講演
上智大学イスラーム地域研究所・京都大学イスラーム地域研究センター主催連続講演会
今日のスーフィズム:神秘主義の諸相を知る
(Sophia Open Research Weeks 2021企画)
第4回 12月10日(金)~12月20日(月) 二宮文子(青山学院大学文学部教授)「インド共和国における共生とスーフィズムのイメージ」 質問と回答
Q01: 興味深く拝聴しました。単純な質問で恐縮ですが、そもそもインドあるいは南アジアで、イスラーム教徒のうちどれくらいの人たちがスーフィーなのでしょうか。それなりにスーフィーではないインドのイスラーム教徒がいるのだとしたら、彼らは後半のようなお話しをどのように受けとめるのでしょうか。
A: 統計があるわけではないので、南アジアやインド共和国のスーフィーの人数について何か申し上げることは難しいです。ただ、私の知人(大学以上の高等教育を受けたムスリム)の範囲では、スーフィズムを知っている人は多いが、実践している人はかなり少ないという印象です。一方で、知り合いを辿ればスーフィー導師一族の出身者がいるということはしばしばです。私の知人にも実家が聖者廟という人が数人います。なお、AIUMBのHPには、20の州や地域にある574点の聖者廟のリストがありますが、このリストがどういう基準で作られているのかは不明です。
スーフィーではない一般のムスリムは、スーフィズムの思想や伝統文化としてのスーフィズムにはそれなりに好意的な場合が多いです。ただし、現実のスーフィーや聖者廟運営者への評価は様々です。AIUMBやモーディーが提示するスーフィズムのイメージは共有していても、彼らがそのようなイメージを利用することに関しては批判的な人も多いでしょう。個人的な見解ですが、ご質問のような南アジアにおけるスーフィズムに関する認識には、日本における仏教や神道文化に対する評価と似通った部分があると感じます。
[回答者:講演担当者、二宮文子]
Q02: スーフィズムについての直接の質問ではなくて申し訳ありません。今のインドの首相はヒンドウー・ナショナリストだと聞いていたのに、スーフィズムとの間で申し合わせたような共生のメッセージに驚きました。スーフィズム以外のイスラーム、あるいは仏教やジャイナ教などの諸宗教との間でもそうした歩み寄りは普通にみられるのでしょうか。
A: 申し訳ないのですが、モーディー政権とムスリム一般の関係については、はっきりお答えすることはできません。報道によると、近年、BJPはムスリムの候補者も少数ながら擁立するようになっているということですが、これを歩み寄りと見ることができるのかについてはきちんとした分析が必要でしょう。また、ヒンドゥー・ナショナリズムの見方では、仏教やジャイナ教は「インドの宗教」に含まれますので、歩み寄る対象(異なる勢力)というより自勢力の一部という位置付けになります。もちろん、仏教徒やジャイナ教徒がそれを受け入れるかはまた別の話です。 [回答者:講演担当者、二宮文子]