Michael LEEZENBERG先生の講演会"Naqshbandi-Wahhabi Rivalry and Islamic Reform: The Kurdish Connection"の実施報告(2024年2月12日(月)対面開催)
上智大学イスラーム地域研究所は、クルド研究における言語、文学、思想、宗教、政治等の分野で多岐にわたる業績があるアムステルダム大学哲学科のMichael Leezenberg教授を招聘し、京都大学人文科学研究所およびケナン・リファーイー・スーフィズム研究センターとの共催で講演会を開催しました。以下は当日のプログラムとその報告です。
15:00~15:05 趣旨説明 山口昭彦(上智大学)
15:05~16:05 Michael LEEZENBERG (University of Amsterdam)
16:05~17:00 質疑応答・ディスカッション
本講演会では、ナクシュバンディー・ハーリディー教団(Khalidiyya)の祖であるクルド人シャイフ、マウラーナー・ハーリド・シャフラズーリー(1827年没)と、ワッハーブ派との対立や論争に焦点があてられた。まずLeezenberg教授は、サラフィー主義、ワッハーブ主義、ネオ・スーフィズム論などの近代イスラームの言説とそれに対する批判に触れたうえで、これまで近代イスラーム運動としてはあまり論じられてこなかったマウラーナー・ハーリドに注目した。マウラーナー・ハーリドのスーフィーとしての人生、マウラーナー・ハーリドがクルド語のソーラーニー方言で書いた著作であるAqîdatnâma、ハーリディー教団のタンズィマート改革への積極的関与などを取り上げ、マウラーナー・ハーリドの宗教的な思想と実践がワッハーブ派との敵対心から形成されたのではないかという点と、またそれを踏まえて、我々がナクシュバンディー・ハーリディー教団を単なる近代の宗教保守派として見なすことは困難である点を指摘した。質疑応答とディスカッションでは、イラク・クルディスタンにおけるナクシュバンディー教団とムスリム同胞団の関係性、クルド語のヴァナキュラー化、クルド語のクルマンジー方言とソーラーニー方言のヴァナキュラー化プロセスの差異、マウラーナー・ハーリドのクルド人性など、様々な地域と分野を専門とする約20名の参加者の中から多数の質問が寄せられた。
文責:阿部達也