コロナ渦のパリ留学

山隅亜依

私は2021年の9月からInstitut Catholique de Paris(パリ・カトリック学院)に交換留学をしています。

特別措置でのコロナ渦留学

留学で何が1番大変だった?と聞かれたら、「パリに到着するまでの留学手続き期間」と答えると思います。2020年の冬に出願・面接を終え、幸いにも希望していたInstitut Catholique de Paris(パリ・カトリック学院)への交換留学が決まり喜んだのもつかの間、外務省の感染症危険レベルが2以上の国には留学の許可が下りないとの知らせを受けました。当時外務省のHPで世界地図を開くと、ごく一部の国を除き世界中が真っ赤(危険レベル3)に塗られており、フランス留学は上智大学が留学を許可する条件を満たすには程遠い状況でした。

もちろん大学側は学生の安全を守るために渡航を禁止していると頭では理解していたものの、せっかくの留学の機会がなくなるかもしれないことにひどく動揺していたのもしょうがない事かと思います。状況が変わったのは出国予定1ヶ月前。大学が提示する複数の条件を満たす場合のみ「特例措置」によって留学が許可されることとなり、無事に申請が通り留学に行けることとなりました。それから出国日までの間は、ビザの申請や住宅契約、保険の加入等、必要な手続きをこなす怒涛の1ヶ月でした。

今振り返っても2021年の春夏には戻りたくないと思うような日々でしたが、当時の自分が友人とともに励まし合いながら留学を諦めずに行動していたこと、その結果として大学時代の一つの目標だった留学のチャンスをつかんだことを嬉しく思います。

Institut Catholique de Paris(パリ・カトリック学院)での交換留学

私が留学先にパリを選んだ理由は、学業として美術、趣味としてファッションに触れられる環境に居たかったからです。パリ留学に対するマイナスな意見(物価が高い、人が冷たい、旅行でいつでも行けるetc…)を耳にすることが多く不安もありましたが、実際にパリに留学されていた先輩方にお話を伺い、背中を押していただいた事で、パリ留学を決意しました。学校の帰り道にルーブル美術館に寄ったり、パリのモード業界で働いてらっしゃる方にお話を伺ったり、留学先をパリにしてやはり良かったと思っています。

ルーブル美術館のモナリザの前にはいつも行列ができています。

Institut Catholique de Paris(パリ・カトリック学院)はパリの6区に位置する私立大学で、私は文学部美術史学科で学んでいます。秋学期が始まったばかりの頃はなかなか授業についていけず、ほとんど理解ができないまま席に着いているだけの日々でした。当時のノートを見返すと空白ばかりで、とにかく聞こえた単語をメモするのに必死だったのがわかります。それでも春学期になると段々と教授の言っていることが理解できるようになり、その場で学んでいることを実感し、授業を受けるのがより楽しくなりました。

印象に残っているのは日韓美術比較の授業です。秋と春の2学期で、紀元前から現代に至る日本美術を学びました。もともとアジア美術には興味がなかったのですが、これまで知らなかった日本美術の歴史や美しさに触れ、この授業をきっかけに今後も日本美術について教養を深めたいと思うようになりました。

春学期からはICP付属の語学学校でフランス語の授業も受けています。アメリカや韓国、イスラエル、オーストリアなど多様な国籍のクラスメイトに囲まれて多文化に触れることで、より自分の視野が広がったと感じます。

 

11月のリュクサンブール公園。菊が見頃を迎えていました。

 

フランスで学ぶ異文化交流

留学の出願や面接において何気なく使っていた「異文化交流」という言葉。当時の私は真剣に、フランス人と話しフランスの文化に触れることが異文化交流だと思っていました。異文化交流の本質に気付かされたのは、あるフランス人の女子大生との出会いでした。その子はムスリムで、生まれも育ちもフランスですがモロッコにルーツを持っています。彼女と話している中で考えさせられたのが、日本における外国人差別とフランスにおける宗教差別の問題です。

日本での留学経験がある彼女の「日本での留学中に受けた外国人差別は、フランスでムスリムという自分のアイデンティティを否定されることに比べれば大したことではなかった」という言葉を聞いた時に、日本人としてとても恥ずかしく悔しく思うと同時に、フランスに住んでいるムスリムやその他のマイノリティ、移民等は日常的に差別や偏見の目で見られているのかとハッとしました。日本では「日本人」というマジョリティの立場にいる私は、果たしてマイノリティの声に耳を傾けたことがあっただろうかと自問し、問題意識を持つきっかけとなりました。

また当時の私はムスリムの食生活について、豚肉を食べないということしか知りませんでした。彼女から同じムスリムでも豚肉以外であればどんなお肉も食べる人とハラール肉以外は口にしない人がいることを教えてもらい、自分の宗教に関する知識の浅さに気づきました。人と関わる上で相手を尊重するためにも、アイデンティティに関わる大切な問題についてもっと教養を深めなければならないと実感しました。ただ異文化に触れて親しむだけでなく、人々が直面するリアルな問題や宗教の複雑さに気づき、知り、自分なりの考えを持つ。そのことこそが異文化交流の本質の一つなのだなと思います。

 

授業後に友人とランチ。

終わりに

留学に来てから精神的に成長したと実感することが多いです。沢山の人と出会い、学び、自分と向き合い、責任を持って行動する。そうした一つ一つの積み重ねが自分の成長に繋がっていると思います。帰国を目前に控えたいま、留学をしてよかったと胸を張って言えることがとても嬉しいです。残り少ない留学生活も満喫しようと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

シテ島の先端。柳の木の下でのんびりとした時間が流れていました。