VOL.10
1991年卒業
ESSEC Business School    日本事務所
小野(旧性 赤羽)香織さん

フランス企業で働く

現在はどのようなお仕事をなさっていますか。

 経営学系グランゼコールのESSEC Business School* 日本事務所で代表をしております。本校への留学希望者に対する留学相談、フランス人学生の日本での研修先探し、企業とのプロジェクト案件立ち上げや同窓生のネットワークづくりが主な仕事です。
提供しているプログラムが学士からグランゼコールの修士、MBA、PhDそしてExetutive MBA等幅広くあるので、高校生から管理職までの留学相談に対応する必要があります。キャリアチェンジとして留学を考える場合もありますので、留学というよりもキャリア相談に近いかもしれません。企業にいた時のメンターの経験も役立っています。
 企業との関係構築も重要です。フランスだけではなく、シンガポールやモロッコにもキャンパスがありますので、これらの地域でビジネスをする日本企業とのプロジェクトを企画することも仕事です。もちろん、日本での研修を希望するESSECの学生(ほとんどがフランス人)のためのStage(インターンシップ)受入先としての関係も欠かせません。
 また、在日フランス大使主催のイベントやESSECがあるフランスのVal-d’Oise県の来日ミッションに参加するというフランス代表の一員としての役割もあります。

ESSECのブース キャンパスフランスにて

ESSECのブース キャンパスフランスにて

  * ESSEC Business School (Ecole Supérieure des Sciences Economiques et Commerciales)は1907年にEcole Sainte-Genevièveの中にInstitut économiqueとして設立された、ビジネスにおけるトップスクールの一つです。日本とのつながりは深く、2015年には日本事務所設立30周年を迎えました。日本人の卒業生は100名近くに上ります(フランス語学科の卒業生は私を含む2名)。
 グランゼコールのプログラムは、英語とフランス語の授業を選択できますが、入学試験ではマネジメントテスト(GMATやTage-Mage)と英語(TOEIC, IELTS,TOEFL)のスコアが求められます。
 授業は、ファイナンス、マーケティング、戦略、IT等の必須科目を取得後、通常の授業だけでなく、専門トラック(例Agri-food)や冠講座(例LVMH Luxury)から選択することができます。インターンシップが卒業単位の一環となっており、アカデミックな知識だけではなく実践に対応したカリキュラムが特徴です。
 フランスのキャンパスはパリからRERで通えますが、学校の周りに4つ寮があるのでグループワークが多い最初はお勧めです。

ESSEC Cergyキャンパス

ESSEC Cergyキャンパス

 

なぜ現在の職場を選んだのですか?

 この仕事を始める以前は、日本の総合商社、フランス企業で働いてきました。商社に勤めている時に、フランスの高級官僚養成学校でこちらもグランゼコールのひとつでありますENAから毎年研修生の受入れをしており、彼らからフランスのグランゼコールのシステムについて話しを聞き、ESSECに留学することになりました。卒業後はフランス企業で約18年働きましたが、その間に、日本人の異文化環境下での働き方について考えさせられることがあり、日本人や日本企業の国際舞台でのプレゼンスについて興味を持つようになりました。それ以来異文化マネジメントを中心に研究する機会にも恵まれ、アカデミックな世界に足を踏み入れることとなり、今回この仕事を選びました。 

ESSECのリクルートセミナーにて(左から4番目)
ESSECのリクルートセミナーにて(左から4番目)

 

 

 

フランス語学科で学んでよかったと思うことは何ですか。

 フランス語を学んだことでフランスのビジネススクールへ留学をし、フランスの企業に勤めるという機会を得たことはもちろんですが、フランス人とフランス社会に関わることで違ったものの見方があることを知ったことです。往々にして、アングロサクソンによる考え方やビジネスが世の中の主流を占めていますが、多様化する社会において異なった文化を理解することは重要だと思います。逆に共通点を発見することでシンパシーを感じることもあります。 また、自分自身の経歴を差別化する上でも英語+フランス語というのは大変有意義でした。これはすでに大学での学科を選ぶ時から考えていたことです。私は、公立・都立の中高で英語を学んだだけですので英語がバイリンガルのように話せるわけではありませんが、英語もビジネスでコミュニケーションができるレベル、そしてフランス語もフランス語学科を卒業し、少しでも使いつづけて触れていることで、自分の仕事の選択肢の幅が広がったことを実感しています。

在学中に一番印象に残っている体験は何ですか。

 ジョリヴェ ミュリエル先生の現代フランス社会研究の授業で在日フランス女性にインタビューをするという宿題があり、自分のレポートが先生の本の中に掲載されたことです。帰国子女でもなく日本国内で生活してきた私にとって、外国人と話しをするということ自体がとても緊張することでした。しかも、自分でインタビューする人を探して、内容を書き起こすという課題です。テープに録音して、何度も聞き直しながら作成したことを覚えています。本になったときはとても嬉しく、今でもその本は大切にとってあります。 同じような経験は、大学の春休みにイギリスからカレーに渡り、初めてフランスの地を踏んだ時、飲み物(紅茶だったと思います)を注文し、通じたことが忘れられません。初めて先生以外のフランス人と話しをした忘れられない思い出です。

最後にメッセージをお願いします。

 高校生まで海外と縁がない生活をしてきた私が、このようなキャリアを歩むことになった原点はやはり上智大学外国語学部フランス語学科で過ごした4年間だったと思います。帰国子女のクラスメートや高校からフランス語を学んできた人を目の当たりにして、自分は井の中の蛙だったと痛感しました。このような環境との出会いがあったことで、留学というハードルを飛び越えることができ、現在までの道のりにたどり着いたと思っています。 皆さまも、新しい扉を開くためのきっかけを、フランス語学科を通して見つけていただければと思います。