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西アフリカ短信(1)

矢澤 達宏

ポルトガル語学科教員の矢澤です。
今年度は研究休暇をいただいています。
学科生の皆さんはお元気でしょうか?
そして、それ以外の皆さん、こんにちは。
私はポルトガル語圏の国を中心としたアフリカ地域研究とブラジルの黒人研究を専門にしています。

ということで現在、西アフリカを訪問中です。
いまはギニア・ビサウという国の首都ビサウという町にいます。

かつてポルトガルの植民地であったポルトガル語圏のアフリカ諸国は5カ国あります。
私はなかでも南部アフリカのモザンビークを中心に研究を進めてきました。
なので、モザンビークは数回訪れていますが、それ以外の4カ国はこれまでなかなか訪れる機会がありませんでした。
今回、せっかくの研究休暇なので、自分の視野を広げるべく、西アフリカのカボベルデとギニア・ビサウという2つのポルトガル語圏の国とともに、近隣のセネガル、ガンビアといった国々にもついでに足を伸ばしてきました。
日程も終盤にきていますが、せっかくの機会なので、普段は触れることも少ないであろの国々の様子を、少しだけですが皆さんにもご紹介したいと思います。

リスボンを拠点に、まずはカボベルデに入りました。
カボベルデは島嶼国家で、主要なものだけで9つの島、そのほか周囲の小さな島々からなります。
まずは首都プライア市のあるサンティアゴ島からです。

植民地下のカボベルデとギニア・ビサウの独立・解放運動をリードしたのが、著名なアミルカル・カブラルという人です。
彼はギニア・ビサウで生まれましたが、しばらくして一家でカボベルデに移り、幼少期をカボベルデで過ごしました。
プライア市のダウンタウンにある彼の博物館を訪れ、スタッフの方にいろいろなお話をうかがいました。

Museu Amilcar Cabral-Praia

 

プライア市のダウンタウンの一角です。最初はそう思わなかったのですが、この後、近隣諸国を訪れ、カボベルデのクルマは、あくまでも相対的にはではありますが、割にきれい(イタみが少ない)だと思いました。
なぜでしょうか。

Plateau-Praia

 

昼食にカボベルデを代表する郷土料理、Cachupa(ポルトガル語の発音だとカシューパとなるはずですが、カチューパと呼んでいた気がします)を食べました。
Cachupaにもいくつか種類があるようですが、Cachupa rica(豪華なカチューパ)と食堂の黒板には書いてありました。
豆、野菜、肉をトマト味でスープ状に煮込んだものをご飯にかけていただきます。
素朴な味ですが、とても美味しいです。

Cachupa-Praia

 

海岸沿いでは、中国のゼネコンがカジノを建設中だそうです。
アフリカにおける中国のプレゼンス増大を実感します。

Construcoes pela China-Praia

 

つづいて、サンティアゴ島についで有名なサンビセンテ島です。
カボベルデは、島によってかなり表情が変わるのだということを身をもって知りました。
この島は、かつてポルトガル領でありながら、英国が大西洋横断の中継拠点として利用し、反映した歴史があります。
中心都市ミンデロの遠景です。
プライアでは感じられなかった、どこか垢抜けた雰囲気があります。

Vista-Mindelo

 

いわゆるコロニアルな街並みが、意識的に保存されていることを感じさせます。

Rua-Mindelo

 

港の近くの壁に、何枚ものポスターが描かれていました。
小学生が描いたもので、それぞれテーマがあり、標語が付されています。
環境保護、海をきれいに、ウミガメ保護など様々ですが、下のポスターは「砂漠化との闘い」とあります。
これは、どの島でも多かれ少なかれ当てはまりますが、カボベルデは海に囲まれてはいるものの、降雨が少なく気候としては乾燥帯に属しています。
さきほどのミンデロの遠景でも、わかりにくいかもしれませんが、背後の山は樹木がわずかにあるものの、大半は荒涼とした大地に覆われています。
植民地支配からの独立に向け、共闘したギニア・ビサウと比べると、それをまざまざと痛感します。
次回紹介したいと思いますが、ギニア・ビサウの大地は緑が濃く、大きな川がいくつも流れ、じつに対照的です。
それでも経済的指標でいえば、現在、カボベルデの方がはるかに高い水準にあるのですが…。
そう単純なものでもありません。

Cartaz na parede-Mindelo

 

つづいてはフォゴ島です。
カボベルデの島々は、基本的にはみな火山島なのですが、フォゴ島はそのことがもっともよく実感できる島です。
地形ばかりでなく、2014年には大きな噴火が起こり、溶岩が麓の村を覆い尽くしました。
それでも、人々は村の再建に向け、溶岩の上に新たな村を築くべく奮闘しています。
その不屈の精神にはただ驚嘆するばかりです。

Pico Fogo e a lava-Ilha de Fogo

 

乾燥が著しく、農業がままならないカボベルデの経済を支える大きな柱の一つが観光業です。
なかでも、サル島やボアビスタ島の美しいビーチには、ヨーロッパから観光客が押し寄せ、リゾートホテルもたくさんあります。
下はサル島のサンタマリア地区にあるビーチですが、ここは風もあるので、カイト・サーフィンでも有名だそうです。
私もやっているのをはじめて見ましたが、ボードが海面から空中高く浮き上がったりして、非常にダイナミックでした。

Praia Santa Maria-Ilha do Sal

 

ということで、駆け足でしたがカボベルデのいくつかの島々を訪れ、いままで知識、情報としてしか知らなかったカボベルデの様々な側面を、実際にこの目で見て、体験して、非常に有意義な訪問となりました。
自分の今後の研究を広げていく良いきっかけになればと思っています。

学科生の皆さん、そのほかの皆さん、カボベルデはヨーロッパからのツーリストも結構多いので、旅行しやすいと思います。
とくにポルトガルなどヨーロッパからは近い(リスボンから約4時間のフライトです)ので、機会があったらぜひ訪れてみてください。

もう1回、他の国々について紹介する予定です。