2011年

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El gallinero 第5回公演

Las claves  『鍵』 
作者:Leslie Garrett

 

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大企業の経営者(2年、棚村瑞貴)、6人兄弟の母親(1年、井戸麻衣子)、環境保護の活動家(2年、山口梨佐)はそれぞれの職場で忙しい毎日を送っている。ある日、同じ交通事故で重症をおった3人は天国の一歩手前で顔を合わせる。「相談役」とともにそれぞれの人生や考え方について振り返る。3人の夢や苦悩に耳を傾けた天空の「相談役」が下す判断は…。

「演出者挨拶」から
原作に私たちのアイデアを取り込み、ガジネロ版の作品に仕上げました。この作品を通して、協力することの大切さを皆さんにお届けしたいと思います。人は時として他人に対し敵対心を抱いてしまうこともあります。 しかし一度その人と手を取り合ってみると、新たな価値観やものの見方を得られたり、自分自身を成長させたりする鍵となることもあります。愛や優しさというのも協力から生まれるのではないでしょうか。このことは3月の大震災を経験した私たちが身を持って体験したことです。この作品をご覧になった後に、少しでもこころに温かさを感じていただけたら幸いです。(渡邉綾香)

公演日:
ゲネプロ 2011年11月4日
本公演    2011年11月5日(上智大学10号館講堂  外国語学部語劇祭)

演出:渡邉綾香
出演:棚村瑞貴  井戸麻衣子  山口梨佐  木村至  山田桂美  猪野木健一 
         中島未姫  阿保亮祐  道下環久  小林敬史  中島未姫  渡邉綾香
         貝明咲子  井上歩美  吉川恵美子

[寄稿]
私と語劇とLas claves ~振り切った自分~

Ayudante役 阿保亮祐

 私がイスパニア語劇サークル”El gallinero”と出会ったのは、就職活動も終えてあとは卒業を迎えるだけと思っていた頃でした。きっかけは、当時イスパニア語学科の必修選択科目に「演劇」を取り入れ始めた吉川恵美子先生の授業です。他の講義と異なり、授業中に演劇を考え練習し、最後に発表するもので、とてもアクティブに学ぶ環境でした。
最終授業の後、吉川先生より語劇サークルへのお誘いを受け、最後まで大学生活を楽しみたいという思いから、El gallineroに参加することにしました。

El gallineroでは、個性豊かでいつもワクワクしている仲間と出会い、年1回の語劇講演に向けて主体的に取り組む環境に身を置くことができました。新入生も含め、全員が主体的に作り手意識を持ち、かつ楽しくをモットーに活動していたため、自然とのめり込み、打ち込むことができました。演劇を通して一番学んだことは、「振り切った自分」を表現し、自信と最大限に楽しむことを経験したことです。

私が舞台に立ったLas clavesでは、天界の案内人”Ayudante”という役を演じました。現実はおろか、劇中でも神秘的な存在として描かれたキャラクターであったため、まさに”演じる”ことを強く意識させられました。この役は人間とは違う「感性」や「振る舞い」を行うちょっと変わった人物というイメージがあったため、普段の自分とはかけ離れたオーバーリアクションが必要だと感じ、そのイメージのままに演技練習を重ねました。結果、それが役としては自然でしっくりくる感覚を掴み、それが演じていく度に「自信」や「楽しさ」に変わっていきました。

本公演はもちろん緊張もピークでしたが、やりきった達成感は大学生活の中でも一番と言い切れるものになりました。この経験ができたのは、El gallineroで共に本気で打ち込んだ吉川先生と個性豊かな仲間の存在、そして演劇を通して「振り切った自分」を識れたからです。

人生を変える、というと大げさかもしれませんが、その後の自分の人生に大きな影響を与えてくれたことは間違いありません。大学生という時間の中で、たくさんの経験を得ていくと思いますが、その中でひとつ「本気で打ち込む」ことと「振り切った自分」に出会うことは、生涯を通して良かったと思える貴重なものになるはずです。

 

El Gallinero 第4回公演

Las ruinas  『遺跡』
作者:Luisa Josefina Hernández (1928 ~ , México) 
ルイス・ホセフィーナ・ヘルナンデス

 

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舞台は1960年代のメキシコ、新たな発見で話題の遺跡。都会から新婚旅行に来たぺぺとロリータは、真夜中にその遺跡に侵入した。それを見つけた警備員のラモンと恋人のロラ。お互いにもう一方のカップルに刺激され、それぞれ不満や不安を口に出し、プライドや不器用な思いやりがぶつかり合う。ユーモラスな筋の運びのなかに都会vs田舎の構図が見えてくる。

Luisa Josefina Hernándezは20世紀半ばに執筆を始めた作家である。この時代にはじまるリアリズム演劇の新しい波を作った立役者のひとりとされる。長く、メキシコ自治大学で教鞭を取った。

公演日:
ゲネプロ 2011年6月17日
本公演    2011年6月18日(上智大学10号館講堂)

演出:棚村瑞貴
出演:森広未 山口梨佐 緒方優 渡邉綾香 井戸麻衣子 井上歩美

 

[寄稿〕
私と語劇とLas ruinas

Lola役 山口梨佐

村娘Lolaを演じた2014年卒の山口梨佐です。El gallineroには二年に進級した時に加わり、以後二年間在籍しました。表題のLas ruinasは私が初めて踏んだ舞台でした。

この演目の主役は二組のカップルで、舞台の九割が四人だけで構成されています。互いとの掛け合いが多く、テンポが早い内容でした。練習では相手の言葉を待たずに口を出してしまったり、後のセリフを先に言ってしまったり、となかなか小気味よい掛け合いにはならず、苦労しました。

更に、この時はエンディングを自分達で創作しました。意見を出しあい、その都度実践し、全員が納得できる終わりを模索しました。結果として、二組のカップルは幸せな終わりを迎えることができました。

私の演じたLolaはプライドが高く、意地っ張りで、芯の強い女性です。一方でとっ組み合いをしたり、人に怒鳴ったり、と激しい一面もあります。私は彼女のように燃える想いを持ったことがなく、戸惑いました。けれど、何故彼女がその行動にいたったのかを考えることは私の世界を広げてくれました。怒ること、赦すこと、愛すること、全ての人が持ちうる感情を異なる文化の視点から経験することができました。

本番の日、Lolaとして舞台に立って演じる中で改めて文化の違いを肌で感じました。学科の先生方が、思いがけない場面で笑ったのです。後から考えるとその場面はメキシコ社会を風刺していました。入学当初、言葉を学ぶ時はその国の文化も学ばなければ本当の意味で言葉を会得することはできない、と教わりましたが、本当にその通りだと改めて思い知らされました。

Las ruinas以降三回の舞台を経験しましたが、いずれもどこかエキセントリックな役ばかりでした。自分と異なる性格を演じるのは立ち居振る舞いや言葉遣いなど気をつけることが多くて大変でしたけれど、やはり何にも増して楽しかったです。私を語劇に引っ張り込んでくれた同期の友人には感謝をしてもしきれません。彼女への感謝をもって、文章の締めくくりとさせていただきます。Gracias!