2019年4月1日、上智大学出版(SUP)から『現代ブラジル論―危機の実相と対応力』が出版されました。著者は長く学科で教鞭を執られ、現在は名誉教授の堀坂浩太郎先生、学科卒業生で日本貿易振興機構(ジェトロ)勤務を経て4月から拓殖大学国際学部准教授になられた竹下幸治郎先生、そして本学科教員の子安昭子の3人による共著です。
本は4部構成になっています。第I部のテーマは「今を読み解く」です。サッカーW杯やリオオリンピック・パラリンピックなど国際メガ・イベント開催の一方で、大統領や国会議員、大企業の幹部を巻き込んだ汚職スキャンダル、経済の低迷、そして迎えた2018年10月の大統領選挙など、混乱続きの2010年代のブラジルを政治、経済・ビジネス、国際関係の3つの側面から考察しています。
第II部は第I部で述べたブラジルの「今」を理解するために、少し時代を遡って、1985年の民主化から21世紀最初の10年間に焦点を当て、この間に行われたさまざまな「制度設計」について、同じく政治、経済・ビジネス、国際関係の3つの側面から説明しています。続く第III部は第I部と第II部で扱った現代ブラジルをより深く知るために必要な3つの側面を「歴史」、「地誌」、「人と社会」としてまとめてあります。
ブラジルは2022年に独立から200周年を迎えます。今年19年1月1日に発足したばかりのボルソナーロ政権のもとでブラジルはどこに向かおうとしているのか。第IV部ではこれからのブラジルを見ていくうえで重要なポイントについて、著者3人による詩論的な見解が述べられています。第IV部も政治、経済・ビジネス、国際関係の3つの切り口になっています。
本書はポルトガル語学科にゆかりのある著者3人によるものです。卒業生の皆さんをはじめ、多くの方々に読んでいただければと思っています。政治、経済・ビジネス、国際関係という3つの側面からの考察というスタイルをとっていること、また現代ブラジルを理解するために必要な歴史や地誌、人と社会についてもコンパクトにまとめられていることが本書の特徴の一つです。巻末には略史や参考文献資料も載せました。手に取りやすい新書サイズですので、ぜひ本書を通して読むことでブラジルの実相を深堀してみてください!