Hallo. ドイツ語学科三年の辻由布子です。昨年十月から一年間、バイロイト大学に留学しています。
バイロイトは毎年夏にワーグナーの音楽祭が行われる地として有名ですが、その時期以外は至って普通のバイエルン州の田舎町です。かなり小さな街で観光スポットも全くありませんが、ヨーロッパらしい美しい外観の市街地もあれば、花や木々のような自然も多く、長く住めば住むほど愛着がわく地、といった印象でしょうか。留学生にとっては、とても住みよい場所だと思います。
さて、私は在外履修・交換留学ともにバイロイト大学を選んだわけですが、それは何故かと言うと答えは単純明快、「新しい大学に行くのが怖かったから」でした。
高校時代に二週間オーストラリアに語学留学をしたのが唯一の海外経験だった私は、ドイツ留学をするまで他の人より多く外国に興味を持っているだけの完全な「日本人」でした。外国人と一対一でまともに話をしたこともない、日本で外国人から英語で話しかけられたら、「I can’t speak English」とも言えずに逃げ出してしまうような、典型的な日本人でした。
そして外国語能力も、読み書きはそれなりに出来るが、聞く話すは全く出来ない、というこれまたテンプレート日本人型であったため、交換留学の大学を決める際、「果たして半年だけで、新しい都市に行って新たに友人を作れるようになるほど、私は強くなれるのか？」という問いが頭を占めていたのです。
一旦環境を変えてみるのも面白そうではある、とは思っていたのですが、それでも新天地でまた一から交友関係を作り上げなければならない恐怖にも怯え、悩みに悩んだ結果、結局在外・交換どちらにも対応しているバイロイト大学を選ぶことにしました。(もちろん、これだけを理由にバイロイト大学を選んだわけではありません。興味の引かれる専門及び講義があったことが最大の決め手でした）
同じ大学に一年間通い続けると、構内の勝手が分かるので半年前より自由に動き回れたり、仲良くなった友人たちと再び共に授業を受けることが出来たり、半年前に授業を受けていた先生と顔見知りになったり、となかなかのメリットがあると思います。
特にバイロイト大学は、上智と同じく敷地が一つにまとまっているので、少し外を歩けば結構な頻度で知り合いと出くわします。
移動中に偶然出会って道端でちょっと立ち話、なんていうコミュニケーションの教科書に載っていそうなシチュエーションが起こりうるのも、バイロイト大学の魅力かもしれません。
なので、バイロイトに居続けることに関して長所はたくさんあるのですが、その一方で「やっぱり別の都市にも行ってみたらよかったかな…」と今更過ぎる後悔も少し感じていたりします。
友人たちとさらに親睦を深める、というのは確かにいいことかもしれませんが、裏を返せばそれは「現状に甘んじている」にすぎません。仲良くなって自分の事をそれなりに知ってもらった人たちの中に居続けたら、半年前のような新たに出会った人たちに自分の事を説明する気概や語学力がなくなってしまうのではないか。この頃、そんな風に思い至りました。そうならないように努めているつもりですが、やはり知り合いがいるとその人達とばかり話してしまうので、どうにかしないとな、と考えているところです。
すでに五月も中旬に入り、留学が終わる日もだんだんと近づいているこの頃ですが、このように未だに自分の弱さと直面しそれに対して行動を躊躇してしまう弱さは何一つ直っていないと自覚してしまったので、実をいうと自分がこの留学でどれだけ成長したのか、何か変わったのかはよく分かっていません。下手をすると、そもそも留学して良かったのか、という根本的な所から自問自答して悩む日々です。他の留学生の方々のブログを見ると、自分のしてきた経験がちっぽけでどうでも良いことに思えてきて悔しくなったりもします。
けれど、こうして異国の地で生活し、異国の人と異国の言葉を使ってコミュニケ―ションをとり、それを通じて自分のことを自覚できたのは、よい経験だと思っています。それが良いことであろうと悪いことであろうと。
最後に、以下の事をこれから留学する皆さんに伝えたいと思います。
①やらない後悔より、やった後悔。チャンスがあるなら、できる限り掴んだ方がいいです。
②他人よりできないからと言って、自分を必要以上に追い込まないこと。留学自体を嫌になってしまったら、元も子もなくなります。時折友達と一緒に遊んで、たまに愚痴を聞いてもらって、ストレスはためないようにするといいと思います。
③留学に行く前に、自分が興味を持っている学問領域の知識を習得しておくこと。ここではゼミや講義はもちろんドイツ語(たまに英語)で行われているので、何の予備知識もなく参加すると全く内容が理解できません。日本にいるうちに、基礎だけでも知識を身につけておくことをお勧めします。
留学とは、自分で考え、自分で決め、自分で動くことです。私も、自分で決めたことをしっかりやり切ってから日本に胸を張って戻れるよう、残り約二か月半を駆け抜けたいと思います。
では長くなりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。
