山あり谷あり:留学生活のリアル

松岡大雅

Hallo! 現在ハイデルベルク大学に交換留学中のドイツ語学科3年松岡大雅です。私は総括して1年間2つの都市で留学をしていました。2023年9月〜2024年3月末まではドイツのバイエルン州に位置するヴュルツブルク(Würzburg)、2024年4月〜現在まではバーデン=ヴュルテンベルク州に位置するハイデルベルク(Heidelberg)に滞在しています。ドイツ生活も残すところ1ヶ月半となりましたが、最近は時の流れの速さを実感しながら残りの留学生活を全力で楽しんでいます。そんな私の留学生活の中で経験した挫折と成功について執筆していきたいと思います。

私は渡航前にすでに言語面での不安を感じていました。というのも、ドイツ語のコミュニケーションや文法の授業を日本で受けていたのにも関わらず、ドイツ語を話すとなるとどうしても恥ずかしさが勝ってしまうが上に、言いたいことを上手に表現できないからです。実際、現地に行けばどうにでもなると思ってはいましたが、正直、こんなドイツ語で生きていけるのかどうか、という不安もありました。そんな不安を抱えて、いざドイツに飛び立ちましたが、到着日初日に最初の試練が訪れます。それは、「換金」です。私が到着したフランクフルト国際空港にはいくつか換金所があり、その中でもレートが良さそうなものを選んで換金をしました。しかし、提示されたレートは1ユーロ185円ほどで、ユーロを持ち合わせていなかった私はその条件を認めざるを得ませんでした。日本から握りしめてきた13万円は700ユーロになって返ってきました。ドイツ留学初日にして敗北を感じました。

ヴュルツブルクに在外履修の本拠地を構え、生活がやっと安定したと思った頃には、すでに2ヶ月ほど経過していました。「楽しいことをしている時ほど時間の流れが早くなる」とは正にこのことでしょう。そんなある日、私が友達と街でご飯を食べた後、路面電車で家に帰る途中、人生で初めての差別に遭いました。電車後部に座っていた女性にアジア人への差別「つり目ポーズ」をされたのです。差別はあると聞いていたものの、実際に経験すると心が痛くなります。自分の人生において差別される経験が無かったので差別されることも良い経験だと思いました。また、自分が目撃したことや友達から聞いた話からヨーロッパにおいてアジア人の立ち位置を下に見ている人はかなり多く、その大半は日本でいう「遊び人」的な立ち位置にある人だと学びました。友達複数人になぜ同じような人がこぞって差別するのか尋ねてみたところ、彼らは差別するつもりなしに好奇心からチクチク言葉を発してしまうとのことでした。私達がヨーロッパ人をどこの国から来たか判断するのが難しいように、彼らもアジア人を見分けるのは難しいようです。そんな彼らへの対処としては無視することが1番だというのも合わせて学びました。

最初のうちは日本との環境がまるで違うので、悪いこと続きのように思えましたが、良いことも経験しました。留学前に誰もが1回は考える「言語の壁を超えて友達作りができるかどうか」という問題を私自身も抱えていました。結果として、友達は自分自身でも驚くほどできます。先ほどは差別について執筆しましたが、もちろんそのような人ばかりではなく、親切な人、日本などアジアに興味を持っている人など多く存在します。そのような方たちと友達になると言語交換(タンデム)ができるだけでなく、自分自身でドイツ語や英語を勉強するより早く学習できます。また、ドイツでは日本よりパーティー文化が浸透しているので、そのような場所で友達を作ることも多くありました。実際に自分自身も寮のパーティーや街で開催されるパーティに参加して友達を作ることが多かったです。特に寮のパーティーでは留学生が多く集まるので、ヨーロッパだけでなく他の地域から来た学生とも知り合うことができます。私は仲良くなった友達と家でそれぞれの国の料理を作り合う「ご飯会」を開催したり、他の地域に旅行に行ったりしました。言語の壁があるものの、一緒にいるうちに雰囲気になれ、自分の気づかないうちに言語能力も成長していきました。最終手段として全く友達ができなかった場合はK-Pop パーティーに行って自分の魅力を最大限に表現してみてください。アジア文化に興味を持った方に会うことができる上に、他のアジア人がどのようにドイツに適応していっているかを観察することができます。

ハイデルベルクに来てから自由な時間が増え、せっかくの留学生活を無駄にしたくなかったので時間潰し程度にジムに通い始めました。最初は「週2ぐらいで運動できればいいな」なんて思っていた私ですが、ジムに通っていくうちに周りの“ガチマッチョ“に刺激されて、ジムの目的が「運動」から「憧れ」に変わっていました。今では週6でジムに通っており、以前に比べて筋肉はついたものの、上には上がいるのでまだまだ自分が小さく見えます。去年9月から体重も15キロほど増え、食に対する意識も変わっていました。ただの食べ過ぎで太ったのかもしれないと、まだ自分自身を疑っていますが、残りの1ヶ月半も筋トレを頑張りたいと思っています。たまに我に返ると馬鹿らしいと感じますが、新しい経験ができたので本望です。また、娯楽以外の生活面においても、何か変わったことがしたいと思い、ハイデルベルク滞在中に私は生徒会に所属していました。というのも、ハイデルベルクには日本学という学科があり、1学年60人程度日本学を勉強している学生が在籍しています。そのような生徒と日本からドイツに留学にきた生徒を対象に定期的にイベントが開催されていました。私はそのイベントの具体的な企画立てや運営を担っていました。生徒会としての活動を通して、70人規模のイベントを開催したことや運営を担ったことは私の留学生活の中でもかなり大きな成功だったと思います。また、それらの成功は自分の自信にも繋がりました。

最後になりますが、私からドイツに留学を控えている皆さんに勝手ながら2つアドバイスをさせて頂きたいと思います。まず1つ目は、ドイツに来る前に会話を中心に英語を勉強してください。他の留学生との会話はほとんど英語なので英語力が無いとすぐに置いていかれます。もちろん、ドイツに来てからはドイツ語や授業など自分がやらなくてはならないことにも力を入れてください。言語交換をしていれば自然と言語能力が向上していきますが、波があるので諦めずに続けてみてください。2つ目は、自分自身の殻を破って新しいことに挑戦してみてください。留学ほど自分に置かれる環境が著しく変わることは一度きりの人生においてそう多くはないと思うので、せっかくの機会を無駄にせず殻を破っ、てみてください。その挑戦が成功すれば自分自身の自信へと繋がるのはもちろんですが、失敗しても同じことを繰り返さないようにと自分自身の道標となるはずです。

全て授業やテストを終えたので残りの1か月半はマルタ島に旅行をして最後にドイツを噛み締めて留学生活の終わりを迎えたいと思います。こんな山あり谷ありの留学生活でしたが、日本に帰ったら何か物寂しさを感じてしまいそうです。私の執筆した内容が少しでも今後留学するみなさんの助けになれば幸いです。

    ドイツで出会った日本人の友達

    スイス (Lauterbrunnen)

           留学生の友達

     河川敷で定期的に開催するピクニック