こんにちは。寒い日が続きますね。私はハイデルベルク大学でこの1学期間在外履修生として勉強して、さらにもう1学期交換留学生としてここに留まる予定です。今回は、①自分の勉学について、②ドイツという国に留学してみて感じたことを中心に振り返ってみようと思います。また、この記事に辿り着いた方の中には、将来ハイデルベルク大学に入学又は留学したいと思って検索なさった方もいらっしゃると思いますので、③ハイデルベルク大学について、留学生の視点から感じたことも記そうと思います。
①自分の勉学について
私は、留学期間の前半戦である在外履修の間は、ドイツ語に真剣に向き合ってみようと思い、12月中旬のゲーテインスティテュートB2の試験合格を目標地点として勉強を始めました。なぜ今更襟を正したのかと言うと、それまでの自分の表面だけの勉強方法では到底この言語を使いこなせるようにならないと思ったからです。
手垢のついた言い回しですが、言語の勉強はつまるところ日々の積み重ねです。例えば美味しいぬか漬けを作る時のように、一定期間集中して手を入れるよりも、毎日の地道な手入れが求められるものだと思います。それに対して大学は2学期制で、学期中の3カ月半は嫌でも毎日ドイツ語に触れることになりますが、ひとたび長い休業期間に入ると全てを忘れてしまうという短所があります。私は、怠け者なので、この「覚えては忘れ」を何度も繰り返して2年春学期まで来てしまい、そのことを後悔していました。ですから、こちらへ渡ってすぐに始まった朝から4時間の事前ドイツ語コースは、夏休み中の怠けそうな私にとってよい尻たたきになりました。
驚くべきことは、本当に沢山の同世代がドイツ語を学んでいることです。特に同じゲルマン語族を母語とする人々の会話の流暢さには目を見張るものがあります。翻ってアジアや中東から来た学生は基本的な文法に精通しています。このように皆それぞれどこかの分野に長じているので、私は毎日感心し、同時に意欲を掻き立てられました。クラス全員でささやかなクリスマスパーティーを開いたり、ドイツ映画を観に行ったり、食事に行ったりしたこともよい思い出になりました。週6時間のハードな授業を生き抜いた仲なので、来学期も彼らのうち何人かと一緒に授業を受けることができればいいなあと思っています。
さて、目標だったゲーテのB2ですが、無事合格していました!次はC1を取りに行きたいと思います。今のドイツ語力では到底合格点には届かないので、ひたすら単語を覚えようと思います…。私はこちらで受験しましたが、ドイツのゲーテは日本のそれよりも料金が高い上に結果発表が遅いなど、正直言って微妙なので、半年留学の方は帰国してからの受験の方が楽だと思います。
ドイツ語の授業以外では、ドイツ史の講義と社会学のゼミを取っていました。ゼミを取ってわかったことは、読む課題の多さです。教授の書いた重くて分厚い本を4冊ほど渡されて(購入させないところは良心的です。ありがとう教授)ひたすら論文を読まされました!睡眠不足で授業に臨むことも多々ありました。今回は英語開講のゼミだったので何とか齧りつけましたが、来学期はドイツ語開講のものも取るので、履修選択は慎重にしようと思います。
もうひとつ忘れてはいけないことがありました。タンデム(言語学習者同士が、二人一組で母語を教えあうシステム)は役に立ちます。ドイツ語が母語で、しかも日本語の心得がある人にドイツ語を習うことを、日本では私的に親密な関係になるかお金を払ってスクールに通うことでしか経験できませんが、こちらではパートナーさえ見つけてしまえば無料で何時間でもできます。その分こちらも相手の質問に答えなければいけませんが、それが苦にならないほど有益な時間を過ごすことができます。私は火曜日と金曜日の2回、週4時間ほど学食でタンデムをしています。
ドイツはタンデム制度が発達しているので、特に日本語学科のある大学ではパートナーを簡単に探すことができると思います。
②ドイツに留学してみて感じたこと
たった半年ドイツの一都市に留学生として暮らしただけで、「ドイツってこんな国」と全体を決めつけるのは早計です。それはこの国が辿ってきた歴史のせいでもあり、この国に暮らす人々の多様性のせいでもあります。ですから、私がここで述べることは、あくまでもハイデルベルクに住んだ私が感じたことだと解釈していただければ幸いです。
ハイデルベルクの学生は、とても勤勉です。どのくらい勤勉かというと、午前1時までやっている一番大きい図書館に夜遅くまで沢山の学生が居座って勉強しているくらい勤勉です。テスト期間になると、早朝の図書館の前で学生が開館を待っている姿を見かけます。私のWG相手の情報学科の女の子も、期末テストや課題が山積みで春休みが3日しかない!と嘆いていました(笑)
