夢の国ベルギー・ルーヴァン!

藤井大貴

 私はベルギーのLouvain(ルーヴァン)大学に交換留学しています。こちらでの専門は社会学で、主に多言語多文化社会や、移民国家に暮らす人々のアイデンティティとその諸問題についての研究をしています。ベルギーという国はまさにぴったりの研究対象で、部屋から出れば発見の連続。とても充実した留学生活を送っています。
 さて、まず私が通うLouvain大学(ルーヴァン)を紹介します。Louvain大学(フランス語表記)は、ベルギーで最も歴史があるLeuven大学(オランダ語表記)の分校として新設された大学です。スペルが似ているのは単純に表記の違いによるものです。元々Leuven大学(オランダ語圏)では、フランス語とオランダ語における講義が行われていたのですが、ベルギー国内における言語闘争の激化によりLeuven大学(オランダ語圏)でのフランス語の講義が廃止されました。そこで1968年にLeuven大学(オランダ語圏)のフランス語圏バージョンとしてできたのがLouvain大学(フランス語圏)です。学校と同時に学生が生活するLouvain-la-Neuve(ルーヴァンラヌーヴ)という小さな大学都市も作られました。近代的でありつつも街はレンガ造りで趣があり、大学の教室から寮、スーパーやバー、映画館までが一か所にコンパクトにまとまっていてとても便利で過ごしやすいです。町全体でディズニーランドくらいの面積です。ディズニーランドよりも小さいかもしれません。園内に“夢のカケラ”は落ちていませんが、その代わりに夜には泥酔した学生がよく落ちています。
 Louvain-la-Neuveでの生活は楽しい反面悩みも付きものです。町が小さいためすぐに鬱になります。私は来て一週間で飽きました。それもそのはず、想像してみてください。ディズニーランドはたまに行くからいいのであって、毎日いたら頭おかしくなります。(ディズニー好きの人だってきっとそう。)なのでここの学生達はそんなストレスと戦うために毎晩酒を浴びるのです。かく言う私もその一人。この町では毎晩どこかでイベントがあります。中でも年に一度の学祭は非常に盛り上がります。昼から次の日の昼まで24時間ノンストップでお祭りが続きます。お祭りの主な内容は一日中自転車で町中をこぎ回り続けるというものなのですが、正直何が楽しいのかわかりません。またこのイベントにおけるビール消費量はヨーロッパで二番目だとか。(一番はドイツのオクトーバーフェスト)

オランダのアムステルダムにて。オランダの黒ビールと共にニシンのマリネを食らう

オランダのアムステルダムにて。オランダの黒ビールと共にニシンのマリネを食らう

 ベルギーという国は本当に謎に満ちています。ただ一つ明らかなことといえば、ベルギー人学生はビールと馬鹿なことをするのが大好き。そしてみんなとてもオープンなのでビールで乾杯したらすぐに友達です。ベルギーのLouvain大学、体力とお酒に自信がある方にとってはまさに“夢の国”なのではないでしょうか。
 次に、大学とビールの話だけでなく、私の大好きなベルギーという国も紹介しましょう。ベルギーのことを、皆さんはどれくらい存知でしょうか。ベルギーは南北にはフランスとオランダ、東西にはドイツとイギリス、いずれも大国に挟まれ肩身の狭い思いをしている国です。国土面積も狭く日本の関東地方程しかありません。人口も約1千万人弱と東京都民とほぼ同じ数です。ベルギーの首都のブリュッセルは“ヨーロッパの首都”とも呼ばれ、EUやNATOなど国際機関の本部が設置されていることで有名です。また、ベルギーと言えばビールやチョコレート、ムールフリッツにワッフルなど美食の国としても有名です。さらに実はサッカーでも有名で、小国ながらナショナルチームは“赤い悪魔”と恐れられるほど。最新のFIFAランキングでは堂々の一位です(2016/3/3発表)。このことをフランス人に自慢すると、ケンカになります。
 とにかく何から何まで魅力的な国、ベルギーを一言で表すなら“多様性”だと思います。ベルギー人が凄くオープンですぐに友達になれるというのも、多様性文化が根付き、異文化への抵抗がないからだと考えます。この国ではアジア人だからという差別を受けることもありません。むしろ多くに人が日本に対していいイメージを持っていると感じます。特に日本人女性はベルギー人男性から本当に人気があります。羨ましい。。。私の大好きなビールの話をすれば、ベルギービールは1000種類以上あり、一つとして同じ味のビールは無いと言われています。フルーツのビールやチョコレートのビールなどバリエーションに富んでいます。(変わり種ビールはあんまりお勧めできませんが。)ベルギー国内を旅行すれば、各町の街並み雰囲気はどこも異なっていて、違う国にいるみたい!!
 “多様性”ってすばらしいな!!日本も見習うべきだ!!と思った反面、今日のベルギー社会を知れば知るほどに“多様性”社会は良いことだけではないと気付かされます。“多様性”の裏には多くの問題が隠れているのもまた事実なのです。ベルギーのことをいえば、フランドル地方の独立問題、フランス語とオランダ語の言語対立、移民の治安の問題など挙げるときりがありません。どの問題も複雑で難しく、日本が経験していないものばかりです。このような問題はニュースで見たり、旅行でその土地を訪れただけでは気付けないと思います。留学などで一定期間住み、異文化を肌で感じ、現地の人の“目”を手に入れることでようやく見えてくる世界があると思います。その新しく手に入れた“目”で見る外国、そして日本はこれまでとは全く違って見えるはずです。今までにない新しい世界を見ることができるようになる。それこそが留学の醍醐味だと考えます。
 結びに、支えてくださっている多くの方へ感謝の気持ちを忘れずに、残りの留学生活を悔いのないように励んでいきたいと思います!!追伸。ベルギーはヨーロッパの交通の要所。いろいろな国に旅行するのにとても便利です。いろいろな国を周り、うまい飯を食らい、その土地の酒を飲む。これもまた留学の醍醐味。

 

チェコのプラハにてチェコビールのジョッキを片手に葉巻と戯れる。

チェコのプラハにてチェコビールのジョッキを片手に葉巻と戯れる。