Los Intereses Creados—舞台の裏側からー
先日物置の書類を整理していたところ,大学時代の教科書や写真などが沢山出てきて、ひと時、ひとりで懐かしい思い出に耽った。「もう半世紀も前になるんだな!!!!」その中にイスパニア語劇のアルバムがあった。
1963年、私が3年生の時、西語学科では「語劇祭」でスペインのノーベル文学
賞作家Jacinto Benaventeの”Los Intereses Creados”を上演することになった。神吉敬三先生、Sancho神父の監修の下に、1年生〜3年生が中心になってキャスト、スタッフが編成された。
同級の橘川慶二君(のち神奈川大学教授、1998年没)に口説かれて、私は「美術
兼舞台監督(副)」を引き受けることになった。橘川君は歌舞伎をはじめ演劇に造詣
が深く、「齊藤、どうせやるのだったら今までやったことのない舞台を作ろうよ!」といいだした。そこで舞台美術の重鎮、伊藤熹朔氏の「舞台装置の研究」を読破し、砂防ホールの舞台主任のところへ何度か足を運び、構想を練った。
その結果、歌舞伎に用いられる「暗転」を西語劇に取り入れてみようと決めた。「暗転」というのは、幕と幕の間に幕を下ろさず、暗闇の中で短時間で舞台背景を変え、観客に、そのあまりの変化にあっ!と言わせる手法である。書き割り(背景のパネル)の作成には随分苦労した。何せ1幕目と2幕目で同じパネルを表裏で使うのだから。
上演当日、大道具スタッフは皆バールとハンマーを持って、暗闇の中でまるで戦争の
様に奮戦したが、見事目標とした短時間内で舞台の転換ができた。今だったら「ヤッ
ター」というところだろうか?。
“Los Intereses Creados”の上演は同年10月と11月に2度行われた。一つは同学
他学科と共催の「第4回語劇祭」(於:砂防ホール)、もう一つは立教大学、早稲田大学及び拓殖大学と共催の「Teatro Español」(於:拓大茗荷谷ホール)であった。どちらの公演でも大好評を博したと記憶している。
キャストもスタッフも皆キラキラ輝いていた。青春の懐かしい思い出。この語劇に参画して後の私の人生に役立つ数々のことを学んだ。大変感謝している。
Muchisimas Gracias, Amigos y“Los Intereses Creados”!
7期生 齊藤康一
日刊スポーツ掲載記事(1963年11月11日朝刊)
文中の写真、資料および新聞記事は齊藤康一さんにご提供いただきました。