リヨン第3大学での学びとイスラエル・ガザ情勢

原口 佳子

私は上智大学の交換留学制度を利用し、フランス、リヨンのリヨン第3大学に2023年9月から留学しています。リヨンでの留学生活もあっという間に折り返し地点に来ました。
リヨンはフランス第2の都市と言われています。大きなショッピングモールがあり必要なものは何でも揃います。と同時に、広い公園もあり自然がたくさんありますので、暮らすのにとても快適な街です。また、リヨンにはローマ時代の遺跡が残っており、長い歴史を感じることもできます。イベントもとても多いので、自分から行動すれば本当にたくさんの経験をすることができる町です。

ローマ時代の歴史を祝うイベント時の写真。
ローマ劇場にリヨン市民が集まる様子は忘れることができません。

リヨン第3大学での学習
リヨン第3大学は多くの留学生を受け入れています。そのため、留学生への対応に慣れており、スムーズに留学生活に入ることができました。
留学生用の必修の授業には、「外国語としてのフランス語」(Français Langue Étrangère)、「フランス文化」(La culture française)があります。
「外国語としてのフランス語」は15人ほどの少人数での授業です。各授業のはじめに新聞記事の比較と考察のグループ発表をし、そのテーマについてディスカッションをします。この時間は様々な国での立場や状況を知ることができる上、すらすらとフランス語で自分の意見を言うことのできる他の留学生に圧倒されならも自分の言葉で自分の意見を話す、私にとって刺激的な時間です。また、フランスの高校生がバカロレアのために読む文章を扱ったりフランス語独特の表現を扱ったりと、ハードではありますが、自分のフランス語レベルをさらに高める時間になっています。
フランス文化の授業では、リヨンの歴史、フランスのメディアと政治、移民の状況、環境問題など様々なテーマを扱います。この授業で学ぶことは日常の小さな気づきと結びついていることが多いです。例えば、Francophoneというテーマで授業が行われた際、フランスとフランス語圏の関係の複雑さについて説明を聞きました。そうした授業と同じ時期に、フランスがニジェールの繰り返されるクーデターをきっかけに駐留軍を撤収することをニュースで見て、授業で扱われた内容を本当の意味で理解できたような気がしました。
その他には「ヨーロッパの機構」「新興国・途上国」、「ヨーロッパ中世の歴史」、「日本の漫画の歴史」、「翻訳」の授業をフランス人学生と一緒に受けています。授業を理解することはとても大変ですが、分からないことは先生や友達に気軽に質問することができます。リヨン第3大学では学部を問わず、授業を履修することができる点も魅力的です。日本語クラスにアシスタントとして参加したり、スポーツの授業も履修しています。日本に興味を持つ学生が多いため、友達はつくりやすいです。

大学の図書館の様子。夜遅くまで多くの学生が勉強をしています。

フランス社会とイスラエル・ガザ情勢
 私がフランスに来てから最も関心を寄せている問題は、イスラエル・ガザ情勢とフランス社会の関連性です。2023年10月にハマスとイスラエルの衝突が始まり、リヨンでもパレスチナ支持のデモ、また反ユダヤ主義に対するデモが行われていました。これまで上智大学でムスリムに関わる問題について学んできましたし、実際にフランスに来て周りにムスリムの友人がいます。ユダヤ人の存在も身近です。
そして元々、フランスにおける移民問題に関心があった私にとっては、フランスに住むムスリムのイスラエル・ガザ情勢に対する反応が特に印象的でした。ガザ地区の様子が取り上げられた投稿をSNSで毎日シェアする学生がいます。また、マクロン大統領のイスラエル支持を表す投稿とともに強くマクロン大統領を批判する投稿をしていた学生もいました。パレスチナ危機の中で、フランス社会の多様性がまた目に見える形で現れています。こうした出来事を通してフランス社会を考えるときに中東との関わりは決して切り離すことができないこと、そしてフランス社会の問題が他の多くの国際関係と関わりがあるからこそ奥深くて興味深いことを改めて感じました。

大学の壁。壁に書かれた学生の主張を読むことが1つの楽しみです。

最後に
 留学は自分を知る機会だと感じています。様々な意見、立場にある人との関わりを通じて、様々な世界の問題と向き合う中で、自分の考えや自分の関心の寄せる問題が何であるのか気づきます。そして、そうした気づきが自分の将来像を描く一要素になっていきます。残りの留学生活も自分の気づきを大切にしながら過ごします。