VOL.19
2010年卒
国連平和維持活動局 地雷対策部 スーダン事務所
高橋 尚子さん

高橋尚子 国連平和維持活動局 地雷対策部 スーダン事務所勤務

Q:現在はどこで、どのようなお仕事をなさっていますか。

  国連平和維持活動局(DPKO)地雷対策部のスーダン事務所に勤めています。私の仕事はスーダンにおける地雷対策プロジェクトの管理と、ニューヨークの国連本部への報告業務です。
 アフリカ北部に位置するスーダンは1956年の独立以降長期にわたる内戦のため国土の多くに地雷・不発弾が残っています。加えて、現在も国内及び隣国南スーダンの情勢不安のため、国内には320万人以上の難民・避難民が生活しています。単純計算で国内の12人に1人が定住する場所を失って、地雷があるかもわからない土地をさまよっている状態です。地雷を除去することによって、彼らが安全に新たな家を見つけたり、学校、病院や仕事場に通ったりすることができる環境を作り出します。

Mine action is humanitarian action (地雷対策は人道支援)

Mine action is humanitarian action (地雷対策は人道支援)

Q:なぜ、現在の職場を選んだのですか?

 「資源戦争」をなくしたい、という思いがあったからです。
 2003年に始まったイラク戦争は、原油高と相まって、当時、「資源戦争」とも呼ばれていました。その頃、高校生だった私は、資源をうまく管理すれば戦争を防げるのでは?という疑問を持ち、天然資源が豊富な国の言語と政治を学ぶべくロシア語学科に入りました。卒業後は、総合商社でロシアの天然資源ビジネスを4年間担当し、ロシア語での契約交渉なども経験しました。その後、米国の大学院で安全保障の修士号を取得、米国の研究所での勤務を経て現在に至ります。 

 スーダン及び南スーダンは天然資源が豊富ですが、異なる民族間での資源管理を巡って内戦が起き国家が分裂した歴史を持っています。戦争と天然資源の関係を考えるにあたって、スーダンとロシアは言語も地域も異なりますが、互いを比較することで世界各地の「資源戦争」の共通の原因や解決策により近づけるように思います。

スーダンの首都ハルツームでは毎年「国連デー」のイベントを開催し、多くの地元の方に国連の活動ついて知って頂く機会となっています。

スーダンの首都ハルツームでは毎年「国連デー」のイベントを開催し、多くの地元の方に国連の活動ついて知って頂く機会となっています。

Q:国際社会でロシア語の能力は役に立ちますか?

 ロシア語圏では感動されますし、それ以外の国でも高く評価されます。第一に、珍しい能力なので「ロシア語を話す日本人がいる」と話題になります。第二に、欧米に偏らない多角的な視点を持っていることの証明になります。第三に、世界で最も難しいと思われている(思われているだけです)ロシア語を習得したことが努力家であることの証明にもなります。

アフリカの各地域で勤務する同僚たちと、ウガンダで撮影。

アフリカの各地域で勤務する同僚たちと、ウガンダで撮影。

Q:ロシア語学科で学んでよかったと思うことは何ですか。

 第一に、若いうちから多様な経験を得られたことです。大学に入った瞬間から、ロシア人との学生会議の運営、ロシア情報ブログの開設、モスクワ留学、通訳アルバイト、ロシア議会選挙監視団への参加、ロシア人モデルのマネージャー業、アルメニアでのヒッチハイク、大学に通いながらの経済研究所でのインターン、卒業論文の執筆など、普通の高校生だった私には考えられないような多くの経験を得ることができました。これらの経験を通じ多様な職業やライフスタイルに触れたことで、より自分らしい職業を選択することができたと思います。
 第二に、ビジネス、行政、マスコミ、学術界など各分野で活躍する友人、先生方と出会えたことです。卒業後も連絡をとりあい、ロシア・旧ソ連情勢について意見交換を続けています。バーチャルな社会にざっくりとした情報が溢れる時代だからこそ、リアルな社会で正確な情報を交換できる仲間を得られたことは貴重な財産です。