郷に入っては郷に従え

新行内未来

こんにちは!ドイツ語学科3年の新行内未来です。私は在外履修ではトリア大学、現在はケルン大学で交換留学をしています。もうすぐケルン大学での夏学期も終わり、帰国ももう目前です。この機会に、これまでの約10か月の留学生活を振り返って、私が「あ~自分ドイツに染まったな~」と思った瞬間をドイツの文化と共に紹介したいと思います。

・信号
ドイツに来て身近に起こるカルチャーショックは歩行者の信号無視だと思います。私は日本ではどれだけ急いでいても信号だけは絶対に守っていたのですが、ドイツにはいわゆる「赤信号みんなで渡れば怖くない」精神があると思っています。車がビュンビュン行き交っていても、ドイツ人はまるでそこに信号機が存在していないかのごとく、車が来ないときを見計らって普通に横断歩道を渡り、その人に続いてみんな渡ってしまう、なんてことがよくあります。私も最初はそこまでして渡る?と思っていましたが、今では常連です。(笑)信号無視といえば聞こえは悪いですが、ドイツ人からしてみれば信号を待つ時ほど無駄な時間なんてないのです。それがドイツ人なんです。もちろん日本ではしっかり信号を守りましょう。

・電車のドア
 ドイツの電車は基本的に乗り降りする時は自分でボタンを押してドアを開けます。ドアは開いた後は時間が経つと自動で閉まるのですが、出発時間になるとボタンを押しても開かなくなります。そこでよく起こることなのですが、ドアが閉まりかけている時、明らかに乗らなければいけなさそうな人(主に遅刻しそうな人)が向こうから走ってきたとき、それに気づいたドイツ人は自分が乗っていようと降りていようと走ってくる人の為にドアが閉まらないように待っていてくれるのです。それに私も何度も助けられました。それ以外にも足の悪そうな人やお年寄りの人が乗ろうとしているときも手を貸してあげたり、ドアを開けていてあげたりするところが、ドイツ人の優しさであり、とても素晴らしいところだと尊敬しています。私も自分が助けられた分、走って来る人がいたらドアが閉まらないようにするのが、ドイツ人っぽくなったかな、なんて思います。日本でしたら怒られそうですよね。

・スーパーのレジ
 ドイツのスーパーでレジに長い列ができた時、それを見た店員さんは、業務連絡で「○番のレジに入ってください」と放送します。それを聞いた瞬間始まるのが、お客さんのレジ争奪戦です。まだ店員さんが来ていないにも関わらず、我先にと呼ばれた店員さんが来るであろうレジに並びなおします。譲り合い精神なんてあったもんじゃありません。私も最初は遠慮していましたが、今では負けじと争奪戦に参戦します。ドイツ人にとってはどれだけ早く会計を済ませられるかが大事なのです。遠慮していたら損するのは自分です。ドイツでは少し図々しいくらいが丁度いいのです。

・身だしなみ
 ドイツに来る前、「ドイツに行ったら女の子は化粧をしなくなる、服も毎日ジーパンとTシャツになる」と聞いて、私は絶対にそんな風にはなったりしないと思っていたのですが、ドイツに来てみると、ドイツ人女性は本当に化粧をしているかいないかわからないくらいで、服もみんな毎日だいたいズボンを履いています。最初は気を付けていましたが、気がつけば「どうぜ今日は1コマだけだし誰にも会わないし」と思って化粧もせずジーパンとパーカーで大学に行くなんてこともしばしば。ドイツに来て失ったものと言えば間違いなく「女子力」でしょう。聞いていた通りになっていた自分がとても悔しいです!

 これらの経験以外にも、頻繁にパーティに行ったり、自分の意見をはっきり言うようになったりと、たった10か月でこんなにもドイツの文化が自分には染みついたのだと驚きました。慣れというものは本当に恐ろしいものです。でもそのすべてが「しょうがないドイツだから」の一言で片付いてしまうのです。でも、こうしてドイツの文化に慣れ親しんだからこそ、視野が広がり、色々な考え方が身につき、たくさんの友達ができたと思います。異文化理解とはまさにこういうことなんだな、と思いました。私がこの留学を通して1番変わったと思うのは「考え方」です。留学ではドイツ人に限らず世界中から来る留学生と知り合い、彼らの文化に触れ、考え方を知ることができます。日本にいた時に自分がどれだけ視野の狭い世界で生きていたのかを痛感しました。それを知れただけでも本当にドイツに留学に来てよかったと思います。郷に入っては郷に従え。ドイツに来たらぜひドイツ人になりきってみてください。新しい世界がきっと待っているはずです。

mi-singyochi