早期の進路選択や職業訓練システム、マイスター制度などにより手に職を付けて働く伝統があるドイツも、近年は日本と同じく、より好条件の職に就けるからという理由で大学進学率が上昇し、それに伴ってアビトゥーア(高等教育の修了試験)の合格もハードルが下がって来ているそうです(そしてこの傾向はしばしばギムナジウムの教育レベルの低下問題として話題に上がります)。しかしそれでも、大学は学問を修める場所だという意識が日本の大学よりも強い気がします。ここの学生に進路や夢を問うた時、自分の専攻を活かした目標や目的が答えとして帰ってくることが多いからです。問題点はありますが、私個人としては、日本の大学や大学生がドイツに学ぶところは多いと感じました。
一方、逆に日本のサービスの細やかさや正確性の稀有さも感じました。電車や郵便サービスは勿論のこと、特に役所は、スタッフの人柄やその日の機嫌に左右されることがあり、ビザを取るのに予想以上の時間がかかってしまった時は少し焦りました。ただ、例えば24時間365日営業のコンビニや日曜も連絡が通じる事務所や自動販売機など、日本で当たり前に享受していたもののいくつかは、慣れれば無くても困りませんでした。消費者優先のサービス過剰は今やっと日本で批判されつつありますが、労働環境面から考えても地球環境面から考えても更に修正が必要だと思いました。
最後に、つい先日始まったカーニバルについて、今日面白い話を聞いたのでそれを述べて閉じたいと思います。私はてっきり、クリスマスマーケットや新年の時のように、どの街でも大なり小なり賑やかになるものだと思っていたのですが、これまでに仮装をしている人を街で2人しか見かけていません。私が家か図書館に引きこもっているからかもしれませんが…とにかくあまりに盛り上がっていなくて、その仮装をしている人が浮いているくらいでした。その理由をタンデムパートナーに聞いたら、①ハイデルベルクはカーニバルのイベントがあまりない街。②ほとんどの人にとって、カーニバルは飲酒の口実。③そして大半の大学生はテスト期間で猛烈に忙しいので仮装や飲酒などしている場合ではない。思わず膝を打ってしまいました…。というわけで、カーニバルを楽しみたい人はケルンとかに行った方がいいですね。
③ハイデルベルク大学について
留学の環境としては最高の大学だと思います。
まず、留学生向けの講座やオリエンテーション、イベントが充実しています。国際交流課という部署が統括していて、渡航前後の行動の詳細なガイドや、オリエンテーション、学期開始前の事前ドイツ語コース(A1.1~C2までのレベル別、無料)、学期中のドイツ語コース(語学レベル、時間別)、やや専門的な講義(対象語学レベル設定あり)、その他エクスカーションなどのイベントサービスを提供してくれます。中国以外のアジアからの留学生を担当してくださる方はとても優しく、いつでも親切に質問に答えてくださります。
次に、街にひととおりのインフラや施設が揃っています。例えば私が住んでいる学生居住区の目の前にはバス停があり、自転車で5分ほどの距離にAldiやREWE(スーパー), Rossmann(ドラッグストア), Sparkasse(銀行)などの入ったショッピングエリアがあります。またプールや運動場もすぐ近くにあります。大学図書館やメンザ、大学のカフェやバーも充実しており、Marstallメンザのご飯はドイツで一番美味しいということになっているらしいです(真偽のほどは知りません)。街の中心部に行けば映画館や電気屋、デパート、服屋など大抵何でも揃うようになっています。街中にバスとトラムが深夜まで走っており、学生はSemesterkarteを購入すれば無料でそれらに乗車することができます(休日全日と平日19時以降は学生証でも乗車可)。
ちなみに私は、Semesterkarteは買わず、中古自転車を買いました。バスを待たなくていいのでおすすめです!多くの学生が自転車を使っています。
最後にして最大の要因として、日本学科の存在があります。日本学科がある大学はドイツでも限られているので、留学先選びのファクターになりうると思います。先述したタンデムパートナーはこちらの学科に応募して引き合わせて頂きました。彼らもまた優秀で、一緒にいてとても楽しいです。
おわりに
1学期目の留学を終えて、感慨に浸る間もないほど、実のところまだ課題が山積しています。第二専攻の政治学の勉強をしなければならないし、最近ドイツの新聞を読めていないし、まだまだドイツ語が上手く話せないし…何よりその前に在外履修の最終試験があります。大変だ~…日がだんだんと長くなってきているのだけが救いです。とにかく”Stück für Stück(ひとつひとつ)“で片づけていくしかないですね。あと半年頑張ってみます。それでは!