こんにちは!ロシア語学科3年の塗谷です。私は今年の3月から日本海を挟んで日本のすぐお隣、ロシアのウラジオストクに留学しています。
以前市内の中心部にあった留学先の極東連邦大学(ДВФУ)のキャンパスは、2012年に開催されたAPEC首脳会議の会場となった施設に移転し、現在は市内から離れた自然豊かなルースキー島に新キャンパスを構えています。そこで今回は、新しくなったキャンパスでの生活を中心に島ならではの暮らし方や、ロシアの東端で栄えるこの地域の魅力について少しご紹介したいと思います。
まずはキャンパスについて。キャンパス全体は海を囲うように三日月の形をしており、メインの棟を中心とした8つの棟が大学、その周りに学生寮がずっと先まで連なっています。
ウラジオストクの地形の特徴の一つに坂や丘が多いという点がありますが、このルースキー島のキャンパスも坂の上にそびえ立っています。その影響から建物の構造もおのずと複雑になっており、実際に私も到着してしばらくは建物の構造がなかなか把握できず、かなり苦労しました。しかし道に迷った時に交わしたロシア人との小さなコミュニケーションの繰り返しは、今思えばロシア語が自分の中で学習の対象から生活するための手段へと切り替わったきっかけであり、ロシアでの挑戦の始まりだったと思います。今は随分慣れましたが、それでもなお「留学する=この土地で生活する」と感じる瞬間は新しい発見を通して、絶えず毎日のようにあります。
次に寮生活について。基本的には二人部屋で、各寮に警備員数名とスタッフが常駐しているため安心して生活しています。作られたばかりのキャンパスなので中も清潔で、不備があれば寮のスタッフが対応してくれます(唯一マイナス点を言うとすれば、火災報知器が昼夜関係なく頻繁に鳴ることでしょうか)。寮費も部屋に拠りますが、基本的には月3000ルーブル前後(約5,000円、2016年6月現在)とかなり安いです。また、夜中まで営業している食堂やコンビニ、薬局に郵便局に美容室まで、生活に必要な設備が整っています。わざわざ島から出て町に出る必要もなく、キャンパス内で一通り用事が済んでしまうほどです。Wi-Fiも全域飛んでいるので生活に関して不便に感じたことはありませんし、多少お金がかかりますがジムやプールもあるので体を動かせる環境も揃っています。
次に授業について。平日に3時間ある授業は完全に語学に特化されており、グループ授業で1コマ1時間半、それぞれ文法、会話、聴解、講読で構成されています。一押しなのは、授業の題材にウラジオストクを含む沿海地方の文化や生活が組み込まれているため、現地ならではの最新の情報や知識を得ることもできる点です(沿海地方でしか使われない言葉や習慣を学べることも)。こういった意味でも毎日の授業はこちらでの日常生活を送るためには欠かせない(人とコミュニケーションするためのロシア語を学べるという意味でも町や地域のことを知ることができるという意味でも)大切な情報源となっています。通常授業外にも目的に応じた個別授業(別途料金がかかります)や著名人を招いての特別授業を受けることもできるため、好きなだけ勉強できて好きなだけ興味の幅を広げられる充実した学習環境と言えます。
次にルースキー島での生活についてお話したいと思います。島での生活で重要な足となっているのが、ずばり路線バスです。中心街に行くのに1時間かかりますが、タクシー等で直接行けば30分程で着きます。映画館や本屋さんに行きたい時や服や靴などの生活雑貨が必要な時、ちょっと贅沢して美味しい物を食べたい時は、授業終わりに校門付近のバス停まで歩き、そのまま学生は市内に遊びに行きます。食料品等は市内まで足を伸ばさなくても島を繋ぐルースキー橋を渡ってすぐの大型スーパーで安く買うことができますが、やはりどこへ行くにも路線バスは欠かせません。
ちなみに私は週に一回島から離れた中心街で開かれる、ロシア人と日本人の交流を目的としたコミュニティに参加しています。地理的に近いという点でも関心度が高いという点でも、大学で日本語を勉強している学生や関心の強い学生が多いため、勉強熱心な社会人も含め毎回たくさんのロシア人が集まります。知り合いの輪を広げることができるのはもちろん、ここでの出会いをきっかけにみんなでピクニックやバーベキューを企画したりするなど、コミュニティの外でも交流を深めています。
ここまでウラジオストクでの留学生活のほんの一部をご紹介しましたが、最後に他の留学先にはないこの土地の魅力についてお話したいと思います。
ここウラジオストクは首都であるモスクワから見ると東側の玄関口となっているのに加え、日本との関わりが深い地域として今特に注目されている町の一つでもあり、日本企業も首都に次いで多数進出しています。また個人的には、ロシアの「寒い・暗い・怖い」というイメージとは真逆の、「海に囲まれた明るく治安の良い町」という印象を持っています。
また近隣のヨーロッパの文化が入り乱れる西側とは異なり、ここウラジオストクは中国やモンゴルなどのアジア文化や豊かな自然と共存しているシベリア・極東地域に属し、いわゆる中心都市です。ちなみにこの地域には世界一水深の深いバイカル湖やその周辺に位置する自然豊かなブリヤート共和国や、世界一寒いといわれるオイミャコンで有名なサハ共和国も含まれています。ここ極東連邦大学にはこのようなシベリア出身の学生がとても目立ち、私のルームメイトもモンゴルの国境付近にあるトゥバ共和国出身です。極東最大の大学であるだけあって、たくさんのアジア系ロシア人が勉強をしにここウラジオストクに集まってくるのだそうです。見かけが私たち日本人そっくりであるが故、会うといつも親近感を覚えます。
留学生活から極東地域の話まで、かなり幅広くなってしまいましたが、主要な西側の都市とは違った魅力を持ち、ヨーロッパへの玄関口として近年注目されているこの極東ウラジオストクに、少しでも興味を持っていただけたら幸いです。