ドイツの大学(生)と日本の大学(生)

小形陶子

ドイツ語学科3年生の小形陶子です。私は今ハイデルベルク大学に通っており、毎日世界遺産として登録されている旧市街の町並みを横目に留学生活を送っています。町についての説明は、是非森高さんのブログをご覧になって下さい。

今回は、ドイツの大学とそこで勉強している学生について、日本のそれと比べながらお話したいと思います。

①大学
私がこちらに来てから感じた日本との一番大きな違いは、大学の機能です。日本で大学を思い浮かべたとき、はっきり言って私はモラトリアムという印象を拭うことが出来ません。それに対してドイツでの大学は、将来に備えての知識や経験を磨く場所であると言えます。確かに日本に対して進学率も低く、厳しい受験戦争もありません。しかし、ドイツの大学には細かく分かれた専攻があり、学生は皆自身の副専攻もこなして卒業したあと、専攻科目で培った知識を武器に就職活動をします。日本のような「総合職」はドイツ人には不思議なようで、「日本の大学生は自分の専攻と全く関係ないところに就職しようとしているけど、それって変だよね。ドイツでは考えられない」と友達に言われたことも。授業も大変専門的なものが多く、日独翻訳の授業ではロシア・フォルマリズムについての文献(日本語で言われてもかなり理解しにくい内容)の翻訳が出て、とても苦労したことを覚えています。
正直、ドイツと日本の大学どちらがいいかと言われたら一長一短だとしか答えようがありませんが、大学は社会における職業観の表れだといえることは間違いありません。

②大学生
私がこちらに来てまず驚いたことは、大学生の勉強に対する姿勢でした。こちらの学生はドイツ人であるかないかに関わらず、勉強熱心で探究心旺盛な人が多いと思います。ドイツ語を独学で始めてからたった8ヶ月でB1レベル(TOEIC400〜600点相当)まで上り詰めたイタリア人、趣味で日本語をやっていて日本語ペラペラなドイツ人など、知り合った人達は優秀な人が多いです。勉学や語学だけでなく議論も盛んで、授業中の質問に対して生徒が答えることは珍しいことではなく、むしろ生徒同士の議論が盛り上がりすぎて授業が中断し、うんざりすることも多々あるくらいです。
それに対して、さらに驚いたことに、そんな物知りな大学生は意外とアジアのことについては詳しくありません。というよりも、殆ど知らないと言っても過言ではないでしょう。台湾人の友達と話していたときにその話題になり、「西欧の人達が、アジアを皆一緒くたにしていることが悲しい」と言っていたように、ドイツの所謂中学校・高校での社会科の授業では、6年間第二次世界大戦のことについて復習し、アジアの歴史は高校になって少しやるくらいだそうです。これについてドイツ人の友達が「ドイツ人はアジアの事はあまり知らないけど、アジアの人は西欧の歴史や社会のことを良く知っていて驚く。それはドイツ人にとって恥ずかしい事だと思う」と言っていたのを、今でもはっきり思い出すことができます。

ドイツで勉強できるのも残り4ヶ月となってしまいましたが、1時間以上遅れているのに “schönen Tag noch(良い一日を)“ とアナウンスする国鉄、授業数が8760件もあるにも関わらず受講の仕方等何の説明もない学事、朝家を出たらドアの目の前で持参の机と椅子でパーティーをしている隣人などなど、もはや懐かしいような気持ちでいっぱいです。気が早いですよね。

絶対にやり残したことがないように、残りの留学生活も全力投球したいと思います。

t-ogata