以上、必ず他言語の誘惑に出くわすはずです。仲のいい友達の話す言葉だとか、多言語が日常的に聴こえる環境自体に触発されることもあるでしょう。少なくとも僕は新しく興味を持った言語があり、今は「ドイツ語なんかに手間取ってられない」という気持ちです。

そんな僕ですが、今こちらではポーランド語を勉強しています。また夏休みにはスロヴァキア語を学びに3週間ほどスロヴァキアで開講される語学講座に参加するつもりでいます。どちらも日本ではしっかりと勉強できる環境は限られていて、これも留学中にしかできないことの一つだと思います。

皆さんも留学の際には、機会があれば別の言語に挑戦してみてください。もちろん、ドイツ語の勉強も忘れずに!

y-hagiwara